【黒の救世主】再始動
ついに主人公達が活躍するぞ~。
多くの闇ギルドを傘下に置き手綱を握っていた巨大闇ギルド【ディアブロ】の崩壊後、世界各地では多くの無法者たちが自分達の違法ギルドを立ち上げて行った。自分こそが頂点に立って見せようと間違った方向に奮起する者達の行いは多くの罪のない人間を苦しま、嘆きに落としていった。そして中には自分も奪う側に回ろうと表側の世界で名を馳せていた猛者までもが闇の世界に自ら沈み堕ちて行く。
「ボス、これが今週分の成果です」
1人の男が下卑た笑みと共に自分達の闇ギルドのボスに片膝をついて嬉々とした顔で報告をする。
その男の前には大きな袋が置かれており、今にもはち切れんばかりの銀貨や銅貨、更には金貨まで詰め込まれていた。
「よくやったぞ、褒美は弾んでやるから期待していろ」
献上された財を恍惚な顔で眺めながらその男は下卑た笑みを浮かべる。
この男の名はデチオと言い元々はエビル王国と呼ばれる国の冒険者ギルドでSランク冒険者だった人物だ。高い戦闘力を持ちかつて所属していたギルドでも多大な貢献をしていた。
だがそれと同時にこの男には成り上がってやろうと言う大きな野心を腹の中に飼っていた。
「それにしてもこれだけの金を前にするとつくづく思うぜ。どうして俺様はもっと早く自分でギルドを立ち上げなかったんだろうかってな」
最高ランクの冒険者として人並み以上に稼いでいたデチオであるが彼は人一倍貪欲な人間だった。冒険者稼業に身を置いたのも稼ぎが大きい職種だと判断した結果だった。その判断は正しかったとも言えただろう。何しろ彼には戦いの才能が平均を遥かに上回るほど突出しておりSランクにまで駆け上げれたのだから。
だがある1つの仕事をこなして彼はある真実に気が付いてしまった。それは急増して来た闇ギルド壊滅の依頼だ。指定された闇ギルドに潜入し見事にパーティーメンバーと共に組織を壊滅させる事ができた彼はそこで見たのだ……唸るほどの金貨の山を。
数ばかりで自分の足元にも満たない弱者でも非合法な仕事ならばSランクの自分よりも何倍も稼いでしまえる。その現実を知った時に最初に抱いたのは怒りだった。
どうして真面目に依頼をこなして来た俺様よりもコイツ等雑魚どもの方が金持ってんだよ?
残念ながらSランクと言えども必ずしも人格者がその称号を手にするわけではない。中にはこの男のように屈折した人間が成り上がってしまうケースもある。
そこからの彼は信じがたい提案を自分のメンバー達に持ち掛けた。何とこの男は自分達で闇ギルドを作ろうなどと世迷言を口にしたのだ。当然だが仲間達はそんな話には乗らず彼に馬鹿な考えは捨てろと説得した。
そんな真っ当な仲間達に対してのデチオの返事は血に染まる悪逆な行為だった。
自分を否定し、それどころか説教じみた説得をしてくる仲間達を彼は殺害してしまったのだ。この1件で彼はお尋ね者となりエビル王国には彼の手配書まで張り出され国を出る事を余儀なくされた。
だが彼はそんな自分の境遇に絶望などしなかった。むしろこれで退路は無くなったと腹をくくり宣言通り自分の手で闇ギルドを立ち上げ有言実行を果たしたのだ。
「世の中で金を手にするのは〝強いヤツ〟なんかじゃねぇ。金を得るのはいつだって〝賢いヤツ〟なんだよ」
大金の為に法に触れる仕事をいくつも請け負い彼のギルドは今やかなりの規模まで膨れ上がっていた。腐ったデチオの考えに共感し人の心の欠落している連中も集まって来た。このギルドによってもう多くの罪なき人間が苦しみ、中には村1つ滅ぼされてしまった事もある。
だがデチオの栄光は今日限りで終わりを迎える。何故ならその行いのケジメを最強のパーティーが取りに来たのだから。
◇◇◇
人間の皮を被った悪魔デチオの根城にゆっくりと歩を進める5人の人物が居た。
1人は黒髪でまるで猛獣の様に鋭い瞳、そして空気が歪むほどの圧力を纏う《拳闘士》の青年。
1人は水色のショートヘアーにマントを羽織っており、その下からは露出の高そうなビキニアーマーを装着している《魔法剣士》の女性。
1人は桜色の可憐そうな見た目だが、その手には大きな魔杖を握っている一流の《魔法使い》の少女。
1人は頭部の犬耳からこの中で唯一の亜人種であり、背中には巨大な黒塗りの弓を背負った《弓使い》の狼少女。
1人は白を基調としている改修した修道服を着ており金色の髪をしたまるで人形のような《聖職者》の女性。
目的のアジトの近距離まで近づくと先頭を歩いていた青年が歩を止めてゆっくりと振り返り自分の仲間達へと準備は整っているか最終確認を取る。
「正面から一気に突入する。みんな……用意は良いな?」
「「「「当然」」」」
「よし、いくぞ……【黒の救世主】出陣だ!!」
その言葉と共にこのパーティーのリーダーであるムゲン・クロイヤは一気に敵アジトへと駆け出して行った。
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