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害虫駆除の開始だ


 アジト前で見張りをしていた二人の男は自分の身に何が起きたのかすら自覚できていなかった。何の前触れもなく自分達の腹部がまるで爆発したかのような衝撃が走り、その勢いに押されアジトの外壁に叩きつけられていた。

 

 「がっ……」


 「な……」


 壁にめり込みながら声を出そうとするも出てくるのは血の塊だけ、体は痺れ満足に呼吸すら出来ない。

 アジトの外壁の一部となっている二人の目の前にはいつの間にか黒髪の青年が立っていた。


 「お前達は人の道から外れ過ぎた。そのまま死んで行け」


 一切の温度を感じさせないセリフをもう間も無く呼吸の止まる見張りに告げると同時、その二人は最後まで自分の身に何が起きたのか理解できぬまま唖然とした顔で死んで行った。

 この見張り達の身に何が起きたのか種を明かせば単純だ。目にも止まらぬ速さでムゲンがこの二人の腹部に掌底を叩き込んだだけの事。ただ接近して手の平を叩き入れるまでの一連の動作が神速すぎ捉えられなかったのだ。


 だが今の掌底の振動でアジト入り口の近くに控えて居た敵が駆けつけて来た。


 「何だ敵襲か!?」


 「ふざけやがってよぉ!! ぶち殺せぇ!!」


 武器を構えた大勢の兵隊達を前にしてもムゲンは取り立てて慌てる事はない。

 何故なら背後で控えて居る優秀な《弓使い》が既に弓を引き絞り狙いを定めていたからだ。


 ムゲン目掛けて襲い掛かる兵隊の数は全部で3人いた。その敵がムゲンに武器を振り下ろすよりも早く《弓使い》であるウルフは弓を射る。

 まるで閃光のような3本の矢が見事に敵兵全てを貫く。凄まじい速射であるにも関わらず全ての矢はピンポイントで3人の脳天を貫いていた。

 

 「意識を1人に集中し過ぎね。後方の警戒を怠れば私のように遠距離から穿たれることになる」


 声も上げずにあの世に行った敵にそう言いながらウルフは髪をかき上げる。

 

 「相変わらず見事な狙撃力だ。こりゃ頼もしいな」


 「敵のアジト前で調子に乗っては駄目ですよソル。このアジトの規模から敵はまだまだ出て来ます」


 仲間の見事な腕前に《魔法剣士》のソルが口笛を吹き、その気の抜けた態度に《魔法使い》のハルが注意を入れる。

 アジト入り口で5人の敵兵を討ち取って以降は特に後続が出て来る気配はない。大きく騒がれる前にムゲンとウルフが入り口付近で見張りをしている兵を潰したからだ。


 「それでどうするのムゲン? まだ内部の連中に知られていないのなら裏口でも探してみる?」


 仲間の《聖職者》であるアルメダの言葉に対してムゲンは首を振った。


 「いや、下手に動いて墓穴を掘りたくはない。ここまで来たら一気に正面突破で行くぞ。ただし派手に機先を制する」


 そう言うとムゲンはチラリと隣のハルに目をやった。そのアイコンタクトだけで彼の言いたい事を理解したハルは魔杖の先端部をアジトへと突きつける。


 「<ホーリーレギオン>発動!!」


 ハルの怒声と共に魔杖の先端には巨大な魔法陣が展開される。そして煌びやかな光線が幾重にもアジト目掛けて通過していく。

 ぐんぐんと伸びて行った光の蛇はアジト内を徘徊していた敵を数人焼き払って入り口付近を完全に破壊してしまう。


 「な、何だぁ!?」


 「敵襲だぁぁぁぁぁ!!」


 完全に不意を突かれた敵達は慌てながらもアジト内に居る仲間達に襲撃を知らせる。

 自分達に攻撃を仕掛けて来た敵を討ち取ろうと兵達は一気に攻撃の出所へと我先にと向かって行く。


 「おいおい、こんだけ大勢で一か所に詰め寄ってどうするんだよ」


 魔法の光線で巻き上げられた粉塵の向こう側から女性の呆れ声が聴こえた直後、煙の中から《魔法剣士》のソルが飛び出した。その勢いのまま神速の居合で自分の目の前の敵を一気に3人も上下に分断してしまう。


 「こ、この野郎がぁ!!」


 目の前で仲間が斬り捨てられ激高しながら武器を振るう敵達だがその攻撃をソルは全て紙一重で躱し、更には合間を縫って次々と敵を両断していく。


 「くそッ、お前らどいてろ!!」


 接近戦では勝ち目がないと踏んだ敵の何人かは魔法や弓などで迎撃しようと構える。

 だがソルは瞬時にバックステップを踏んで後方へと跳ぶ。だが不可解なのは握っていた剣を彼女は鞘に納めたのだ。だがそれは戦意を失った訳ではなく、両手に魔力を集約させて二振りの剣を作り上げる為だった。


 敵達が瞬きをした次の瞬間だった。ソルの右手は燃え上がり、左手は冷気を放出する。その勢いはどんどんと高まり、やがては形を成し、最終的にはそれぞれ炎と氷の剣を形成したのだ。


 「形なき剣の創造、これが私の魔法<フォームレスソード>……」


 「ぐっ、コケ脅しだ! 剣である以上は近距離専門には違いない! 一斉に遠距離からぶちこめぇぇぇ!!」


 敵の1人の怒号を合図に遠距離から魔法や矢が飛んできた。だがその攻撃を眼前にしてもソルは動じない。右手の炎の剣を魔力で強化した剛腕で振りかぶると巨大な炎の斬撃が飛び、敵の攻撃とぶつかり合って相殺して見せた。


 「そんな!? あれだけの攻撃をたったひと振りで相殺するだなんて!?」


 「剣の使い手には遠距離用の攻撃が無いとでも思っているならその常識を改めるんだな……あの世でな……」


 一斉攻撃を防がれて呆然としている間にもうソルは次の攻撃動作に移行していた。左腕を大きく振るうと同時、その手に握られている氷の剣からは凄まじい冷風が敵へと吹き荒れ相手の肉体を一瞬の間に氷漬けにしてしまう。


 「じゃあな、あの世で自分の行いを悔いろ」


 体が氷漬けにされた敵は全員為すすべなくソルの持つドラゴンキラーの剣で一瞬の内に切り裂かれ、氷漬けの肉片が床に散らばり粉砕したのだった。



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