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醜態の後に帰還、そして再会

いよいよ裏切り者達のざまぁ展開が始まりそうです……。


 盗賊団の壊滅の依頼を終えた【淡紅の一閃】は自分達のギルドへと仕事終了の報告の為に町に戻って来ていた。だが帰路についている道中では3人の間では依頼を終えて達成感のようなものなど存在せず、それどころかその表情は暗く沈んでいた。いや、正確に言えば今回の盗賊団壊滅の依頼は彼等が達成した訳ではないのだ。


 「くそ…お前達があんな盗賊共に後れを取ったせいで……」


 一番先頭を歩いているボーグは舌打ち交じりに振り返りながらトボトボと歩く二人の仲間を睨む。

 自分達へと向けられた嫌悪の籠った瞳に対してミレイとザクロはバツの悪そうな顔で目を逸らす。その仕草がまたボーグの苛立ちを募らせた。


 荷馬車を襲って来た盗賊の一団をニューが実質単独で壊滅したその後、生け捕りにした盗賊の1人を尋問する事によって連中のアジトを突き止める事はできた。所詮は仲間意識の薄い盗人と言う事もあり少しニューが圧を掛けるだけであっさりと仲間を売り渡したのだ。


 敵のアジトの場所を知ったニューはボーグへとこう告げたのだ。


 『お前達はもうこのまま町に戻ってくれていいよ。はいはいご苦労様』


 完全に自分1人だけでアジトに乗り込み片を付けようとしているニューに対してボーグは当然反論した。


 『ちょっと待ってくれよ! 俺達だって盗賊団の壊滅目的で仕事を引き受けたんだ。一緒にアジトまで同行させてくれ!!』


 必死の形相でボーグは同行させて欲しいと訴えた。先程の敵前逃亡と言う醜態を晒し、その上に彼に言わた通り何もせずにすごすごと町に戻ればいよいよこの【淡紅の一閃】の評価は下がる事となりギルド内、ひいてはファラストの街全体からの印象も悪くなるだろう。だが共にアジトまで乗り込み自身の活躍を彼に見せつければAランクパーティーとしての評価を維持できると考えたのだ。

 しかしそんな彼の思惑をニューは鼻で笑い飛ばした。


 『大方名誉挽回を狙っての嘆願なんだろうけど無駄だって。仮に君たちが一緒に乗り込んでもむしろ僕の足を引っ張るだけで終わるに決まってるじゃないか』


 『そ、そんな事は無い! さっきは少し慢心していただけなんだ! 今度は一切油断せず残りの盗賊共をこの手で根絶やしに……』


 最後まで言い切る前にニューの斬撃がボーグの顔面ギリギリで通過する。鼻先を刃がかすめ、そこから赤い雫が滴った。

 

 『寝言は寝て言うから許されるんだよ。少し慢心していただけ? ろくに抵抗もできず逃げ出しておいてよくアジトまで同行を許してくれだなんて頼めたね? この期に及んで自分の力量すらも測れない木偶がこれ以上のぼせるなよ。それにお仲間に至っては未だに呑気に眠りこけている始末じゃないか』


 そう言うとニューはゆっくりと握っている剣の切っ先をボーグの眼球手前まで持っていく。

 切っ先を突きつけるニューは口元は笑みを浮かべているがその瞳には一切の光が宿ってはおらず狂気すら感じこう語っていた。


 ――『これ以上自分の仕事を増やすなら目玉の1つでも潰すぞ』と……。


 Aランクなどと言っても彼らは所詮ラキルのスキルの恩恵で〝運よく〟成り上がって来た冒険者達だ。今まで幸運を味方に何の苦労もなく今の地位まで登って来た彼等は他のAランクパーティーとは異なり命の危機に瀕した経験も無い。当然だがそんな甘ったるい世界しか歩いてこなかったボーグに何度も修羅場を潜り抜けて来た《剣聖》の圧力を前に言い返せるわけも無かった。


 こうして【淡紅の一閃】は《剣聖》の判断の元、アジトへの同行は拒否された挙句今回の失態を後日ギルドに報告される事となったのだ。


 ファラストの街へと戻る道中ではボーグは二人の仲間に対して愚痴を言い続けていた。


 「攻撃役のテメェ等がヘマをしたせいでそのしわ寄せが全部俺に回って来たんだぞ。たくっ、人が苦労して盗賊達を追い返している間テメェ等は呑気に気絶してやがってよぉ……」


 「ご、ごめんなさいボーグ」


 「あなたには…迷惑を掛けてしまったわね……」


 「はんっ、全くだ。お前等のせいで《剣聖》からも追い返されてしまったんだからよぉ」


 ずっと気を失っていた二人はボーグの口から出て来る虚偽の言葉を素直に信じていた。


 どうやら彼の話では自分達が盗賊に後れを取り気絶している間、《剣聖》と二人で襲い来る盗賊達を撃

退していたらしい。しかし醜態を晒した自分たち二人を足手纏いと《剣聖》は判断してアジト壊滅までの同伴は許してもらえなかったそうだ。

 などと彼は二人が気を失って何も知らない事を良いことに事実を都合よく捻じ曲げているが実際は〝3人〟全員が足手纏いと判断された上での同伴拒否されたのだが。


 大失態を晒した後にファラストの街に戻った3人は自分達のギルドに戻る道すがら何やら周囲から視線を感じ始める。


 おいおい何だよ? 何だがギルドに近づくにつれて視線を感じる気が……。


 ボーグだけでなくミレイとザクロの二人も自分達に向けられる視線に気付いているのか居心地の悪そうな表情を浮かべている。

 自分達に向けられる視線、心なしかどこか〝嫌悪感〟が含まれている人の目に戸惑いながらも自分達のギルド【リターン】へと到着した。


 だがギルドの扉を開き中に入ると同時、3人の瞳には予想外の人物の姿が映り込んだ。


 「な……何でお前が……」


 声を震わせながら思わずボーグは少し離れた自分の正面に立っている人物を指差した。


 そこに居たのはあの『常闇のダンジョン』で亡き者にしたはずのかつての仲間、ラキル・ハギネスが憎悪の籠った眼で自分達を睨みつけていたのだ。



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