魔法使いとの再会
「さて…遂に辿り着いたな。ここが【ディアブロ】の支部か……」
道中のモンスターの巣窟である『魔獣の森』を抜け、そして野営で休息をとり翌日にはまた再び長距離を歩き続けた。地図に記された目的地はまたしても森林の中を歩くことになったが前日の『魔獣の森』とは違い静かな森の中を進んでいく。そしてかなりの距離を歩き続け遂にムゲン達はディアブロの支部と思われる場所に辿り着けたのだ。
地図に記された目的地に着いて目にした光景に皆は息を呑んでいた。
「随分とアンバランスな風景だな…」
ダストがそう言うのも無理はないだろう。
辿り着いた【ディアブロ】の支部はぱっと見て外観は貴族などがよく暮らしている様な巨大な石造りの城のようだ。しかし周辺にはその他の建物は一切見当たらず、ましてやこんな森林の中に巨大な建造物がぽつんと建設されている光景は非常に不気味だ。
まあアジトにしている建物のセンスはともかく人目に付かない場所に建てられているのは闇ギルドなら当然だろうが。無駄に豪勢な気もするが……。
「さて、みんな聞いてくれ」
あの【ディアブロ】の支部がもう目と鼻の先だと言う事でムゲン達のパーティーは比較的に冷静であるがその他の二つのパーティーメンバーは緊張した面持ちだ。
だが入り口前で委縮していてはハッキリ言って話にならない。自分達は今からあの支部の中へと突入するのだから。
「ここから俺達はあのアジト内部に突入する。本部ではないとは言えもしかしたら支部の中には幹部クラスの相手も待ち構えている可能性も大だ。全員今まで以上に気を引き締めてほしい」
ムゲンがそう言うと皆は頷く。だがその中でアーカーだけは内心で汚名返上のチャンスだとも思っていた。
「(この支部に幹部クラスの相手が居るならむしろ好都合だ。あの『魔獣の森』での失態をここで活躍して帳消しにしてしまえば……)」
今回の依頼を無事に達成しても自分の失態をギルドに知られればSランクの昇格はないかもしれない。ならば誰もが納得する手柄をこの手で上げる。
「よし、それじゃあ突にゅ……避けろ!?」
まさに今から突入しようとしていたムゲンがいきなり大声を出して回避行動の指示を出す。
そんな彼にコンマ数秒遅れてハルやソル、そして【戦鬼】の面々も危険を察知してその場から全力で飛びのいた。
「え、どうし……?」
いきなり後方へ跳んだ他の冒険者達の行動に首を傾げているアーカー達。だがその中で彼ら同様に迫りくる危険を察知していたウルフだけは傍にいたキャントとケーンの腕を掴むと皆と同様にその場から離れる。
「ボケっとするな馬鹿!!」
未だに事態が呑み込めていないアーカーの襟首を掴むと急いでその場から離れる。その際に彼の口からは『ぐえっ』と聴こえてきたがそれぐらいは我慢してもらおう。
ムゲンがその場を離れたその直後、彼等の立っていた場所には無数の岩が降り注いで来たのだ。
「な、何だぁ!? どこから降って来たんだよこの岩は!?」
ムゲンに放り捨てられ尻もちをつきながらアーカーは突然の超展開に目を白黒させている。
どうやら突入前から自分達の存在はすでに相手に知られていたようで逆に奇襲を受けてしまったのだろう。
「魔法による先制攻撃…くそ、このアジト付近に侵入者を探知する仕掛けでもあったか?」
まさに彼の予想通りであった。この支部を円にして取り囲むように一定の範囲にはとある《魔法使い》の探知用の結界が張られている為にムゲン達の接近はその人物には丸わかりだったのだ。
「不味いですムゲンさん! すぐに第二波が来ます!!」
ハルの叫び声に反応して上空を見ると空には巨大な魔法陣が展開されている。その魔法陣からは今度は大量の火球がまるで隕石の様に次々と飛来してくる。
「全員後ろに下がっていなさい!!」
「私達が対応します!!」
空から降り注ぐ広範囲魔法を前に動いたのは二人の《魔法使い》だった。
ハルとマホジョの二人はそれぞれ魔杖を構えると同時に魔法を発動する。
「「<ウォーターウォール>!」」
二人が魔法名を高らかに唱えると同時に巨大な水の壁が出現する。その分厚い水壁は炎の玉を全てかき消して他の冒険者を守り切る。
それからしばらくの間続く火の雨を防ぎきるとやがてその雨はやみ天へと描かれている魔法陣も消失する。
「へえ~流石にやるじゃない。Sランクの称号は伊達じゃないわね」
攻撃が止むとアジトの入り口から何者かが姿を現した。だが姿をみずともその声を聴いてムゲンは相手の正体が理解でき思わず息をのんでしまう。
「……本当にここに居たんだなメグ……なんでなんだ……」
「相変わらずウザい無能ね。この期に及んでお説教じみた発言をするなよ」
【ディアブロ】の支部から姿を現したのはかつて同じパーティーに所属していた《魔法使い》のメグ・リーリスだった。
「でも丁度いいわ。レベルアップした私の力を振るうには絶好の相手だからね」
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