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首謀者は自国か同盟国か?


 夜を明けて再びエルフの国に出発を始めるムゲン達一行、しかし当初合計8名居たメンバーは同行していた部下2人が途中抜けて現在は6名と人数を減らしていた。部下の騎士2人が抜けた理由については昨夜の襲撃者達をライト王国へと連行する任をローズに命令されたからだ。

 昨夜の襲撃者達から可能な限り尋問して連中が闇ギルド【ケントゥリオ】の構成員である事を知れた。だがそれ以上の詳しい情報を抜き取る事は不可能だった。一体何故自分達を襲撃したのかをどれだけ問うても返って来るのは『マスターからの命令だった』の一点張り、複数人に尋問したが全員がそう答えた事を考えるとこの連中達は本当に大した情報を与えられていなかったのだろう。とは言え襲撃者達をこれで無罪放免とする訳もなく彼等を王国まで連行して更に詳しい尋問を行う事となった。そもそもエルフの国へと向かう道中での襲撃、明らかに自分達の行動を事前に把握している者が背後に居る事は明白なのだ。

 襲撃者達の身柄を王国まで連行、その役割をローズは同行して来た部下の騎士2人へと委ねると当初の予定通り馬車を進めた。

 

 当然だが馬車の中ではムゲン達があの襲撃者達についてお互いに推測を交えていた。

 

 「それにしても部下二人だけに後始末を任せても良かったのか? いくら拘束しているとはいえ襲撃者の生き残りはそれなりにいただろう。ここから王国まで馬車も無く連行するとなると時間も……」


 「それについては問題ない。この〝魔道具〟で迎えを寄こす様に王宮で警護の任についている他の第一騎士隊には連絡済みだ。王国に戻る前に道中で回収されるはずだ」


 そう言いながらローズは自分の腕に装着されている腕輪を見せる。

 彼女のこの腕輪は〝腕輪型通信水晶〟と呼ばれ腕輪には小さな水晶が埋め込まれているのだが、この水晶は魔石を元に作り上げられた通信用に改良を施された代物だ。この魔道具は特殊な魔法を使用せずとも魔力を籠める事で遠距離との相手との連絡を確立する為に今より1年前に誕生した物だ。

 ちなみにローズがこの魔道具を持っている理由はエルフの国へと向かう際に動向を探る事を目的とされていた。支給されたこの腕輪で定期的にエルフの国から連絡を入れ、怪しげな動きが見られるならば即刻連絡を入れる様にエスール国王から命を受けているのだ。


 「それよりも今は一体誰が私達を襲うように依頼したかの方が重要だ」


 「確かに普通に考えておかしな話だよな。どうしてエルフの国まで向かう道中にピンポイントで襲撃を受けたと思う?」


 「まぁ……私たちが自国を出て他国へと向かう事を知っている輩からの依頼と考えるべきだよな」


 ムゲンのその言葉に対してソルがそう答えながらローズに目をやる。

 

 「なあローズ、今回の私達の遠征について知っている人間はやはり限られているよな?」

 

 「ああ、まず事前にエルフの国には書状は送っている。そして王宮内の人間はほとんどが私達の出国について耳にしている。つまりあの連中を差し向けた人物は……」


 そこまで言うとローズは口をつぐんでしまう。それに代わるかのようにムゲンが小さな声でその先を言葉にした。


 「あの闇ギルド連中はライト王国の王宮内、もしくはエルフの国のどちらかの差し金と言う事になるな……」


 自国の仕業かはたまた同盟国か、そのどちらにしても最悪の展開と言えるだろう。もしかしたら全く別勢力からの犯行と言う線も0とは言えないかもしれない。だが自分達の出国ルートを知っていなければ今回の犯行に繋がらない事を考慮するとその可能性は皆無に等しいと思うべきだろう。


 「あまりこのような事を口にしたくは無いのだがエルフの国からの画策の方が国にとっての被害は少ないだろうな」


 ローズの言葉は彼女自身が言った通り同盟国側が聞けば烈火のごとく怒るだろう。しかしもし自国、それも王宮内が手を引いているとなればエスール国王をはじめ第一王女、そして第二王女の身の安全の確保すら危うくなる。もしかすれば今も王宮内で何者かが暗躍している可能性だって……。


 「……アセリア様」


 無意識にローズの口からは第二王女の名が零れ出ていた。

 彼女にとってアセリア姫を護りたいと思う理由はただ国の王女と言うだけでないのだ。あの少女は自分の進むべき道を示してくれた大恩人でもある。もしもあの少女との〝過去〟がなければ部下に慕われる事も、そして自分の第三騎士団の成長と信頼を築ける事もなかったかもしれない。

 だがどれだけ主君を想っても今の自分には為すべきことがある。その歯痒さに渋面を浮かべているとムゲンが声を掛けてくれた。


 「大丈夫だよ。王宮には俺の頼りになる仲間達が居る。あいつらならアセリア姫の身の安全を約束してくれるさ」


 「ハルもウルフもアルメダも伊達にSランクじゃないからさ、今はこっちの任務に集中しろよ」


 ムゲンに続きソルが肩を叩きながら気を張っているローズを労わる様に言った。

 その言葉にしばし神妙な表情を浮かべていたローズだったが頬を軽く叩いて意識を切り替える。


 そう、王宮内には自分の部下達、そしてムゲンの仲間達だって居る。それにエルフの国が一連の出来事の首謀と言う可能性がある以上はこちらの任務に意識を集中すべきだろう。


 「すまないな二人共もう大丈夫だ」


 「ああ……ん、おい見て見ろ」


 ふとムゲンに言われ二人も馬車の外を見ると巨大な森林の入り口に入ろうとしていた。地図ではここから目的のエルフの国までは馬車ならば1時間もしない内に到着する。


 もう間も無くムゲン達は自国と根深い因縁と闇を持つ亜人の国に踏み込もうとしていた。


 

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