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捨てられた冒険者

今回から遂に第二部のスタートになります。時間は少し流れムゲン達だけでなく他のキャラ達もそれぞれの戦いを繰り広げて行く事になります。


 どうして……どうして僕がこんな目に遭わなきゃならないんだ………。


 1人の少年がうす暗いダンジョンの中で自分に課せられた境遇を呪いながら血染めの脚を引きずりながら彷徨っていた。

 

 本来であればとても綺麗な黄色の彼の髪はダンジョン内でドロドロに汚れ、服装は至る所がほつれていた。そして一番目立つのは彼の左脚だろう。完全に骨は折れ赤く腫れあがっており破った衣服で無理やり固定されて引きずっている状態だ。


 「ひっ…!」


 出口を目指して歩いていると近くから寒気と共にモンスターの吐息が聴こえてくる。

 敏感に危険を察知した少年は痛む足から悲鳴が上がる事を堪えながら必死に物陰に隠れた。その数秒後に人間など丸呑みに出来るような大型のモンスターがズンッズンッと大きな足音を立てながら通り過ぎて行った。


 くそ……一体いつになったら出口に辿り着けるんだ? もう魔力も体力も限界だって言うのに……。


 少年が彷徨っているダンジョンは『常闇のダンジョン』と呼ばれ常に暗闇が覆っている。このダンジョン攻略には灯りが無ければまともに進行する事もできない。だが彼が持ち込んでいた魔力を送り続ける事で動くランタンの明かりはとても小さく、ほんの少し先の視界を照らす程度の力しかない。もう魔力を送る力も残っていないのだ。

 ダンジョン内は迷宮の様に複雑でこんな心もとない灯りでは出口まで辿り着くのは至難の業だろう。


 「許せない……よくも、よくも僕を見殺しにしたなミレイ、ボーグ、ザクロォ!!!」


 血反吐を吐きながらラキル・ハギネスは自分をこのダンジョン内へと放り捨てて行った〝幼馴染〟とそのパーティーメンバーを腹の底から呪った。


 そう、彼は全幅の信頼を寄せていた者達によってこのダンジョンに捨てられたのだ。



 ◇◇◇



 ライト王国内に複数点在する冒険者ギルド。その中の1つのギルドである【リターン】にラキルは所属していた。

 ギルド内で自分のパーティーメンバーと待ち合わせをしていたラキルはギルドに着くや否や名前を呼ばれる。


 「おーいラキル、新しい依頼を取って来たよぉ」


 掲示板から取って来た依頼書をひらひらと頭上で舞わせながら彼のパーティーメンバーであり幼馴染の少女が傍まで駆け寄って来た。その後に続いて他のメンバーも合流する。


 「もう遅刻だよラキル。今日は大きな依頼を受けるって約束していたでしょ」


 まるで風船のように頬を膨らませながらそう文句を言うのは幼馴染かつこのAランクパーティー【淡紅の一閃】のリーダーである幼馴染のミレイ・ウウルスである。薄紅色の赤いショートヘアーで幼い頃から一緒に剣の修行をしてきた《剣士》だ。


 「よおラキル、相変わらずリーダーに怒られてんなぁ」


 笑いながら肩を叩いてきたのはこのパーティーの《盾使い》である筋骨隆々の男性であるボーグ・ハルボテ。このパーティーの中の一番の年長者と言う事でラキルにとっては兄貴の様な人物だ。


 「とにかくこれで全員集結したわね」


 そう言いながら優しい微笑みを向けるのはこのパーティーの《魔法使い》であるミディアム系の金髪ヘアーの女性のザクロ・マディライアだ。とても優しく他の冒険者からは聖母と言われるほどの人格者と言われている。


 この3人とはこれまで多くの依頼を共にこなして来た。彼にとってかけがえのない仲間達だ。自分と同い年とは思えないほどに頼りがいのあるリーダーのミレイ、あらゆる敵の攻撃を防ぎ仲間を護る堅牢な盾のボーグ、数多くの魔法で相手を一撃で仕留めてしまうザクロ。仲間意識も強いこの3人とパーティーを組めたのはラキルにとって一番の幸福だと信じていた。


 そう……あの壮絶な裏切りを受けるまでは……。


 「ところでミレイ、今日受ける大きな依頼って結局どんなものなの?」


 本来であれば引き受けた依頼の内容は事前にパーティー内全員が共有するところだろう。しかし今回の依頼はミレイがサプライズと言う事で他のメンバーには一切話していないのだ。

 

 ラキルの言葉に対して彼女は待っていましたと言わんばかりに依頼書に記載されている内容を発表した。


 「今回私達が受ける依頼の内容はズバリこれ! つい最近発見された『常闇のダンジョン』の調査よ!!」


 彼女の開口と共に出て来た依頼にラキルは思わず戸惑いの色を浮かべた。


 この町より少し離れた森林地帯につい最近新たに発見されたダンジョンが存在する。そのダンジョンは別名『常闇のダンジョン』と呼ばれているエリアだ。本来であれば地下ダンジョンと言うのは基本は薄暗い場所だがこのダンジョンは全域が完全な闇で覆われていて視界の悪さが他のダンジョンの比ではない。その上にダンジョン内に生息しているモンスターは夜目が効くタイプが相当数うろついており多くの冒険者が攻略を途中挫折、もしくは命を落として来たのだ。

 依頼の難易度はS寄りのAとかなり高く、他のAランクパーティーも断念するレベルだ。このパーティーはAランクなので依頼を受ける事は可能ではあるが……。


 「僕たちにはこの依頼は少し荷が重いんじゃないかな? 前にこの依頼を断念したAランク冒険者の話を聴けばSランクでなければ攻略なんて難しいって言っていたし……」


 「やる前からそんな弱腰でどうするの! それにいざと言う事態に備えて転移する魔道具も購入しておくわ!」


 「そうだぜラキル。他のAランクが達成できないこの仕事を達成できれば俺達はSランクにだって上がれるかもしれないんだぜ?」


 リーダーのミレイに続いてボーグもこの依頼を受けようと説得してくる。


 まあ確かにどんな危険地帯でも転移用の魔道具があるならいざとなれば離脱できるけど……。


 一抹の不安はあるにはあるが脱出用の保険が完備されているなら大丈夫かと判断し、結局はラキルも乗り気の3人に同意してこの依頼を引き受ける事に賛同した。


 この依頼が信頼を厚く寄せていた目の前の3人の悍ましい策略だと言う事実にも気付かずに……。



もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。

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