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黒幕は巨大闇ギルド【パラダイス】、そして内通者は……


 「貴様……一体何のつもりだ?」


 一切の躊躇もなく斬りかかって来た殺意の刃を受け止めながらローズは至近距離でマインドと睨み合う。だが突然斬りかかられたローズ以上にマインドは鋭い眼光で彼女の瞳を射抜いてくる。

 互いに吐息が触れ合う距離を維持したままマインドは忌々しい表情を近距離で向けながら言った。


 「こちらの神経を逆なでする言葉は慎むべきじゃないか? かつて同盟国であるこの国の住人を傷つけた人間族に上から物を言われるのは不快極まりない。それに……この襲撃者を尋問して知った事だが元々コイツの狙いは《剣聖》のアンタやあのムゲンとか言うSランク冒険者らしいじゃないか」


 「……それに関しては申し訳ないと思っている。だがここで私に斬りかかる事をラティール王女様は良しとするのか?」


 「ふん……別に俺だって本気で殺そうなんて思っちゃいないさ。ただ……ハッキリ言って俺も人間は嫌いでね……」


 そう言うとマインドに纏わりついていた殺意が霧散してまた元の飄々とした態度へと戻った。だが纏う雰囲気は軟化してもその言葉には棘がある。

 言葉の棘はさておき敵意が消失した事を確認するとローズも剣を鞘の中へと納める。だがいつでも抜刀できるように片手は即座に剣を抜ける様に身構えておく。

 険しい顔を向けるローズとは対照的に完全に毒気の抜けた顔つきのマインドがこう問いかける。


 「それで、この事をラティール様にチクるのかな?」


 「……いや、この闇ギルドの不届き者は私を狙ってこの国の地を踏んだ。そちらからすれば他国の人間の来訪で巻き込まれいい迷惑だっただろう。それ故に今の行為については目を瞑ろう」


 「ほう、流石は〝剣聖〟様だなぁ」


 そう言いながらマインドはどこか小馬鹿にするような笑みを向ける。

 その嘲笑を受け止めながらローズは眼光を更に鋭くし、凄まじい圧を掛けた状態で更にこう続けた。


 「だが二度目があるのならば私もそれ相応の対応をさせてもらう事となるがな」


 その威圧に対してマインドは相も変わらず手をヒラヒラとさせて飄々とした態度を取り続けていた。



 ◇◇◇



 地下牢でローズとマインドがいざこざを起こしている間、ラティールによって客間の方に案内されたムゲン達は捕らえた襲撃者から収集できた情報について共有している真っ最中であった。

 

 「つまり……今回この国、そして俺達を襲撃してきた闇ギルド【ケントゥリオ】を裏で操っていた黒幕はあの巨大闇ギルド【パラダイス】だったと言う事なのか」


 「はいその通りです。捕らえた襲撃者にはマインドが体を痛めつけ直接聞き出しました。あまり褒められた手法ではありませんが……」


 過激な暴力で情報を引き抜いたマインドのやり方はラティールとしてはあまり好ましい収集方法とは言えないのだが、それでも彼が直接体に問いただした以上は相手が嘘を言っている可能性が限りなく低いとも言えた。それだけあの中年エルフの拷問は対象者の身も心も削る。くだらない虚偽で乗り切ろうと言う気力すら彼の拷問を受けた相手は思えないほどだ。


 「マインドが捕らえた者から抜き取れた情報を大まかに纏めると以下の通りとなります」


 まず【パラダイス】の最大の目的、それは襲撃を仕掛けて来た【ケントゥリオ】のメンバー達の言っていた通り〝剣聖〟であるローズの抹殺が最優先らしい。だが何故ローズの命を【パラダイス】が狙うのか、そこについては捕らえた男は一構成員である為に上から詳しい理由は知らされておらず不明。

 そしてあわよくばこのエルフの国で採れる〝魔力の実〟を本部に持ち帰る事も任務として与えられていた。〝魔力の実〟をどのような目的で欲しているかについても詳しくは上から知らされていなかった。

 

 ラティールに大まかに纏められた今回の騒動の目的を聞き終えたムゲンは頭を捻らせる。


 【パラダイス】と言えば【ディアブロ】壊滅後から台頭して今や裏の世界で3本の指に入るほどの巨大闇ギルド。そのギルドがライト王国の〝剣聖〟を狙う理由がどうにも見えてこない。いや、そもそもこのエルフの国に〝剣聖〟が滞在している情報をどこから掴んだと言うのだ?


 そこまで思考が進むとムゲンの頭の中で最悪の予測が成り立ってしまった。


 待て……つまりだ……【パラダイス】は俺達やローズ達王国騎士がライト王国からこのエルフの国に出向く事を知っていた……いや知らされていたんだ。この情報を持っている人物に……。


 俺達がエルフの国に出向いた事は極秘の任務、つまり知っているのは自国の王であるエスール国王をはじめ王城内の人物のみ……つまり王国騎士の中に内通者が居る? もしくは王城を出入りする家臣の中に? それとも…………。いや待て待て待て……もし仮に俺の推測通り【パラダイス】と裏で繋がっている内通者が王城を自由に出入り出来る人物だとしたらだ、アセリア姫襲撃の一件も〝その人物〟が情報を与えアセリア姫を抹殺しようと手引きしたと言う可能性が高い。

 

 そうなればエルフの国がライト王国に対して裏で画策していると言う可能性はかなり低いだろう。そもそもエルフの国が黒ならば【パラダイス】の傘下ギルドに自国を荒らさせる訳も無い。


 「(ちょっと待て。今……ライト王国の方にも【パラダイス】の魔の手が迫っているんじゃないだろうな?)」


 この時になりムゲンは今更ながらに残して来た最愛の者達、そしてアセリア姫の身にも危機が迫っている可能性が高い事に気付き背筋に冷や汗が流れていた。

 

 「あれ……向こうは今大丈夫なんだよな?」


 完全に無意識から零れたムゲンの言葉に対してソルをはじめ周囲の人物は独りでに喋るムゲンに首を傾げるだけ。彼の不安から漏れ出た問いに明確な答えを返してくれる者はこの場に存在しなかった。


 そして……彼の悪い予想は最悪の形で的中していた……。



 

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