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突然の訪問

今回の話から時代を現代に戻します。過去編の続きについては今後のお話でちゃんと再会する予定です。理由についてなのですが前の話で出て来た少年がハッキリ言ってこの物語で一番の重要人物であり今明かすと今後の物語の面白みが減ると判断したからです。この作品を今後も読み進めていただければいずれあの少年の正体についても判明します。ひとまずは現在のムゲン達の次の戦いをお楽しみください。


 今より2年前、ムゲン達が『修練の塔』で経験した過去話に対してアルメダはすっかり興味心を引かれていた。

 まるで小説の物語を聞いているかのように話に夢中となっている彼女は早くその話の続きを知りたいと促してくる。


 「そ、それで……その子供は一体何者だったのよ?」


 コルトと言う自分と同じ《聖職者》の職を持つ女性の協力で見事に最上階に辿り着き、その頂点で待ち構えていた謎の子供の正体についてアルメダが訊く。

 その質問に答えて続きを語ろうとするムゲンだったが、唐突な形で彼の過去語りは終了となってしまう。


 ――ドンドンドンッ!!!


 「突然の訪問大変申し訳ございません! 【黒の救世主】のムゲン・クロイヤ殿はご在宅でしょうか!!」


 誰かが家のドアを壊さんばかりに何度もノックをしながらムゲンの在宅を確認する声が響いてきたのだ。


 「悪いアルメダ。この話の続きはまた後日と言う事で勘弁してくれ」


 そう言うとムゲンは小走りで玄関まで向かい扉を開き訪問者を招いた。

 扉の向こう側に居た人物は板金鎧を着こんだこのライト王国の騎士だった。


 「王国騎士が俺に一体何の用だ?」


 特段王国騎士との深い繋がりを持たないムゲンが一体冒険者の自分に何の用かと問うとその騎士はこう返して来た。


 「私は第三騎士団に所属している騎士の1人です。我々の纏め役であられるローズ様とムゲン殿は交流がおありでしたね」

 

 騎士の口から出て来た名前を聞きムゲンが納得する。

 確かに騎士団との繋がりは自分にないがローズとは知らぬ中ではない。何しろ2年前には同じ温泉宿で共に食事をして親交を深めたぐらいだ。極まれだが町の警護巡回に際にも顔を合わせては話もする。


 「実は我らが隊長であるローズ様からムゲン殿に言伝を預かっているのです」


 どうしてわざわざ自分の部下を使って要件を伝えに来たのかと言う疑問が頭を一瞬だけ駆け巡った。だが落ち着いて思考してみれば彼女は自分と違い王国の騎士団の団長と言う役職だ。フリーの冒険者稼業の自分と違い色々と仕事が立て込んでいて部下を寄こしたのだろうと推測は立てられる。

 

 だがこの後の騎士の口から放たれた内容は流石に予測すらしていないものだった。


 「実はムゲン殿率いる【黒の救世主】の皆様のお力添えをお願いしたいそうなのです。全てはアセリア第二王女様の命を護るために」


 そのセリフに反射的に眉を一瞬動かし厳しい表情になるムゲン。

 後ろで話を一緒に聴いていた他の4人も同じだ。まさかこの国の第二王女様が出て来るとは思わなかった。ましてやそんな人物の命に関わる案件ならば猶の事、場の空気が一気に張り詰める中さらに騎士は続ける。


 「実は今より二日前の事です。アセリア様がとある刺客達からその命を狙われたのです」


 それはアセリア姫が〝とある国〟との会談の為に王国の外へと出ていた時の事だった。済ますべき要件を片付け王城へと戻る道中で彼女を襲撃する者達が居たのだ。当然だが護衛の《剣聖》ローズを含む騎士達によりその襲撃は無事に阻止できた。だが今回の襲撃に関しては不可解な点がいくつかあった。

 まず1つ、襲撃して来た相手はただの盗賊連中とは違った。明らかに戦闘訓練を受けたと思われる集団でローズが護衛についていなければ最悪アセリア姫の命が本当に危険だったのだ。しかもその連中は全員が襲撃に失敗して逃げきれないと悟ると全員がその場で自害したのだ。一切の情報を相手に与えまいとそこまでの覚悟を即座に実行に移せる連中、間違いなく裏に何者かが手を引いているのは一目瞭然だ。

 そしてもう1つ、今回の〝とある国〟との所用でアセリア姫が直接赴いたのだが、実は彼女が直接訪れる情報は伏せられていた。この事実は相手側の国にはあえて漏らさず特使を遣わせると話していた。万一にもアセリア姫が襲撃される可能性を下げる為の王国の工作だった。

 つまり彼女が国の外に出る事実は外部には口外されてはいなかった。そんな彼女を帰路で襲って来たと言う事は彼女が自国の外に出る事を知っていた〝王城内〟の何者かと言う可能性が考慮される事になる。


 「それってまさか内部に姫様の命を狙う輩が居るってことなのか?」


 話を聞いていたソルが険しい表情でそう問いを投げる。それに対して騎士の青年は表情を歪ませながら頷いた。

 もしかしたら王族の盾となる騎士の中に犯人が居るかもしれないのだ。同じ騎士として情けなさも感じているのも無理はない。


 「本来であれば姫様や国王様は我ら騎士がその命を懸けてお守りする事が務めです。しかし……王城に居た者達の誰もが疑わしいとなれば我々騎士も例外ではありません」


 そこまで言うとその青年はその場で土下座を初め必死に懇願をしてくる。


 「お願いしますムゲン殿! そして【黒の救世主】の皆様! どうか我々にあなた方のお力をお貸しください! ローズ様もあなた方なら信用に足ると言っておりました! どうか…どうか……!!」


 国を護る騎士は多くの人間からすれば憧れの目を向けられる存在だ。そんな彼が恥を晒して土下座をする姿はとても痛々しかった。だがそれだけこの青年が隊長のローズやアセリア姫を尊敬している裏返しでもある。

 それにムゲン達としてもアセリア姫とは思い出だってある。彼女の身が危険だと言うのであれば黙ってなど居られなかった。


 「分かった。今すぐに案内を頼むよ」


 こうしてムゲン達は急遽これまでのギルドで受けて来た依頼を遥かに超える大きく、そして陰謀渦巻く戦いにへと誘われて行く事となる。



もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。

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