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ミリアナの後悔物語 終

少し投稿に間があいてすいません。正直また仕事が忙しくなって疲労から休んでいました。一応ストーリーは頭の中でできているんですけどね……。


 「はあ…はあ…ここまで来れば大丈夫かな?」


 乱れる呼吸を整えながらミリアナは後ろから迫っている村人達の追跡を振り切った事を確認するとようやく安堵の息を漏らした。恐らくは村を完全に出た事で相手も無理に追いかける必要がないと判断したのだろう。元々は強大な力を持つムゲンを自分達の村から厄介払いしたいと考えていた連中だ、その元凶であるムゲンが村を出て逃げて行ったので村の追手である大人連中も引き下がったのだろう。


 「(とにかくもうあの村に戻る訳には行かないわね。もし戻ろうものなら私はともかくムゲンの命の保証がない…)」


 この世界ではスーザンと言うムゲンにとって母であり村の連中から彼を護る守護神が不在なのだ。前の世界以上に村の連中はムゲンに対して隠すことなく堂々と酷く当たっている。少なくとも前の世界ではあんな白昼堂々集団で彼に暴行を働いてなどいなかった。下手をしたら明日を迎えることなくムゲンは村の連中に嬲り殺しにされていたと思うとゾッとする。


 「(それにしてもこんな短い距離を走っただけでここまで体力が消耗するなんて。少なくとも前の冒険者時代ならこの数倍の距離を全力疾走してもほとんど息切れもしなかったのに…)」


 過去に戻ったと言う事は当然肉体の方も鍛える前のスペックに戻っている。

 隣を見てみるとここまで一緒に逃げて来たムゲンも汗だくになって未だ呼吸を整えようと必死になっている。


 「ごめんなさいムゲン。いきなり全速力で走らせて…」


 苦しそうにしている彼の背を撫でながらここまで強引に走らせ続けた事を謝る。

 

 「ど、どうして…どうして俺なんかを助けたんだよ?」


 それは助けてくれた恩人に対してはいささか不遜な態度かもしれないがムゲンがこのような疑問を抱くのは無理もなかった。確かに死んだ母と同様にミリアナはあの村の中で自分に優しく接してくれていた。だがあんな大勢の村人達の前で爪弾きにされている自分を助ければ自分の立場も危うくなるだろう。


 下手をすればもう村に二度と戻れなくなるかもしれないと言うのにミリアナは特に気にする様子もなく当たり前の様に答えた。


 「大好きな幼馴染を助けるなんて当然だよ」


 信じられないほどに好きだと自然に言われてムゲンは一瞬だけ赤面化してしまう。だがその直後に彼のテンションは急降下した。


 「……俺なんかを大好きになったら駄目だよ。俺は……疫病神なんだからさ……」


 村の全てに拒絶され母すらとも死別してしまった。その中で唯一味方であり続けたミリアナには本当に感謝している。だかだからこそ、ムゲンは彼女にだけは自分を好きになって欲しくはなかった。


 全てから疎まれている俺を好きになってしまえばミリアナも不幸の底に道連れにしてしまう。それだけは駄目だ。自分を大切に想ってくれる幼馴染だからこそ俺からはもう離れてほしい。


 「決めたよミリアナ。村の外に出たのは都合が良かったのかもしれない。俺はこのまま村には戻らない。でもミリアナは今すぐ村まで戻るんだ」


 元々ムゲンはあの村から逃げ出すべきかずっと前から悩んでいた。もう母も居なくなった今あんな地獄に愛着もなければ留まり続ける理由はなかった。とは言え自分の様な子供が1人で村の外に出て生きていけるかどうかと言う不安もあったために決断できなかった。

 だが今回の村の大人達による集団リンチで決心した。自分達よりも遥かに幼い子供を血走った目で睨みながら殺意を持って襲い掛かって来た。ここで村に戻っても明日には生きているかどうか冗談抜きで分からない。

 だがミリアナは自分と違い村に戻っても特に何かされる訳でもないだろう。自分を庇ったことで多少は親辺りに説教されるかもしれないがペナルティと言えばそれぐらいのものだろう。


 「今までありがとうミリアナ」


 これ以上一緒に居ても別れが辛くなると思い彼女の元から姿を消そうとするムゲンだがそんな彼の手を掴んで彼女は信じがたい事を言い出す。


 「さっきから何言ってるのムゲン? 私も一緒に村を出て付いていくに決まってるじゃない」

 

 「何を馬鹿なことを言ってるんだ? 俺と一緒に来てもどうしようもないだろう」


 子供二人だけで生きていけるほど世の中は甘くない。正直ムゲン自身だって自分の未来の先は一切見えない。ただ地獄から抜け出すことしか考えになく行く当てなど皆無だ。そんな自分に付いていけばミリアナも不幸になるに決まっている。


 自分を想ってくれる彼女の心遣いは本当に嬉しい、それでもどうにか説得して彼女だけでも村に戻ってもらうように説得を考えていると……。


 「言っておくけどムゲンが何を言おうと私はあなたと行くわよ」


 自分が説得をするよりも早く迷いなど一切なく自分の決心は変わらない事を告げられる。


 「私はあなたを〝今度こそ〟必ず守って見せる。例えどんな逆境に立たされようとももうこの手は離さない!!」


 そう言うとミリアナは何が何でもあなたを離しはしないと言う意思を見せるかのようにムゲンの手を握る。


 「どうして……どうして俺なんかの為にそこまで言えるんだよ?」


 「だからさっきも言ったでしょう。あなたが…大好きだからだよ……」


 そう言うと彼女は震えている彼の体をギュッと抱きしめてあげる。

 誰からも愛を向けられず暴力と罵倒に晒されていた幼い少年はその温もりに涙が堪え切れず溢れる。そしてやがては年相応の子供らしく大声で泣き出してしまう。


 「だめだよぉ…俺なんかに付いてきちゃダメだってば。俺はミリアナに不幸になって欲しくないんだよぉ」


 言葉とは裏腹に彼は離れたくないと抱きしめ返す。

 その矛盾する行動に思わず吹き出しながらミリアナは優しく彼の頭を撫でる。


 「大丈夫だよムゲン。私たち二人ならきっとこの先も生きていける。1人が倒れそうになっても隣にもう1人居れば支えられる。そうやって助け合って生きていこう、ね?」


 「本当にいいの? 本当に……俺と村を出て後悔しない?」


 「しない」


 「どんなにひもじい生活になっても後悔しない?」


 「するわけがない」


 次々と子供だけで生きていく事に対する現実での不安要素を挙げていくがミリアナは全てを即答で問題ないと答えてみせる。


 「一番大事なあなたが居るだけで私は幸せになれるから」


 そう言うとミリアナはムゲンの手を取って歩き出す。

 その優しく握る彼女の手を本来なら離さなければならないと思いつつも逆に強く握り返す。自分の意志で手を取ってくれたムゲンに嬉しくミリアナは優しく微笑んだ。


 ムゲンの言う通り子供二人で村を出て生きていける保証はない。だが不思議とミリアナにもムゲンにもこの先の未来に対しての不安はもう一切なかった。


 だって自分の隣には愛する人が居るのだ。それだけでももう十分幸福なのだから……。



 さて……過去に戻ったミリアナの物語についてはあえてこれ以上は語らないでおこう。二人の辿る道はこの先いくつもの艱難辛苦が立ちはだかるだろう。だが固く手を握り笑いながら笑顔で足を進める二人を見れば決して折れることなく歩き続けられると何故か信じられる。


 愛する人が隣に居る、それだけで人は生きていく原動力を得続けられるのだから……。




            ミリアナの後悔物語~~~完



ついにミリアナの後悔物語も完結です。そしてこの作品も間も無く第一部が完結します。第二部からは新主人公も出す予定ですので今後もこの作品の応援をよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
後悔◯後にタイムリープする展開ってなかなか描かれないから新鮮ではある ウラギリに関しても大体は少人数の中できっかけが性格が歪んだか?NTRで街ぐるみの陰謀とスケールが違うし
[一言] ミリアナ死んじゃったの悲しいけど、救いがあってよかった
[一言] ミリアナがいなくなるの辛すぎるんですが...
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