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血の粛清


 「なるほどな。つまりアラデッドの馬鹿は始末できたわけか」


 「そういうことなのね。ちゃんと仕事はこなしたのね」


 闇ギルド【ディアブロ】のアジトで黒ローブ姿の仮面を付けた少女が目の前の人物に対して仕事完了の報告をしていた。

 報告を受けた男は見たところ50代くらいの中年男性。だがその風貌は頼りない中年などとは程遠い容姿をしていた。顔にはいくつもの傷跡が刻まれている。それに体格も年齢に似合わずかなりの筋肉質だ。その丸太のような太い腕の筋肉の上からは血管がピクピクと浮き出ている。

 

 彼こそはこの【ディアブロ】のギルドマスターである人物、オーガ・ドモスであった。


 「それにしてもお前が接触したその黒髪のガキってのが気に入らねぇな。お前がそのムゲンってガキから逃げたって事は俺達のギルドが正規ギルドに背を向けたとも取れることだ」


 「そ、それは申し訳ないことをしたのね。で、でも命令通りに仕事はちゃんとこなしたのね!」


 オーガの低い声にローブ女は少しどもってしまう。もしかしたら何か大きなペナルティでも与えられるのではないかと内心でビクビクしているとオーガは豪快に笑い飛ばす。


 「がははははッ! そんな小鹿みてぇに震えるな。恥さらしの『アラデッドを殺せ』と言う俺の当初の命令をちゃんと果たしているんだ。その小僧に後れを取った事を責める気はねぇ」


 そう言いながらオーガはゲラゲラと笑いながら特にお咎めなしだと伝えると仮面越しにローブ女がほっと安堵したのを感じた。


 だがその背後から一人の男がローブ女に野次を飛ばした。


 「おいおい甘いんじゃないかマスター。正規ギルドの甘ちゃんに半べそかいて逃げたんだぜ。少しはお灸をすえた方がいいんじゃないか?」


 「半べそなんてかいてないのね…」


 背後からいやらしい笑みを顔に張り付けながら現れたのはこのギルドの一員である《黒魔術師》のアモンと言う名の男であった。死んだアラデッドと同様に死人を操る力を持っており彼とは一時期チームを組んで行動をしていた事もあった。とは言え彼にはアラデッドと仲間意識なんてない。むしろ彼が同じギルドの人間に殺されたと知って腹を抱えて爆笑したくらいだ。


 「よおアモン、仕事の方はどうだった?」


 「ばっちりだぜマスター。前々から俺たちを嗅ぎまわっていた正規ギルドの始末の件は完全に処理しておいたぜ。あのギルドに所属していた冒険者達も気の毒になぁ。中には『助けてください~』なんて泣きながら懇願する奴らもいたぜ。もちろん全員殺したけど綺麗な女に関しては最後に犯して良い思いさせてから殺してやったぜ」


 「そうか。それはご苦労」


 下品に笑い声を響かせるアモンへとゆっくりオーガは歩み寄る。

 

 「ん、なんだよマスター?」


 目の前まで距離を詰められて少し怪訝そうな顔を浮かべるアモン。

 そんな彼の肩にオーガは優しくポンと手を置きながらこう言った。


 「これでお前の役目も終わりだな。ご苦労さんだ」


 そう言うとなんとオーガはその強靭な握力でアモンの肩を掴むとそのまま根本から彼の腕を引き千切ったのだ。


 次の瞬間に大量の鮮血が雨の様にオーガの体へと降り注いだ。


 「あぎがぁああぁぁぁぁぁぁ!?」


 腕を千切り取られたアモンはその場で蹲りながらのた打ち回る。

 

 「ど、どういうつもりだよマスタぁァぁぁァ!?」


 いきなりの仕打ちにアモンは血走った眼を向けながら仁王立ちしているオーガを睨む。それに対してオーガは呆れた様に笑い捨てる。

 

 「どういうつもり? はん、自分が何故そんな目にあっているのか本当に分からないのか?」

 

 「わ、分かるわけないだろうが。お、俺はこのギルドに対して何も不利益な事はしてねぇだろ。それがどうして……」


 「ギルドの金を横領しておいて白々しいのね」


 まるで氷の様に冷え切った言葉を投げかけたのはローブの女。

 仮面を付けているのでその表情は伺えないが声のトーンから汚いものを見るかのような目で見ているのだろう。

 彼女が『横領』と言った途端に分かりやすくアモンの顔は青色に染まっていった。


 「ど、どうしてそのことを?」


 「私の職業は《アサシン》なのね。帳簿の記録とお金の動きに少し違和感を感じたマスターがこのギルドの全員を私の隠密性を利用して監視するように陰で命令していたのね。それでお前がギルドの金に手を付けて懐に入れている事実を突き止めたのね」


 「俺のギルドも舐められたもんだな。アモン、てめぇ随分とちょろまかしてきたみたいだな。自分の欲望を満たすためにギルドの金に手を付けたんだ。落とし前はきっちり付けろや」


 そう言うとオーガは蹲っている男の片脚に自らの足を乗せるとそのまま体重をかけて踏み抜いてしまう。

 今度は欠損した脚の断面から鮮血が撒き散らされる。


 自分の裏切りがバレてしまった時の彼の顔色は青かったが今は血の出すぎでもう真っ白だ。


 「た…助けて……」


 もう血が足りず大声も出せない彼は掠れた声で命乞いする。だがそんな彼の脳天にローブ女がナイフを突き立てて彼の息の根を完全に停止させる。


 「ふん、ざまあないのね」


 そう言いながらナイフを引き抜いて付着した血をふき取る。

 

 「さて、これでウチのギルドの膿は絞り出せたな。お前の《アサシン》としての力のお陰だ。ほれ、これは内部調査の報酬だ」


 オーガは懐から小袋を取り出すとソレをローブ女へと投げ渡す。

 キャッチした袋を開けてみるとその中には金貨が30以上は入っていた。


 「こんなにいいのマスター?」


 「俺は仕事をこなした者には見返りはちゃんと出してやる。そして裏切りや不利益をもたらす愚図には制裁だ」


 そう言いながらオーガは既に息絶えたアモンの頭部を完全に踏み砕く。

 自らの体に返り血を大量に付着させた状態で彼は豪華な装飾の施されている椅子に腰を下ろすとこう告げた。


 「そのムゲンってガキについてはいずれ礼をするとするか。それまではせいぜい遊ばせてやる」


 闇ギルドマスターのオーガはそう言うと声高らかに笑い声を上げるのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 理不尽な粛清とかがなくて信賞必罰がしっかりしてるのは思った以上にちゃんとした組織なのでは?
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