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無知蒙昧は竜を怒らせる

今回からはファル・ブレーンの物語が始動します! このキャラは一部ではあまり動かせなかったので二部からは目立ってもらおうと思います。

 

 ライト王国内には複数の冒険者ギルドが点在しており多くの冒険者達が日々仕事を引き受けて生活している。しかしその中でも群を抜いて〝最強〟と言われ尊敬の念を持たれる冒険者パーティーが複数存在している。

 そして『ライト王国最強の冒険者ギルド』と言うのであれば皆は口を揃えて【ファーミリ】の名を出すだろう。何故ならこのギルドにはこの町の者達で知らない者が居ないほどに優秀な3つのパーティーが在籍しているからだ。


 1つ目はムゲン・クロイヤの率いる【黒の救世主】と呼ばれる『5人組』のパーティー。


 2つ目は【戦場の乙女】と呼ばれる〝女性のみ〟で構成されている『3人組』のパーティー。


 そして最後の3つ目のパーティーは【蒼の閃光】と呼ばれる男女『2人組』のパーティー。


 この3組のパーティーはSランクの中でも群を抜いた実力を有しており数多くの高難易度の依頼を見事に果たし多くの実績を残して来た。その結果【ファーミリ】のギルドをライト王国最強と呼ばれるまでに貢献して来た事になる。

 しかしこのパーティーの中で【蒼の閃光】については他の2組とは異なり【ファーミリ】のギルド内では他の冒険者達からは羨望以上に畏怖されていた。


 その理由は【蒼の閃光】の異名を持つ最強の《剣士》であるファル・ブレーンの冷酷性にあった。

 実力と言う点においてはこのファル・ブレーンは信頼に置けると言えるだろう。しかし人間性については少々不安点を彼は抱えていると言えるだろう。

 彼には色々と黒い噂が流れているのだ。自分の所属するギルドの評価を護る為なら裏で同じギルドの冒険者を〝処理〟してギルドからその名を消しているなどと囁かれている。とは言え明確な証拠がある訳でもなければ目撃者も存在しない。しかし彼を直接その目で拝見した者達は本能的に直感するのだ。この男は確実に〝ヤバい〟人種であると。

 

 これまでずっとソロの冒険者として活動して瞬く間にSランクまで一気に駆け上がったファル・ブレーンなのだがここ最近になって彼について衝撃の事実がギルド内に駆け巡った。それはあの孤高の男がチームを結成したと言うものだった………。



 ◇◇◇



 【ファーミリ】のギルドの酒場の席で1人の女性が複数の男達に絡まれていた。


 「だーかーらー少し一緒に飲みに付き合ってくれるだけでいいんだって」


 「……困ります」


 酔っている青年が女性に気安く声を掛けて酒に付き合わせようとする。どこの酒場でもよく見慣れる光景だろう。

 絡んでいるこの連中達は最近このギルドに移籍したばかりのパーティー。しかしメンバー達それぞれの才能は大きく次に生まれるAランク候補と囁かれているのだ。移籍前の元居たギルド内でも他の冒険者から一目置かれていた事もあり彼等は自分達の才能を自負しており最強と呼ばれるこのギルドに活動場所を移したのだ。それ故にメンバー全員がとても気の強い性格をしていた。

 一方で強引に酒に付き合わされそうになっている女性は少し気の弱そうなタイプだ。だが引っ込み思案そうな性格とは裏腹に外見はとても破壊力のある豊満なスタイルをしており、髪はミディアムの綺麗な紫で年齢的には二十代前半と言った具合だろう。大人の妖艶さも兼ね備えている独特な雰囲気は男を無意識に引き付ける魅力性も感じられる。

 

 女性は何度も誘いを断るのだが男達は酔いが回っているのか少し強引になっていく。


 「そう固いこと言わずに少しぐらい付き合ってくれよ~」


 すっかり出来上がっている青年の1人が女性の肩に手を伸ばす。


 「や、やめてください!」


 反射的に自分に伸びて来る手を乱暴に払いのける女性。

 そのまるで無視でも追い払うかのような仕草に腹を立てた男達がチンピラのような難癖を付け始める。


 「いってぇ。そんな強く叩くことないじゃん」


 「おいおい大丈夫か? あーあ、見ろよお姉さん。コイツの手、赤くなってんぜ。どーすんの?」


 「ご、ごめんなさい」

 

 「悪いと思ってるなら少しぐらい俺達に付き合ってくれよ~」


 罪悪感を芽生えさせた事を確認するとここぞとばかりに言い寄る男達。

 その光景を遠巻きに見ていた他の冒険者達が小声でこんなやり取りをしていた。


 「あいつ等…誰に気安く声を掛けているのか分かっているのか?」


 「確か最近ウチのギルドに移籍したパーティーだよあれ。あの様子だと知らねーみたいだな。自分達が口説いている相手がこのギルドの最も危険な男が唯一心を許している女だと言う事に……」

 

 周りの連中がそんな会話をしているなど気付かず男の1人が強引にその女性を自分の隣の席に座らせようと腰に手を伸ばした。そしてその醜い欲望を纏わせた指先が女性の腰に触れた瞬間――ギルド内の温度が一気に下がった。

 周りでコソコソと話していた連中はまるで蜘蛛の子を散らすかのように左右の壁付近まで移動し、そして今まで酔いの勢いで調子づいていた男達も表情が一転する。


 「(な…何だよコレ……!?)」


 これまで上機嫌だった男達の顔面からは滝のような汗が流れ落ちる。突如として酒場から凶悪なモンスターの巣の中に放り込まれたような感覚だ。いや、モンスターの巣ならまだマシと言えるだろう。彼らが踏み込んだのは〝竜のテリトリー〟なのだから。


 ギルドの中央をゆっくりと歩きながら蒼き竜は脂汗を浮かべる男達の席までやって来た。


 「ソイツ、俺の仲間だ。一体、何の用?」


 ゆっくりと自分達の席に歩み寄って来た青年はぶつ切りでそう問いを投げる。

 その問いに対して男達は返事が出来ないでいた。決して無視をしている訳ではないのだ。だが恐怖で声がまともに出せないでいたのだ。


 ゆっくりと首を声のする方向へと傾けるとそこに居たのは蒼い長髪で瞳に光を灯していないSランク最強の一角、ファル・ブレーンだった。



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