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ギルドに忍び寄る不穏な影

ムゲン達が町を離れているその頃のギルドでは……。


 ムゲン達が【ディアブロ】の支部壊滅へと向けて遠征へと向かっている頃、ファラストの街のギルドには新たな冒険者が門戸を叩いていた。

 

 喧噪に包まれるギルドにやって来たその女性は一見すればどこぞの令嬢の様に美しい金髪を靡かせる少女。周りの男はその魅惑的な少女の容姿に思わず見とれて馬鹿騒ぎをやめてしまっていた。

 その少女は受付の方まで歩いていくと職員へとギルド加入を申し出た。


 「この【ファーミリ】のギルドに入りたいのね。冒険者登録をお願いしたいのね」


 「わ、分かりました。ではこちらの書類にご記入を……」


 一見すれば貴族階級のような美しい出で立ちに職員であるカメラの方も少し戸惑っていたがすぐに職務を全うしようとする。だがそんな二人のやり取りを邪魔する者が居た。


 「おいおいお嬢さんみたいな娘が冒険者だってぇ? もしかして冷やかしか?」


 屈強な冒険者の1人が女性の後ろに立つと気に食わないと言った様子で突っかかって来た。

 この男はBランクの冒険者でありそして〝新人いびり〟と陰で言われている男だ。初めて加入してきた冒険者には今回の様に絡んでは野次を飛ばしてくる。中にはこの男の弱い者いじめに耐え切れず冒険者の道を降りる者も居た。


 「いいか、冒険者ってのはモンスターと命がけの戦いを日々繰り広げる稼業だ。生半可な覚悟の人間、ましてやお嬢さんの様なひょろちい女の子に務まるとは思えないぜ?」


 相手を威圧させるかのように顔を近づけて話す男に対して直接圧を向けられていないカメラの方が震えていた。まだ入って間もない、それも一職員の彼女は涙目になって震えている。しかしその一方で圧を叩きつけられている少女は男のことをボーっと見続ける。


 「どうしたお嬢さん? もしかして俺の迫力に恐れおののいたか?」

 

 「……ぷっ、あははははは!」


 自分の恐ろしさに硬直しているとばかり思っていた少女がいきなり噴出した。そのリアクションに思わずきょとんとする男だがすぐに顔を真っ赤にしてがなり立てて来る。


 「何がそんなにおかしい! 馬鹿にしてるのかこのアマ!!」


 「ちょ、ちょっとあなた、謝った方がいいんじゃ…」


 このままでは口だけではすまず手を出してくる恐れからカメラは少女に謝った方が良いと促す。だが少女は口に手を当てて必死に笑い声を堪えようとする。


 「だ、だって今時こんな分かりやすい新人いびりがあるなんてウケるのね。この手のタイプって完全に中身がない人間なのね。その無駄に発達した筋肉だってどうせ見かけだけなのね」


 「き、貴様ぁッ!!」


 堪忍袋の緒が切れた男は拳を握って容赦なく少女の顔面へと拳を繰り出した。だがその剛拳が少女の顔面に突き刺さる直前に少女の姿が消えたのだ。


 「なっ、消えた!?」


 本当にギリギリまで拳を引き付けていたために男はバランスを崩してたたらを踏む。その背後に一瞬で回り込んでいた少女は男の背後に飛び掛かりそして彼の眼球にナイフを突きつけた。

 

 「うっとおしのね。自分と相手との力の差も見抜けない目玉なんて飾りと同じ、いらないのね?」


 「ひっ、や、やめ…」


 「3、2、1、ザクーッ!!!」

 

 「ひぎゃああああああ!?」


 震える男の耳元で叫びながらナイフを眼球のギリギリ一歩手前まで突き出してやる。そのショックから屈強な体格の男からは想像もできないほどに情けの無い悲鳴がギルド内に響き渡る。そのまま男は泡を吹きながら仰向けに倒れてしまった。


 「やっぱり見掛け倒しなのね」

 

 つまらなそうにそう言うと彼女は倒れた男を踏み越えて冒険者登録を済ませようとカメラに話しかける。

 まだギルドに加入すらしていない少女の力に周りの冒険者はざわつきだす。そんな周囲の困惑している空気など放置して彼女は加入手続きの書類を記入しながらカメラに一つの疑問を投げかける。


 「ところで受付のお姉さん、一つ訊きたい事があるのね」


 「ひゃい、な、何でしょう」


 見た目とは裏腹に得体のしれない実力も持っている少女に少し緊迫して変な声を出しながらも返事をするカメラ。

 

 「この冒険者ギルドの【真紅の剣】ってパーティーについて色々と訊きたいのね」


 「え、【真紅の剣】ですか? そ、それはいいですけどもうあのパーティーは……」


 少女が何故【真紅の剣】について知りたがっているのかは分からないが既にあのパーティーは解体されて存在しない。その事実を話すと少女は更に質問をしてきた。


 「それなら【真紅の剣】に所属していた当時のパーティーメンバーは誰か教えてほしいのね。まだこのギルドには所属しているのね?」


 「その4人…いえ3人の内のお一人だけが残っています。残りのお二人は消息不明で……」


 「……その人の名前って何なのね? ちょっとお話がしたいのね」


 「その人は《聖職者》の職を持っているホルン・ヒュールさんと言う女性の方ですが……」



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