表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/296

任務終了

いよいよ第二章も終わります。そして新章へとそろそろ突入です!


 「うぐっ…はは…くはは…まさかこうまで一方的に蹂躙されるなんてな……」


 ムゲンの足元でうつ伏せの状態で力なき笑い声をナナシが漏らしていた。いや、と言うよりももう笑う事しかできないのだろう。

 

 「これまで何人も正規ギルドの冒険者を葬って来たウチがたった1人の小僧っ子にやられるなんて…くく…もはや笑うしかないな」


 「何の罪も無い人間をこれまで殺してきた報いだな。当たり前だが同情の余地はないぞ」


 本来であるなら止めを刺すべきなのかもしれない。だがこの男が【ディアブロ】の支部長だと言うのであれば捕らえておく必要があるだろう。まだアジト内には兵隊達が残っているのかもしれないが所詮は末端だ。ほとんど大した情報を有してはいないだろう。


 「(だが支部長クラスなら話は別だ。コイツを切っ掛けに【ディアブロ】の他の支部の情報、それどころか本部の情報すら抜き取れるかもしれない)」


 まだ辛うじて意識を保っているナナシの意識を完全に刈り取ろと首筋に手刀をかざす。だがここでムゲンは彼がこの状況で笑っている事に気が付く。その笑みは勝負に負けた自分自身への嘲笑だけではないと瞬時に悟った。


 不味いと思い意識を刈り取ろうと手刀を下ろそうとしたのだが一手遅かった。


 倒れ伏すナナシの全身におびただしい量の魔法陣が展開される。そう、これは最期にメグが使ったあの自爆魔法〈デストラクト〉に間違いなかった。


 「お前、まさか自爆を…!」


 「このままお前に捕まるぐらいなら…ごほっ、ウチは死を選ぶさ。それに尋問はまだしも拷問されるのは嫌だからな。一思いに楽になれるならこの方がマシだ。何より…お前の悔しがる顔を見れるんだからな……」


 そこまで言うと遂に力尽きたのかナナシはがくりと気を失った。だがもう意識がないにもかかわらず彼の全身の魔法陣は消えず、それどころかなおも増殖し続けている。

 もうムゲンにはこの場から離れると言う選択肢しか残されていなかった。ナナシ本人が気を失っても魔法は止まらない。かといって彼の息の根を止めたとしてもそれはそれで結局は情報は取れやしない。それどころか下手に今の爆弾と化した彼に外傷など加えようものならその瞬間に大爆発の恐れもある。


 その場から一気に跳躍してナナシの姿が見えなくなるまで距離を離してから数秒後に凄まじい爆発音が響き渡り、天へと向けて黒煙がもうもうと立ち昇っていた。



 ◇◇◇



 「そっか…ナナシさんはやられちゃったんだね」


 第2支部の支部長である少年ユーリ・コロイは偵察に出していた小鳥達から話を聞いて悲しそうに目を伏せていた。

 彼の手の上や肩に乗っている鳥達は『ぴーぴー』とまるで人間が喋っているかのように鳴いている。


 この少年は《ビーストテイマー》であり動物はもちろん魔獣だって意のままに操る力を持っている。そして彼には動物の声を理解する力も兼ね備わっていた。

 一人集団からはぐれて孤立していた【異種族の集い】のアーカーをフェンリルに食い殺させたその後に彼は〝体内〟から小鳥達を呼び出し第三支部付近を見回らせていた。そしてムゲンとナナシの戦闘様子も小鳥から伝達され全てを知った。


 【ディアブロ】第3支部支部長のナナシは正規ギルドの冒険者によって撃破されてしまったと。


 「どうしよう。まさか僕が今日このアジトにやって来た日に限って表の冒険者の人達が居たなんて……」


 今回このユーリが第3支部にやって来た理由は本部に居るギルドマスターであるオーガ・ドモスから散らばっている幹部全員の招集を命じられ、その伝令役として彼はここまで足を運んだのだ。だが自分がやって来た頃にはまさかの冒険者の襲撃、すでに兵隊達は大勢やられて大打撃を受けていた。


 「どうしよう…今からナナシさんを倒したその黒髪の人だけでも殺しておくべきなのかなぁ?」


 だが観察していた小鳥達から聞く限り自分と同レベルの幹部をその少年は一方的に叩きのめしていたらしい。仮に自分がここで出て行っても勝ち目があるとは限らない。それに彼には他の仲間達だって控えて居る。もしもここで自分が敗北し捕まれば情報を抜き取られるかもしれない。


 「はあ…今回は仕方ないよね。気付かれないうちに退散しようっと」


 悩んだ末にユーリは撤退してマスターのオーガへ第3支部壊滅を伝える事を選んだ。


 「でも一応情報漏洩の可能性は少しでも消して置かないと…」


 そう言うと彼の体内からアーカーを喰ったフェンリルが飛び出て来た。


 「えっとねポチ、この先にあるアジトの兵隊さん達を全員食い殺してきて欲しいんだ。もしかしたら末端の人でも不味い情報を持っているかもしれないし……それが終わればまた僕の中に戻してあげるからね」


 残虐すぎる命令を無垢な顔で出すとフェンリルは小さく頷きアジトの方へと一瞬で走り去っていった。


 そしてまた彼の腹部が服の上から盛り上がりそこから別の大きな異形が飛び出て来る。それは上半身が猛禽類で下半身が獅子である魔獣、グリフォンであった。


 「それじゃあクーちゃんまた背中に乗せてね。長距離移動だけど…が、頑張ってね」


 「クアアアアア!」


 優しい声色でお願いをする主に大きな声で鳴いて返事をするとそのまま巨大な翼を羽ばたかせて飛び去って行く。


 こうして今回ムゲン達に与えられたS難易度依頼【ディアブロ】支部壊滅の任務は終了したのだった。



もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ