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それぞれの準備

始まる【ディアブロ】との闘い。そして新たに虐げられている者。


 二人のギルドマスターから【ディアブロ】支部の壊滅の依頼を託されたムゲンは宿に戻るとすぐにハルとソルの二人にその内容を話していた。

 

 「この依頼は俺達【黒の救世主】にとって過去最大のものになる。二人とも気を引き締めてほしい」


 「それはもちろんですが…」


 「お前こそ大丈夫なのかムゲン。その…」


 歴戦の強者であるハルもソルも闇ギルドと戦う事に関して尻込みする事はない。それはムゲンも同じではあるが応接室を出ていく際に告げられた衝撃の事実。


 『残念ながらメグ・リーリスは闇ギルドに落ちてしまったようじゃ。この町を出てから彼女に何があったのかは知らんがな』


 自分のギルドの人間が闇に落ちた事実はロンブにとってもショックに決まっている。だがかつて同じパーティーに所属していたムゲンのショックは一層だったろう。

 もしかしたらホルンの様にメグは別の場所でやり直しているのではないかと期待していた。一度道を踏み間違えて過ちを犯しても彼女はまだやり直しがきいたはずなのだ。


 だが彼女は最後の一線を完全に超えてしまった。その事実は悲しいがムゲンの腹はもう決まっている。


 「大丈夫だ二人とも」


 不安げに気遣うように見つめる二人の恋人にムゲンは小さく笑って大丈夫だと伝える。

 その笑みは決して強がりでも何でもない。自分のなすべきことを理解して覚悟を決めたタイプの笑みだ。


 「確かにメグのこの選択は無念だ。だが関係ない。自分の道を決めるのは自分自身なんだからな。この選択があいつの道ならもうどうしようもない」


 そこまで言うとムゲンは拳を固く握りしめながら自分の胸の内の覚悟を二人へと伝えた。


 「もし今回向かう支部にメグが居るのなら俺が止める。それが最悪この手で命を絶つ事となってもな」


 自分は聖人などではない。かつて同じパーティーだったからと言って無駄な慈悲はやらない。現にホルンはちゃんとやり直せたのだ。そのやり直しをふいにして罪のない人間に害を与える側に立ったのならばそれ相応の報いを受けてもらう。


 ムゲンは恋人達を自分の元まで抱き寄せると囁くように言った。


 「お前達が居る限り俺は迷わないよ。だから心配しなくても大丈夫だ」


 「……私もです。ムゲンさんが居てくれるならどんな相手だろうが依頼だろうが不安も恐怖もありません」


 「まっ、もし迷ってしまった時は尻を蹴り飛ばしてでも、それかキスしてでも目覚めさせてやる」


 今の自分にとっての最も大事な宝は考えるまでもなくこの二人だ。その宝に害をなすと言うならば元仲間でも討つ覚悟はある。


 「しかし他の二組のAランクパーティーとの共同戦線か。そこに少し私は不安があるかもな」


 ソルの何気なく言ったこの一言はムゲンの中にもあった不安点だった。今までと違い他のチームと共に取り組む今回の依頼。上手く打ち解ければいいのだが下手に性格が合わず不和が生じなければいいのだが……。



 ◇◇◇



 ムゲン達が今回の依頼の為に準備を調えているその頃、当然だが他の二チームのパーティーも準備を整えていた。

 その中でムゲン達と同じ【ファーミリ】から今回の任務に選ばれたAランクのパーティー【戦鬼】のメンバーはこの依頼で自分達の名を一気に轟かせようと目論んでいた。


 リーダーであるスキンヘッドの屈強な体格の《戦士》ダスト・オルノ。


 チームの中で紅一点、《魔法使い》であり男性の目を引くグラマラスな体格のマホジョ・フレウラ


 そして《剣士》の職に就いている高身長の青年のギーン・ルウケン

 

 【ファーミリ】のギルド内でもこの三人はSランクには劣るとはいえAランクの中では間違いなく上位陣の実力を保有している。そして彼等も向上心が人一倍強いパーティー、Sランクへの昇格を夢見ていた。


 「いいかお前ら。今回の任務はギルマスからのものだ。聞けば難易度は間違いなくS難易度だそうだ。つまり本来であればまだAランクの俺達が引き受ける事の出来ねぇ依頼と言うことだ」


 今回は早急に【ディアブロ】の支部へと腕利きのパーティーを向かわせると言う特例であるがゆえに自分達にもS難易度の依頼を引き受ける権利が正式に渡された。

 そしてこの依頼を見事に達成すれば自分達は新たなSランクの一角に君臨できるかもしれないのだ。


 「今までは同じAランクで目の上のたんこぶだった【真紅の剣】のせいで次のSランクの席は諦めていた。だがマルクは消えて【真紅の剣】は完全解散した。これで次のS昇格の候補は自分たちのはずだ。お前ら気合い入れろよ」


 「分かってるわよ。Sにさえ上がってしまえば私達が受けれる仕事のグレードも更に上がる。そうなれば必然的に得られるお金も上がるんだからね」


 「またお金の話ですか。本当にあなたはがめついですね」


 「余計なお世話よギーン」


 少し野心が強く緊張感が欠けている気がするがチームとしては纏まっている【戦鬼】


 だがどこのパーティーも仲間同士が強く結託しているとは限らない。


 同時刻――【ハンティラ】のギルド


 「いいか、今回の依頼はマスター直々の依頼だ。間違っても足を引っ張るなよ『無能』が」


 「はい分かっています」


 ムゲン達と共に今回の依頼を受ける4人組のAランクパーティー。

 しかしその中で一人の少女だけがボロボロの衣服を身に纏い死んだ目をしていた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでAランクになるまで無能と呼ばれるような人間をパーティーに置いてるんだ?
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