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突然の裏切り

一応話しておこうと思います。いきなり新キャラ視点で物語が進んでこいつ誰?ってなっていると思いますがもう少しで第一部キャラが本格的絡んできます。この章のタイトルからして誰が出てくるのかは予想がついているとは思いますが……。


 万全な準備を整えて目的のダンジョンへの潜入を開始したチーム【淡紅の一閃】。

 やはり話に聴いていた通りダンジョン内は漆黒に包まれている。他のダンジョンと違い視界が悪く手に持っているランタンやザクロの照明魔法が無ければたちまち前後も分からなくなるだろう。

 

 「やっぱり視界不良で進みにくいな。他の皆も大丈夫?」


 一番先頭を歩いているラキルが背後から付いてきている仲間達に話しかけるが返事が返ってこない。


 「みんな……?」


 誰も返事をしない事に不審に思い振り返ると3人は何やら小声でやり取りをしていたみたいだった。何を話しているかその内容は聞き取れなかったが自分が振り返って見ている事に気が付くと慌て出し始める。


 「ん、別に何でもないよ。少し視界が悪いねって話していただけ」


 それって今僕が言っていたじゃん……。


 どうにもこのダンジョンに入ってから仲間達の様子がどこかおかしい。最初はただ全員が危険なダンジョン地帯と言う事で警戒網を張り巡らせているだけかと思っていたがどうにも違うらしい。


 仲間達の様子に奇妙な違和感を覚えつつあったラキルだがその思考は中断されることになる。


 「ッ、早速モンスターの出現みたいだ! みんな構えて!!」


 前方から聴こえる獣特有の呼吸音を敏感に察知してラキルが腰の剣を抜く。それに合わせて他の仲間達もそれぞれの武器を構える。


 「グアアアアアアッ!!」


 ランタンの光に飛び込んで映し出されたのは魔犬タイプのモンスター。侵入者である自分達の肉を喰らおうと飛び掛かって来る。


 「こんのぉ!」


 だがここまで数多くのモンスターと対峙して来たラキルにこのレベルのモンスターなど相手にならない。いつも通り彼の振るった剣は『一撃』で相手の命脈を断つ。

 他のメンバーも同様に襲い来るモンスターを『一撃』で仕留めて見せる。


 「よし、とりあえず一旦は倒し終わったかな……ん?」


 一段落して呼吸を整えていたラキルであるが何やら背後からえもいえぬ違和感を感じ振り返った。


 すると仲間であるミレイが自分の背中目掛けて剣を振り下ろしていたのだ。


 「うわっ!?」


 背後から感じた違和感により一瞬だけ早く反応できたラキルは前方に跳ぶことで紙一重で斬撃を回避する。体勢の悪い状態で前に跳んだせいでダンジョンの汚れた石造りの床に顔面からダイブしてしまう。


 「なっ、何をするんだミレイ!?」


 「ご、ごめん。ワザとじゃないの。その…ラキルの足元に倒れていた魔犬が動いた気がしたから……ただ視界が悪くて……」


 謝罪しながら彼女の向ける視線の先には確かに魔犬の1匹が転がっていた。

 いきなり背中から斬りかかる幼馴染に思わず怒鳴りつけたが訳を問えば彼女はどうやら倒した魔犬の1匹がまだ生きていたと思いそっちに剣を振るったらしい。ただ視界が悪くて不運にも狙いが狂い自分に剣を振ってしまったそうだ。


 「もう気を付けてね。流石に振りかぶった剣で斬られたら軽い傷じゃ済まないからさ」


 なんとラキルは下手をしたら大怪我を負っていたかもしれないと言うのにあっさりと彼女のミスを許してしまったのだ。

 即席のパーティー関係ならば間違いなくかなり揉めるだろう。だが長い時間信頼を築き上げて来たメンバーだからこそラキルは彼女の言葉を素直に信じてしまった。


 だが暗闇に包まれるダンジョン内だから彼は気付かなかったのだろう。ワザとではないと言っていた幼馴染が忌々しそうに背後から自分を見ていた事に。


 それから4人は出現するモンスターや暗闇に気を使いながら下層を進み続ける。だが先に進むにつれて普段は温和なラキルに苛立ちが募りつつあった。

 

 「……いい加減にしてよ。さっきからどういうつもりなの?」


 彼がここまで不機嫌になった理由、それは仲間達のここに至るまでの行動にあった。

 最初のミレイの背後から誤って攻撃されて以降からモンスターが出てくる度に3人の誰かが背後から自分の事を攻撃をしてくるのだ。盾役のはずのボーグは背中からその盾で体当たりをしてきたり、ザクロはモンスターごと自分に魔法を当てようとする。そしてミレイもまたいい訳と共に剣を振るってきたのだ。

 いくら仲間を信頼していると言ってもこれは完全に悪意の元で行われていると馬鹿でも気付く。


 「明らかにモンスター退治にかこつけて僕に攻撃しようとしているよね? それにミレイ、僕聴こえたんだよ。君の剣を避けたら舌打ちをする音が……」


 仲間達の冗談では済まない行動の連続を咎めようとするラキルに対して他の3人は一瞬で真顔となる。

 

 「な…」


 今まで見たことも無い仲間達の能面のような表情に思わずラキルは後ずさる。

 動揺を露にするラキルに対して幼馴染のミレイはめんどくさそうに顔を歪めるとこう吐き捨てた。


 「あーあ、せっかく情けで真実を知らないまま楽にしてあげようと思ったのになぁ」


 「な、何を言っているんだよミレイ?」


 「あーもーめんどいなぁ。つまりこーゆーこと」


 完全に適当な受け答えをしながらミレイは一瞬で距離を詰めると明確な殺意を持って剣を振るって来た。


 「ぐっ、どうしてこんな!?」


 自分に迫りくる死の凶刃を同じく剣で受け止めようとする。

 だがそれよりも先に背後からザクロの魔法が顔面目掛けて飛んできた。


 「がああッ!?」


 「もう取り繕うのは止めたのよ。3人がかりでやらせてもらうわ」


 飛んできた炎の魔法に対して咄嗟に腕を盾にして顔面直撃は防げたが熱風が顔に叩きつけられて怯んでしまう。

 

 「隙ありよラキル、サヨナラ」


 視線を腕で覆ってしまったラキルは振るわれた斬撃を腹部に振るわれた事に気付けなかった。だが〝幸運〟にも強く踏み込んだ勢いでミレイの足場の石が僅かに陥没し彼女の一撃は軌道が逸れる。その一撃は本来であれば背骨まで断ち切っていた一撃だったのだろうが軌道が逸れたお陰で腹部を浅く斬られた程度で済んだ。


 「うがぐっ!?」


 しかし致命は避けれたとしても痛みはある。腹部に走る職熱感と激痛に顔を歪めていると雄たけびを上げながらボーグが盾を前面に出しながら突撃して来た。


 「おらぁ死ねよラキルゥ!!」


 「うわあああああああッ!?」


 モンスターの攻撃を真正面から防ぐその堅牢な力を攻撃としてぶち当てられたラキルはそのまま大きく吹っ飛んでいく。しかも彼の飛ばされた先は通路の無い傾斜面、そのままラキルは背中を引きずりながら滑落していく。


 「うわあぁぁぁぁぁ……ぁぁぁ……ぁぁ……ぁ……!!」


 暗闇の底へと落ちて行く彼が最後に見たのは落下していく自分をニヤニヤと見ていた3人の仲間の醜悪な笑みだった。



もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。

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