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ムゲンVSメグ 


 「な、何だ今の暴風は!?」


 目の前の敵を斬り捨てながら突如として背後から吹き荒れた風に驚きダストが後ろを振り返った。すると視線の先ではムゲンとあのメグと思われる《魔法使い》が向かい合っていた。だがあのメグと言う少女はどういう訳か一気に成人まで肉体が急成長を遂げている。


 「くっ、ムゲンさん今援護します!」


 同じ《魔法使い》であるハルがすぐに彼の元へと駆け寄ろうとする。だが兵隊とは言え闇ギルドの人間、それも数が無駄に多いために敵の兵が壁となって行く手を阻む。

 

 「そこをどけぇ!」


 ソルが最大限まで肉体強化を施し閃光の様な速度で敵を切り裂いて数を減らしていく。その人知を超えた速度に同じ《魔法剣士》であるアーカーは味方ながら戦慄する。それと同時にSランクのレベルを見てある事を決断する。


 くそ…これがSランクの実力だって言うのか? だとしたら今の俺じゃまだまだ実力的にはSには届かねぇぞ。だがこの依頼の中で大きな手柄を一つでも挙げればのし上がれる可能性はある……!


 こんな状況でも彼の頭の中は成り上がる事が大部分を占めていた。

 そこで彼が標的にしたのはムゲンと向かい合っているメグ・リーリスだった。


 「(あの女を俺が仕留めれば大手柄だ。あのムゲンに殆ど任せて美味しいところだけさらって行く!)」


 そう考えてアーカーは【異種族の集い】のメンバーに声をかけてムゲンの方へと加勢に行こうとする。


 「おいお前達! まずはあの《魔法使い》を仕留めるぞ。【異種族の集い】は俺に続け!!」


 続々と集まって来る雑兵を他のパーティーに任せて一気に大物を狩り漁夫の利を得ようと動く。だが彼らが近づこうとした瞬間に視線の先に居るムゲンが突如大爆発を起こしたのだ。


 「な、なんだぁ!?」


 「爆発したにゃん!?」


 よく見ていなかったがあのメグと言う女が指を鳴らした瞬間にムゲンの体が爆発を引き起こしたのだ。その爆風を当てられてアーカー達の足が止まる。

 

 愛している人の体が爆発した事でハルとソルの二人が悲痛な声を上げる。


 「おいムゲン大丈夫か!?」


 「ムゲンさん!」


 目の前で群れて襲い来る雑魚を処理しながら二人が叫ぶ。だが彼女達の不安をかき消すかのようにすぐにムゲンは大声を出して自分の無事を知らせる。


 「大丈夫だ二人とも! 俺にかまわず目の前の敵に集中しろ!!」


 爆風が晴れるとそこにはムゲンがしっかりと立っていた。

 彼の体は爆発でかなり汚れてはいるが深手と言うほどではない。とりあえずは彼が無事だと知り二人はほっと胸をなでおろす。


 自分の魔法をモロに直撃したにもかかわらずぴんぴんとしているムゲンを見てメグが呆れる。


 「本当に頑丈なヤツね。今の私の魔法の直撃を受けて平然としているんなんてさ」


 「体が丈夫くらいな事しか取り柄がないからな」

 

 「あははそうよねぇ。アンタは『無能』なんだから」


 互いに軽口を言い合っているとムゲンの後ろに一度足を止めたアーカー達がやって来る。そして彼等はそれぞれ構えを取る。


 「ここは協力してあの《魔法使い》から仕留めるぞ! あんたも援護しろ!!」


 口では互いに協力してメグを倒そうと言っているアーカーではあるがほとんどはムゲンに任せて美味しいところだけ横から奪おうと目論んでいる。

 だが彼のそんな甘い奸策が通用するほど今のメグは甘くはなかった。


 「あんた達みたいな小物なんて今のメグ様が相手する価値もないわ。こいつ等に遊んでもらいなさい」


 メグは瞬時に魔法陣を描くと岩の魔法を発動させる。しかし最初の不意打ちの時とは違い魔法陣から出て来る岩石はムゲン達の方へは飛ばずそのまま彼女の目の前に降り注いで積もるだけ。だがここで岩の山がコトコトと動くとすべての岩石が一か所に集まりゴーレムを形成する。


 「な、ゴーレムだと!?」


 「あんた達はコイツに遊んでもらいなさい。さあそこの小物パーティーを潰しなさい」


 岩の巨人は自分の主の声に従いアーカー達へと狙いを定めて襲い掛かる。

 そのフォローにムゲンはまわろうとするがメグがまたしても指を一つ鳴らした。その指パッチンの直後に再びムゲンの体が爆発する。


 「ぐっ…しまった…!」


 「あんたは私が直接屠るんだからよそ見しないでよ」


 「ぐっ、ゴーレムの方は任せるぞ!」


 今のメグの実力はハッキリ言って計り知れない。実力的にはAランク冒険者以上だってあり得る。アーカー達には多少の不安はあるが仮にも今回の遠征に抜擢されたAランクパーティーだ。自分のフォローがなくともゴーレムくらいは対応できるだろう。

 ならばこの場合自分はメグの意識を他に向けぬように動くべきだろう。


 「来いよメグ。仮にも同じパーティーメンバーだった者としてお前の暴走を止めてやる。堕ちたお前如き『無能』の1人で事足りるぜ」


 他に敵意を向けさせないために彼は不敵な笑みと共にくいくいと手を曲げてわざと挑発してやる。その行動は沸点の低い彼女を誘導するには十分過ぎ彼女は醜悪な笑みを浮かて自分の周辺に大量の魔法陣を展開した。


 「上等だよクソ無能! お前を動けなくした後でその五体を引き裂いてやる!」


 こうしてかつては同じ【真紅の剣】に所属していた者同士による〝殺し合い〟がついに始まってしまった。



 

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― 新着の感想 ―
[一言] 身の丈に合わない評価を得た所で破滅するだけなんですけどね。ムゲンの手柄を掻っ攫った所で一時は優越感に浸れるが、実力以上の仕事を言い渡され失敗して破滅でしょう。その前にこのアーカーとやらは功を…
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