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予想外の人物との遭遇


 目的地である温泉街へと向かう道中に現れた山賊御一行様、無謀にも最高ランクの冒険者へと襲い掛かり略奪を決行した。

 獣の如き欲望をむき出しにしてムゲンへと襲い掛かった愚か者達。

 

 その結果――彼らは全員もれなくぼこぼこにされて近くの木々にミノムシの様に吊り下げられていた。


 「ふん、人の大事な物に手を出そうとするからそうなる」


 両手を払いながら鼻を鳴らすムゲンに対して返って来るのはうめき声だけであった。

 

 「お、おお流石は高ランクの冒険者だな。ものの数秒で終わらせてしまうとは…」

 

 山賊に脅されビクビクとしていた御者も驚いていた。何しろ山賊達がムゲンへと襲い掛かった瞬間に怖ろしさから目をつぶり、次に目を開けるともうすでに勝負は終わっていたのだから。

 

 「流石はムゲンさんですね」


 「まあ今更こんな連中なんて相手にならないだろう」


 当然の結果だと頷いているハルとソル。だがこの時にウルフはさり気なく彼が口にしたセリフが印象に残っていた。彼がさらりと言った『人の大事な物』と言うワードに少しドキッと女心をくすぐられてしまったのだ。


 いやいや私は何を自惚れた事を考えているんだろう。彼が言った〝大事〟と言うのはハルとソルの二人の場合は確かに〝恋人〟と言う意味合いなのだろう。だが自分はあくまでも〝仲間〟と言う意味で言っていたに決まっているのだ。

 そう頭の中で考えながらウルフは横目で3人を見る。するとそこには嬉しそうにしているハルとソルの姿が入って来た。


 「(私も…もしあの輪の中に入れたら……)」


 自分の人生に絶望しきっていたところをどん底から救い上げてくれたあの少年はウルフにとってはあまりにも眩すぎた。そして…そんな彼にとって〝大切な恋人〟である二人のあの少女が羨ましかった。もちろん自分をあの最低な【異種族の集い】から解放してくれただけでも感謝に堪えない。でも、でももしもあの二人同様に憧れの彼に自分も愛を向けられたのなら……。


 そんな事を考えていたせいかウルフはまるで物欲しそうな子供のような瞳を二人の仲間の少女へと向け続けてしまっていた。



 ◇◇◇



 道中で下らないハプニングがあったものの無事に目的の温泉街へと到着したムゲン一行。そこは自分達の暮らしている町とは違い特有の風情がある。街中を見渡せば浴衣を着た人物が楽し気に歩いている姿が目に映る。何より街中に温泉特有の湯の香りが広がっているのだ。


 「おお~予想以上に賑わっているな。もう少し人が少ないと思っていたが…」


 活気のある温泉街を見てソルは意外そうに声を上げる。

 山奥と言う事もあり人も少ないかと思えば予想より大勢の人間が訪れている。よく見ればウルフ同様の亜人もちらほらと浴衣姿で歩いている。


 「さて、早速温泉に直行と行きたいところだがまずは旅館へ向かうか」

 

 周囲を見渡せばこの街にはいくつもの宿泊施設がある。これだけの宿泊する建物があるならば自分達のように予約をしていない者でも大丈夫だろう。当日の客でもどこかで必ず泊まれるはずだ。

 しばらく街中を歩き続けてムゲン達が目を付けたのは木造建築で建てられた風情を感じさせる旅館であった。


 旅館の入り口をくぐり中へと入ると早速この旅館の仲居と思われる女性が微笑ましい笑顔と共に出迎えの挨拶をしてくれた。


 「ようこそ、遠路はるばる当旅館『ハナミズキ』へお越しいただきありがとうございます。ご宿泊のお客様でしょうか?」


 「はい。あの~4人なんですけど当日の宿泊は大丈夫ですかね?」


 「はいお部屋の方は空きがあるので問題はありません……ですがお部屋の割り振りはいかがしましょうか? 見たところお連れの方は全員が女性のようですが……」


 仲居の女性の部屋割りはどうするかと言う質問に対してムゲンが答えるよりも先にソルが身を乗り出し伝える。


 「それならここに居る4人全員同じ部屋で頼む」


 「お、おいソル。ここは男女に分けて…」


 「そんなの今更だろう。私やハルと同じベッドでいつも寝てるじゃないか」


 「おま、あまり人前でそういう事は…それにウルフだって居るんだぞ」


 「私は同室でも全然構いません。それにムゲンさんだって別に変な気を起こすつもりも度胸もないでしょうし」


 さり気なくどこか失礼な物言いと共にウルフはあっさりと自分と同じ部屋でも問題ないと口にする。そして残りのハルも当然だが同じ部屋と言う事で同意し、結局は女性陣に押され全員が同じ部屋で寝泊まりする事となった。


 「それではお部屋までご案内いたします。どうぞこちらへ」


 宿帳への記入や館内説明など一通り受付ですべきことを済ませると自分達が泊まる部屋へと案内される。先頭を歩く仲居さんに付いていくと前方の廊下から話し声が聴こえてきた。


 「いやーそれにしてもあそこの露天風呂はいい湯だったな~。若返った気分だぜ」


 「まだ十代の少年の言うセリフじゃないわよカイン」


 前の方から若い男女の話し声が聴こえてきた。それ自体は本来ならば別に気に留めるようなことではないだろう。ただしその話し声が自分の聞き覚えのある声ならば話は別だ。

 相手側の少女もムゲンの顔を見ると廊下の中央で思わず足を止めてしまっていた。


 「ホルンじゃないか。まさかこんな場所で会うなんてな……」


 「ム、ムゲン? どうしてあなたがここに…?」


 まさかの場所でかつての仲間との遭遇に二人は互いに驚きを露にするのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] ずっと同じベッドで寝てて未だに手を出してないのかな?だとしたら度胸がないと言われるのも仕方がないしむしろヘタレすぎるだろ
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