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アルメダの第二人生 9

そろそろアルメダの番外編も終了予定です。次に番外編を書く予定は今のところはないのですが、もしかしたらカインとホルンの二人の物語の一コマを入れようかと考えています。まさかホルンが作者にとってもここまで重要なキャラとなるとは……。


 商業が盛んであるトレドだが町外れには廃れた区域もやはり存在する。その区域内に点々と存在する廃屋内の一ヶ所では大勢の人相の悪そうな連中が集まっていた。


 「随分と集まったな。ここらが潮時だろう」


 ざわついている面々を前に一際筋肉質の男が声を発する。その視線は壁際に置かれているある物へと向けられていた。

 

 こんな荒れ果てた場所に大勢の人間が屯している事は普通に考えれば十分おかしい事なのだが、壁際に置かれている代物の事を考えれば人目を避けて集合するのも仕方のない事だった。

 廃屋の壁際には複数の檻が置かれているのだ。だがその檻の中に閉じ込められているのは動物や魔獣ではない。閉じ込められているのはまだ〝年端もいかない子供〟ばかりなのだ。

 

 この連中は所謂人身売買をメインとして活動を行う闇ギルド崩れの連中だった。組織の構成員達は全員が生きるに値しない外道共であり鉄格子の中で詰め込まれている子供達を見ても同情の心など微塵も湧かない。それどころか彼等を売り飛ばした後に各々の懐に入る利益に目をくらませる連中だ。

 

 「よしお前等、今日でこのトレドから脱却するぞ。コイツ等を纏めて運び出す準備だ」


 「了解です。オラ餓鬼どもお引越しだ」


 闇ギルド崩れの弱小組織であるこの連中が今日まで生き延びれた理由、それは一つ所に居を置かなかった事にある。このトレドに訪れる前からこの組織は点々と拠点を移し替えており活動場所も限定していない。だからこそ今日まで逃げ延びる事が叶って来たのだ。そして今回も連中は当初に予定していた滞在期間がリミットを迎えたことで引越しの準備を始める。

 だがコイツ等は今日知る事となる。悪事はいずれその身に返って来ると言う事に。


 「騒ぐんじゃねぇぞ。どうせ助けなんてこねぇんだからよ」


 檻の1つを担ぎながら構成員の1人が運んでいる子供を脅しながら廃屋の外へと出る。まるで、いやまるでではなく完全に物の様に扱われ運ばれている少年は一切騒がない。それどころかその瞳には一切の希望も宿ってはいない。この男の言う通りどれだけ期待しても救いの手は伸びて来ない事を把握し諦めているからだ。それは他の檻に捕らわれている子供達も同様で誰もが死んだような目で大人しくしていた。

 そして最初の檻に閉じ込められている子が廃屋の外にある開けた場所に連れて来られたその時だった――檻を地面に降ろすと同時にその男の両脚に僅かな痛みと熱が走った。


 「いってぇ、なんだ……よ……うおぉあぁあぁああああ!?」


 両膝の下から痛みと熱が発生すると同時にその場で転倒してしまい何事かと両足を見た。だが……男の両脚は血だまりの中で分断されて転がっていたのだ。

 自分の身に起きた悲劇に思考が及ぶと次に遅れて〝痛み〟が生じて男の脳に許容を超える刺激を伝達する。


 「いだいだいだぁぁぁぁ!?」


 突然理不尽に脚を失った事の痛みと恐怖にのた打ち回っていると、響き渡る男の狂声に冷淡な二人分の女性の声が被さった。


 「ああ耳障りだわ。首を飛ばしておくべきだったかしら?」


 「そう? 罪の無い子供を食い物にする下種が泣き叫んで私はちょっとすっとしたけど」


 痛みで泣き叫びながら反射的に男は声の主を確かめる。

 視界の先でこちらに歩み寄って来るのは二人の美しい女性だった。だがその内の1人の女性には男としても見覚えのある顔だった。


 「ま、まさか……【コマース】のSランク冒険者のドール・ピリアナか……」


 「へぇ、人攫い組織の使い走りにも私の名は知れ渡っているとはね。とても不愉快極まりないわね」


 この組織の連中は一定期間拠点を置く場所についての周辺の下調べは欠かさない。当然だが冒険者ギルドのトップランカーの情報も集めてある。だからこそ町外れをメインに仕事を行っていたし今日には引き上げる予定だったのだが悪運が尽きたと言う事だろう。


 「どうしてこんな撤収ギリギリでお前みたいなヤツが……」


 「ああそれ以上喋らなくても良いわ。私の耳が腐るから」


 男の言葉を最後まで聞き終えるよりも先にドールは自作の魔道具を取り出す。取り出した魔道具は変哲の無い黒い鉄球と酷似しておりその球に魔力を籠めて動けない男に放り投げた。

 放物線を描きながら投げられた球は男の眼前まで差し迫った瞬間に強い白光を放ち、その直後に大爆発を起こし男の体を木っ端みじんにした。

 耳をつんざく程の轟音にアルメダが非難めいた視線を向けながら抗議の口を開く。


 「ちょっと物騒な物を使うなら事前に言ってよ。そもそも何アレ?」


 「簡易型の使い捨て量産爆弾よ。魔力の装填量で爆発規模も調整できるわ。それよりも次が来たわよ」


 軽い口調でドールが前方を顎で指すと今の爆音を耳にした他の構成員達が廃屋から勢いよく飛び出して来たのだ。

 わらわらと出て来る敵から視線を外さずにアルメダはドールに事前に交わした約束を口にする。


 「約束はちゃんと守ってもらうわよ。組織壊滅に協力する代わりに私の体のメンテナンスはちゃんとしてもらうわよ」


 「はいはいしつこく念押ししなくても大丈夫よ。今は前に集中しなさいな」


 こうしてSランクの《魔法使い》と元怨霊の異色コンビは同時に飛び出した。




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