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酔っ払い亜人のうっかり告白


 王女様の無理難題に多少の頭痛を感じつつも何とか旅館の大広間を確保する事が出来たローズ。幸いなことに大広間を使う団体客が居なかったために場所の確保は何とかなった。しかし旅館側からは乾いた笑みを浮かべられていてローズの胃がキリキリと痛んでしまったが……。


 そして夕食の時間帯となりムゲン達とアセリア姫とローズの計6人が大広間に集合した。

 無事に自分の要望を叶える事が出来た事に対してアセリアは大変満足だったようでローズに称賛の言葉を贈る。


 「見事ですわローズ! 流石は《剣聖》の称号を持つ《騎士》だけはありますわ!」


 「いえ全く関係ありません。はぁ…胃が痛い……」


 「なっ、《剣聖》だと!?」


 さらりと口にした称号に真っ先に反応したのは《魔法剣士》のソルであった。

 アセリア姫が口にした《剣聖》と言う肩書きはライト王国の騎士の中でもたったの3人にしか与えられていない精鋭中の精鋭のはずだ。記憶が確かなら〝王国の三大騎士〟と呼ばれるほどの猛者。と言う事はつまり目の前に居るこのローズがその一角と言う事になる。まあいくら内密で来ているとは言え王女の護衛としては納得のできる付き人だ。

 同じく剣を扱う者であるソルはローズを見つめて挑戦的な笑みを浮かべる。


 「まさかの《剣聖》とこんな所で出会えるとはなぁ。出来る事ならお手合わせ願いたいものだな」


 「悪いがこんな平和な観光地でそれは遠慮してほしい。いくら私と言えどもSランクの《魔法剣士》が相手では流石に本気にならなければ勝てそうにないからな」

 

 「ほう、つまり本気を出せば勝つ自信があると?」


 「さて、それはどうだろうな?」


 何やら二人の間にバチバチと火花が散り始める。とは言え二人もこんな場所で《剣聖》とSランクがぶつかれば甚大な被害が出る事は百も承知なので互いに不敵に笑うとそれぞれ席に着く。

 少し危うい空気になりかけはしたが完全に払拭した事を見計らい他のメンバーもそれぞれの席に座る。


 「(うーむ…六人でこの大広間は少し大きすぎる気がする。こういう無駄に広い空間を好む部分はお屋敷だのお城だの豪華な暮らしの王女様らしいのかな?)」


 そんな事を考えていると広間のふすまが開くと次々と仲居さんが料理を運んでやって来る。それは酒場などで出される様な料理とはグレードが違い過ぎた。

 色鮮やかな刺身の舟盛りや旬の食材がふんだんに入れられている鍋がそれぞれ複数用意され、他にも多種多様の料理が次々と並べられる。


 「はあ~これは凄いな。てゆーかこの料理の種類や量って明らかに俺達が予約していた料理の数を超えているぞ」


 他の皆もこの圧倒的な食事量には度肝を抜かれていた。特にウルフは完全に食事に目を奪われており口の端からは今にも涎が零れそうな勢いだ。

 事前に聞いていた料理の量との違いに圧巻されているとアセリア姫が上機嫌に説明を入れる。


 「わたくしの一緒に食事をしようと言う無理を聞いてもらったお礼ですわ。ローズに頼んでこの旅館で最も値の張るコースを頼みましたの」


 どうやらこの料理の数々はアセリア姫が注文していたらしい。しかし料理の用意だってこの大広間の確保同様にそう簡単に都合がつくものではないだろう。その証拠に自慢げにしているアセリア姫の隣に座っているローズは乾いた笑みを浮かべていた。とても先ほどまでソルと睨み合っていた同一人物とは思えないほどに弱々しい。

 

 「さあさあ皆さま早速いただきましょう」


 アセリア姫のその言葉を合図に皆がそれぞれ料理に手を付け始める。

 

 「おお美味いな。流石は新鮮な刺身だな」


 「こちらのお鍋の具材もとても美味ですよ」


 「こ、こんな美味しい物を食べれるなんて……奴隷時代では考えられませんでした」


 派手な見た目を裏切らない抜群の料理の味に舌鼓を打つ。そして用意された酒を飲むと次第に皆も無礼講状態になっていく。

 

 「いやぁお前も苦労人だな本当に。あのじゃじゃ馬王女の手綱を握るのは大変だろう」


 「う、うぐぅ、分かってくれるか。もう我儘我儘の連続で大変なんだぁぁぁぁぁ!!!」


 酔いが回って来たソルは笑いながらローズの肩をバシバシと叩き、そしてローズは号泣しながらソルにしな垂れている。あの様子を見る限りかなりの泣き上戸なのだろう。

 そしてウルフ達の方も酔いが回っているのか自分の国の王女様に対してかなりフランクに接している。しかもウルフの方もかなり酔いが進行してしまったのか自分の悲惨な身の上話を楽し気に話し始めてしまったのだ。


 「いや~実は私はムゲンさんに拾われるまでは他のパーティーの奴隷だったんですよ」


 「ええ!? そ、それは笑いながら話す事なんですの!?」


 「ちょ、ちょっとウルフさん」


 「いいんですよハルさん。私はですねぇ実の親に売り飛ばされて碌でもない男に買われていたんですよぉ~あはは~~」


 このウルフの自虐ネタには流石に他の面々も酔いが引っ込みはじめる。

 そろそろ止めようかと思うムゲンであったがここで彼の動きは次のウルフの発言で止められてしまう。


 「もう私はダメダメなんですよ~。奴隷としてうじうじしていたり、それに私を助けてくれたムゲンさんにも『好き』だって告白もできない意気地なしですし~」


 「「「「「え?」」」」」

 

 酔いの勢いに任せてさらりと出て来た告白にムゲンだけでなく他の4人までもが呆気に取られてしまう。

 そして周りの空気が固まってしまった事に首を傾げていたウルフだが、しばしヘラヘラと笑っていた彼女も自分の発言を冷静に思い返して同じように固まってしまった。


 「あ……言っちゃった……」



 

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