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その頃の【真紅の剣】


 お荷物扱いしていたムゲンをクビにした【真紅の剣】のメンバー達は早速街へと繰り出し近くの酒場へと足を運んでいた。ギルド内の酒場とは違い値段の張るメニューが並ぶ場所だがAランクパーティーとして他の冒険者よりも遥かに稼いでいた彼等はよくこの場所を利用していた。ただしこの場所に来るのはムゲン以外の三人だけ、いつも彼は仲間外れにしていた。

 そしてその仲間外れにしていたムゲンが完全にパーティーから消えた事で3人は祝い酒を飲んでいたのだ。


 「それじゃあ役立たずの無能が消えてスッキリした【真紅の剣】を祝ってカンパーイ!」


 マルクの言葉にメグとホルンも同調して酒の入ったコップを愉快そうにぶつけ合う。

 そして酒が入り上機嫌となった三人の口からはムゲンの悪口が途切れることなく次から次へと出て来る。


 「しかしスッキリしたな。これで【真紅の剣】はこれまで以上に活躍できるぞ」


 「魔力値最底辺が消えたからもう足を引っ張られる事もないしねぇ」


 「これで私たちも本格的にSランクを目指せそうね。悩みの種が消えたわ」


 「ああ…一気に駆け上がってやるぜ」


 この街のギルドの最高のSランク、この地位まで上り詰めるまで自分達はもうあと一歩なのだ。現在のSランクの称号持ちは3組、その数少ない選ばれた存在にもう少しで自分達は辿り着く。


 「それでマルク、この後はどうするの? あの無能が消えたのはいいけど新しいメンバーでも補充する?」


 注文していたパスタ料理を口にしながらメグは今後の方針をマルクに尋ねる。

 

 確かに無能が消えたのは良いことだが人数が減ったのは少し考えるべきだろう。とは言えここまで順調に進んで来た自分達だ。メンバー補充はまだ後に回してもいいだろう。


 「仲間集めも大事だがそれよりもまずはランクを上げる事を優先するぞ。オレ達はAランクの中でもかなり評判がいい。あと少しでSランクに成れるのなら先にランク上げをしてしまわないか?」


 マルクのその提案にはホルンが同意した。


 「そうね。私達が最高ランクに昇格すれば私達のチームに入りたいと志願してくる冒険者の数も必然的に増える。つまりはより一層優秀な人材の発掘ができると言うこと。マルクの言う通りまずはランク上げを目指しましょう」


 「確かにそっちの方が良いよね。どうせ仲間にするなら強いヤツがいいじゃん。またあんな無能を引いたらアイツをクビにした意味もないしさ」


 「よし、じゃあ早速明日にギルドから高難易度の依頼を受けるとしよう」


 マルクの決定に他の二人も特に異論を唱える事も無かった。

 どんな依頼であろうと自分達が失敗する訳がない。そう心から信じ切っていた。

 

 「そう言えばあの無能はこれからどうする気なんだろうね。またソロに戻るか、それとも奇跡でも起きて別のパーティーに入れるか」


 メグが居なくなったムゲンのその後を話題に出すとマルクは馬鹿笑いを始める。


 「あの無能が他のパーティーに入るのは無理だろ。誰だって廃棄されたゴミを持ち帰らないだろ。居るとしたらよっぽどの変わり者だ」


 マルクが大声でそう言うと他の二人は心底愉しそうに笑い声を上げるのだった。



 ◇◇◇



 二人の美少女にサンドイッチ状態で睡眠はとれず疲れも抜けなかったムゲン、その目の下には薄っすらとクマが出来ている。


 「だ、大丈夫ですかムゲンさん」


 一目で体調万全でない彼を心配そうに見つめるハル。

 気持ちは大変嬉しいのだがハッキリ言って君達がオレのベッドに潜って来たことが原因だ、とも言えず愛想笑いを返しておく。


 さて昨日のハプニングはさておき今オレたち【黒の救世主】はチーム結成初の依頼を受けている真っ最中だ。


 ギルドの掲示板から受けた依頼の難易度はそこまで高くはない。この街から少し離れた森林エリアでモンスターが頻繁に出現するので退治して欲しいと言う物だ。

 ちなみに討伐内容のモンスターはブラックハウンドと言う魔獣だ。一見すれば黒い犬のように見えるがその獰猛性は一般人を平然と喰い殺すほどに危険だ。


 依頼に指定された付近を歩いていると何やら黒い影が複数前方からゆっくり歩いて来る。

 低い唸り声を出しながら口からは涎をダラダラと垂らしている、完全に自分達を喰う気満々らしくいつ飛び掛かって来てもおかしくはない。


 「向こうはやる気満々だな。来るぞ」


 ソルが軽い口調でそう言うと同時だった。

 魔獣達は群れで一斉にムゲン達へと向かってくる。


 先頭に立っていたムゲンは肉体能力を強化する。視覚も強化されて相手の獣たちの動きがスローに見え、自分に喰らい付こうとする魔獣の噛み付きを紙一重で躱し的確に急所を拳や蹴りで破壊する。ただの獣とは違い魔獣は耐久力も高い。しかしそんな防御力など意に介さないで次々と魔獣を撃退していく。


 「おおやるなムゲン。私も負けてられないなぁ!!」


 凄まじい速度で次々と魔獣を撃退して行く彼を称賛しながらソルは自らの得物である剣を腰から抜くと一瞬で魔獣達の眼前まで移動し剣を真横に振るう。その一撃は魔獣達の肉体を一瞬で上下に分断してしまう。

 彼女の職は《魔法剣士》、しかし一切の魔法を扱わずこの程度の魔獣達を捌いて行く。

 

 「<ファイアーボール>!」


 そして背後からはハルの魔法で的確に援護射撃で魔獣を打ちぬいて行く。

 彼女の扱っている魔法は初級の物だがその威力や速度は明らかに他の魔法使いとは一線を画す。炎の玉を当てられている魔獣は全く避けれず一瞬で火だるまとなる。


 こうして彼等は10分もしないうちに見事に依頼を達成してしまうのだった。


 「いやーやっぱり凄いじゃないかムゲン。見ていて惚れ惚れする動きだったぞ」


 仕事を終えるとソルは背後から抱き着いて来る。

 彼女はビキニアーマーなので色々と刺激が強いがそれでもチームメイトに褒められるのは気分が良かった。少なくとも【真紅の剣】ではもう誰も何もいってはくれなかったから新鮮だった。

 それにムゲンも【真紅の剣】の時よりも動きやすく戦いやすかった。いつもは彼等のフォローばかりしていて自分の思い通りに戦えなかったがこの二人は自分の思う通りに動かさせてくれる。


 こうして【黒の救世主】の初依頼は危なげもなく見事に達成されたのだった。



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