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奴隷でのストレス解消


 誰一人欠けることなく『魔獣の森』を突破したムゲン達はモンスターの出没ポイントから大分離れた場所で野営の準備を整え一晩を明かすことにした。もう日も沈み目的地まではまだ距離がある。今日はここで足を止めて一日寝泊まりし、明日に備えようと各々が休息をとる。


 「ほーらご飯ができたわよ。どーぞ」


 マホジョがそう言いながら皆へと具材のたっぷり入り込んだスープをよそって1人1人に配っていく。

 多種多様の食材がふんだんに入っており1杯だけでもすきっ腹を満たせるスープ。それを作ったのは今スープを配っているマホジョ、ではなくダストだった。


 「うまいなこのスープ…こんなに色々具材が入っているのに調和が取れている」


 「……あのゴツイ見た目からは想像できないよな。こんな美味いスープを作ったのがいかついオッサンが作っているなんてな…」


 「し、失礼ですよソル」


 もう何気に3杯もおかわりしながも結構失礼な事を言う彼女を叱りつけるハル。

 そんな彼女の声が聴こえていたマホジョはケラケラと笑いながらダストの頭をペチペチと叩いて気にしなくても良いと告げる。


 「気にしなくても良いのよソルちゃん。誰が見ても狩り専門で料理が出来そうにない見た目だからねぇ。うちのリーダーは」


 「何で今回の様な野営中に一度も食事を用意したこともないお前にそんな好き放題いわれなきゃならないんだ…」


 「別に私が作ってもいいのよ? ただしこんなグラマラスな美女の手料理を食べたいならタダとはいかないわよ?」


 「たくっ、この守銭奴が…」


 ダストとマホジョのふざけ合いに周りの皆が小さく笑っている。だが【異種族の集い】の皆はどこか不機嫌そうな空気を森を抜けてから出し続けている。もっと正確に言うならばリーダーであるアーカーがイラついており、キャントとケーンは彼の顔色を窺っている。そしてウルフは相も変わらず暗い表情のままだ。


 「(くそ、何たる失態だ…)」


 思い返されるのはあの森での無様な醜態。あれだけ啖呵を切っておいてモンスターにつかまり危うく命を落とし掛けた。

 今回の依頼は自分達にとってはかなりのチャンスなのだ。自分達が所属している【ハンティラ】のギルドの冒険者達の間では近々新しいSランク枠は自分達【異種族の集い】だろうと噂をされている。そして今回のS難易度の依頼、これをこなせれば自分達は一気にSランクへと駆け上がれるだろう。

 そうなればこれまで以上に報酬の弾んだ依頼も引き受けられる。そうなれば今まで以上の金だって自分達の元には転がり込んでくるだろう。


 「(そこまで上り詰めれば周りの権力を持つ人間も更に寄って来る。そうなれば俺の人生は安泰だ)」


 このアーカーと言う冒険者はハッキリ言って屑の部類の人間だ。彼が冒険者稼業を始めた理由も本当に短絡的、誰からも憧れられる存在に成りたいと言う心構えからだったのだ。まだ冒険者になる前、彼のギルドのSランクやAランクの冒険者は町を歩くだけでも周りから騒がれていた。そんなちやほやとされる人間が羨ましくあの場所に自分も立ちたいと思ったから冒険者になっただけ。命を懸けてモンスターと戦おうなどと言う気構えはまるでなかった。

 しかし運が良いのか彼は魔力の総量が多く冒険者としての才があったのだ。


 彼は少しずつ依頼をこなしD、C、Bとランクを上げていき、そしてキャントやケーンの様な〝亜人〟の仲間も集まった。

 ちなみに彼が亜人を仲間に引き入れたのにも打算的な目的がある。亜人とは人外の者、素の身体能力は純粋な人間を基本は上回る者が多い。そして何よりも亜人を仲間に引き連れて街を歩くと周りの人間からはこう言われるのだ。


 『相変わらず【異種族の集い】は全員が仲が良いな』


 『それぞれ違う種族で構成されたパーティーを纏め上げる。きっとリーダーはかなりの人格者なのね』


 異なる種族のメンバーを纏めているだけで〝人格者〟などと勝手な勘違いをされるのだ。外を歩くときは愛想よく振る舞うだけで馬鹿な町の住民共は騙される。そしてAランクまで上り詰めた頃には女にだって困らなくなっていた。

 自分を素晴らしい心根の冒険者と勝手な妄想を抱いた馬鹿女が自分に対してすり寄って来る機会も増えていきもう腹の中では笑いが止まらなかった。そして金も溜まっていき遂には自分専用の奴隷も購入できた。


 横をチラリと見ると、もそもそとスープの具材を口に運ぶウルフが目に入る。


 亜人であり、冒険者として活動していた過去もあり、そして何よりスタイルの良い美少女だから購入した奴隷少女。だが所詮は奴隷、自分がSランクになるまでの玩具だ。

 だが自分は今日そんな玩具に注意を促されそしてモンスターに捕まった。そのことを考えると鎮火しつつあった怒りの火は更に燃え上がる。


 「おいウルフ、ちょっと来い。いつもの〝仕事〟をしてもらう」


 「……はい」


 アーカーはまだ食べ終わっていないウルフの腕を取るとそのまま自分達のテントへと連れていく。

 テントの中に消えていく二人の姿を見てキャントは失笑しながらケーンに話しかける。


 「あーあ、アーカーったら大分イラついてるにゃん。これはウルフに少し同情するにゃん」


 「ふん、所詮は奴隷だ。どうでもいいさ…」


 「まあもうウルフもこのパターンには慣れているだろうしぃ。アーカーがイラつく度にストレス発散で抱かれているから今更でもあるけど、同じ女としてはあんな惨めな奴隷にはなりたくないにゃん」


 「くく…男の俺が言うのもおかしいかもしれんが同感だな」


 完全にウルフを見下している二人はテント内で行われる下劣な行為を想像していやらしく嘲笑う。


 強引にテントの中に連れてこられたウルフは今から何をするのかもう理解しているので彼が命令を口にする前に自分の衣服にもう手を伸ばしていた。

 いつも主人である彼は怒りを発散するためにこうして自分の身と心を穢す。そして彼はそれが奴隷である自分の仕事だと言って実行させる。


 「さあ俺の奴隷、今日も仕事をきっちり果たせ」


 「はい…」


 最初の頃は抵抗を見せていた彼女だが結局は誰も助けてなどくれない。それを理解したが故にもう諦めきっている彼女は小さな声で返事をしつつ衣服を脱ごうとする。


 だが彼女が衣服を脱ぐその直前、二人の居るテントの入り口が開かれて乱入者が入って来た。


 「何やってるんだお前?」


 そこには怒りを瞳に宿したムゲンがアーカーを睨みつけながら立っていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 一応アーカーのしている事は法に照らし合わせれば正しいんだよなぁ
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