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地下牢の肉塊

更新スピードが遅れてすいません。実は書籍化が決定した事で現在この作品の大まかな終盤までのストーリーを自分の中で軽く纏めております。作品自体はまだまだ続くのですがラストまでの展開を大まかながらも定めるべきだと判断しました。また新作のラブコメ作品の方も少しずつ執筆しているので投稿した際は応援よろしくお願いします。



 マインドの案内によって王城まで連れて来られたムゲン達はラティール王女が門の前で出迎えてくれた。ちなみにイルマに関してはマインドに案内役の引き継ぎをすると一度自警団の方へと戻った。


 やって来たムゲン達の姿を確認したラティールはこちらへ近寄って来ると軽く頭を下げつつ口を開いた。


 「お呼び立てて申し訳ありませんムゲンさん」

  

 「いえそれよりもラティール王女、今回の襲撃者の1人を捕まえたってお聞きしましたが……」


 少々食い気味で本題に入るとラティールの表情に険しさが宿る。

 

 「はい、そちらのマインドの手によってこの国の付近で今回の襲撃者の1人を捕らえる事に成功しました。そしてあらかたの情報も抜き取る事に成功したのですが……」


 そこまで言うと何故かラティールはここまで案内を務めたマインドにどこか非難めいた視線を向けながら歯切れの悪い言い方をする。

 そのリアクションを不可解に思いつつもムゲンが詳しい詳細を更に求めようとした時、背後で黙っていたローズが言葉を割って入らせた。


 「ラティール王女、その捕縛した襲撃者と我々も対話は可能でしょうか? 今回の襲撃者は《剣聖》たる私の命も狙っておりました。狙われた身としては直接対話してその真意を直に確かめたいのです」


 そう言いながらローズは捕縛した闇ギルドの人間との面会を求める。実際のところ彼女は自身が狙われた事が直接面談の理由ではなかった。もしかすれば捕縛したその襲撃者から自分が仕える主のアセリア襲撃の情報が得られると踏んだからだ。 

 面会の許可を求めるローズに対してラティールはどこか歯切れの悪い言葉を返して来た。


 「それは構いませんが……恐らくは無駄だと思います。話し合いすら成立しないかと……」


 「それはどういう……?」


 濁すような発言に眉を潜ませるローズに背後からマインドが声を掛けて来た。


 「捕縛した闇ギルドと会話したいなら王城の地下牢まで案内してあげるよ。構いませんね王女様?」


 「……分かりました。では案内をお願いします。その間にムゲンさん含む他の方々は客間の方へ……」


 マインドの確認に対してラティールはどこか苦々しそうにしつつも地下牢までの案内を許可を出す。

 出来る事ならムゲンとしても捕縛した闇ギルドの人間とは直接面談したかったが、どうにもラティールの煮え切らない様な態度が気になりその場に残る事を選んだ。


 マインドがローズを引き連れその場を離れるとムゲンが思い切って疑問を投げる。


 「あのラティール王女様。思い切ってお聞きしたいのですが捕縛した襲撃者と面会すると何か不味い事態でもあるのでしょうか?」


 あくまで直感であるが捕縛した闇ギルドと面談する事を避けさせようと誘導している節をラティールから感じた。そこで思い切ってハッキリ疑問を投げると彼女はどこか重苦しく口を開いた。


 「やはり違和感は隠し切れませんね……実は……」



 ◇◇◇



 「な……これは……」


 王城内の地下牢へと案内されたローズは目的である捕縛した襲撃者と対面を果たしていた。だが鉄格子の奥に居たその人物を見て思わず言葉が詰まってしまった。


 何故なら鉄の檻を挟んで捕まっている人物は会話すら成立しないほどに〝死に体〟の状態だったからだ。

 

 「ぁ……ぅ………」


 それはもはや〝人間〟と言うよりも〝肉塊〟と呼んだ方が正しいのかもしれない。体中はボロ雑巾同然であり至る所が痛々しく腫れ上がっている。間違いなく体中の至る箇所の骨がへし折られているのだろう。よく見れば片方の手の指が1本もなく強引に引き千切られた形跡があった。顔面は通常のサイズの倍ほどまで膨れ上がっており元の顔を知っている者ですらも同一人物と判別できないだろう。


 「(……ここまでするか? いくら情報を得るためとはいえ……)」


 捕虜から幾分かの情報を引き取る為に多少なりとも暴力を振るう事は決して珍しくはない。事実ローズの所属している王国騎士団でも時としては手荒な手段を選ぶこともある。だとしてもここまで行き過ぎた事はない。

 予想以上の凄惨な状態、会話する余力すらない襲撃者の末路に言葉を失っているとここまで案内を務めたマインドが口を開く。


 「おいおい、コイツから直に聞きたいことがあるんじゃないのか? だんまりと直立しているだけなんて連れ損になるだろう」


 「……見たところ歯も全てへし折れている。それに目も虚ろな状態だ。これではもう会話が成立するかどうかすら疑問なのだが……」


 「あ~……つい熱が入り過ぎたからなぁ。まぁ必要な情報は出来うる限り搾り取っておいたから代わりに俺が話してやろうか?」


 今の言葉から察するに襲撃者の尋問、いや拷問をしたのはこのマインドと言う事なのだろう。

 別にローズからすれば法の外で生きる裏の人間が凄惨な目に遭わされたからと言って胸が痛むわけでもない。だがそれにしてもここまで行き過ぎた行動に負い目すら見せない態度は心地良くもない。それ故に無意識に彼女の口からこんな質問が飛び出していた。


 「いくらなんでも行き過ぎているのではないか? 自国を襲った人間が許せない気持ちは分かるが……」


 「おいおい、偉そうに諭すような物言いをしてくれるな――人間族」


 「ッ!?」


 今までどこか飄々としていたマインドから放たれる雰囲気が冷たいものへと変化した。

 

 次の瞬間ローズの取った行動は完全に無意識だった。突き刺さる殺気から反射的に身の危険を回避しようと本能が咄嗟に鞘から剣を引き抜いていた。その直後、キラリと光り迫りくる刃が鞘から抜いた自身の剣とぶつかり合い地下牢内に火花が散り合った。



書籍化に関してなのですが発売が6月へと延期予定となってしまいました。キャラデザの方は自分の元に送られているのでもう少々販売をお待ちください。

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