表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/296

5つのルート、それぞれの戦い


 ついに第5支部のアジト内へと突入したムゲン達だがアジトの内部へと侵入すると同時に一斉に支部内に配置されていた兵隊達が襲い掛かる。

 

 「来たぞ、全員構えろ!!」


 向かってくる敵兵達に応戦しながらもムゲンは内心で考えを巡らせていた。


 アジトに入ったほぼ直後に雑兵どもによる襲撃、こんなもんどう考えても事前に俺達に対して備えていたとしか思えねぇ。だが気になるのは……とりわけ特出した実力者が見当たらないことだ。


 目の前の敵を吹き飛ばしながら他の戦況を確認するが仲間の誰一人として苦戦を強いられている様子は見受けられない。余裕綽々と言った感じで敵をなぎ倒している。ムゲンの予想では戦闘狂と呼ばれるスキル所持者が1人くらいは出て来るものだとばかり思っていたが……。

 それからもしばし襲い来るのは脅威になりえないただの兵隊クラスばかり。この頃になると全員が違和感を察知し始める。


 「やっぱりおかしいですよ。ここに至るまで実力者が誰一人迎撃にこないだなんて……」


 中級クラスの魔法で残りの敵を一層しながらハルがそう疑問を漏らした――その直後にアジト内の全体へと声が響き渡った。


 『わざとレベルの低い兵隊だけを送り込んでいるんですよ。最大限に愉しむ為にね』


 その声を聴いた瞬間にムゲンは一気に血液が沸騰する感覚に陥った。何故ならこの声の人物は幼い頃から何度も自分を救ってくれた幼馴染の声だからだ。だが今は腐れ外道の剣によってその肉体を操られて弄ばれている。


 彼の怒りは一気に沸点を超えて怒号となって飛び出していた。


 「ソウルサックゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」



 ◇◇◇



 「あはは、予想通りいい感じに自分を憎んでくれているようですね。嬉しいですよ、そうでなければリベンジマッチをする甲斐がありませんからね」


 副支部長であるハレードの魔法を通してムゲン達の様子を観察していたミリアナ、もといソウルサックは愉快そうに嘲笑っていた。

 その様子を隣で眺めていたハレードは呆れ気味に溜息を吐く。


 「まったく、道中に罠も設置せず、アジト内でもただ兵隊を仕向けるだけ。もう少しやる気を出してもらいたいものですね」


 「やる気? やる気なら十分にあるでしょう。この先で待ち構えている〝あの子達〟なら既に殺る気十分ですよ」


 魔法を通してムゲン達の行動を観察していると、今まで足を止めることなく移動し続けていた彼等の足が急に停止した。


 「さあ…ここからが本当の戦闘ですよ。正規ギルドの皆さん?」



 ◇◇◇



 ここまでは順調に進んでこれた一行であるがここから先は迂闊に進むわけにはいかなかった。


 「これは……どのルートが正解なんだ?」


 そう言いながらソルはうんざりと言った具合に眼前の分かれ道を見て警戒を露にする。

 

 これまでと異なり5つの通路が皆の前には用意されていた。そして厄介なのはどのルートからも充満しているのだ。まるで纏わりつくような粘っこい殺気がどのルートからも漂って来ている。完全にそれぞれのルートに敵が待ち構えている。しかも殺気の濃さからしてこれまでの兵隊クラスとはレベルが違うだろう。


 「どうするの? それぞれ別れて進むか、それとも1つ1つ全員でしらみつぶしていくか? 私は後者を選ぶべきだと思うけど……」


 安全面を考えるのならばここはやはりホルンの言う通り全員で行動すべきだろう。何しろここは完全に敵の懐なのだ。5つのルートを別れて進むとなれば一気に数がばらけてしまう。

 だがそんな消極的な考えをソウルサックは許してはくれなかった。またしても魔法を通してアジト内のどこかからソウルサックが語り掛けて来る。


 『まさか日和って1つ1つ安全に潰していこうと思っていませんか? だとしたらそれは許しませんよ。あなた方には5つのルートをそれぞれ別れて進んでもらいますよ』


 「どこからか覗いているのかこの変態野郎が。俺達が敵であるお前の言う事に律儀に従う道理はないはずだ!」


 ソウルサックからの指示になど当然従う理由の無い皆はカインに続いて口々に噛みついていく。そのまま全員で1つ1つ安全なルートを割り出していこうとするが……。


 『ここまで何のためにあなた方を楽に進ませてあげたと? まさか優しさだと勘違いしていませんよね。この先で待ち構えて待っている戦いに飢えた〝スキル所持者〟の部下達を愉しませるためですよ。断ると言うのであれば……この声の持ち主の体はどうなるでしょうね?』


 「お、お前……」


 『肝心な事を忘れていませんかムゲン・クロイヤ。あなたの幼馴染の命は今も尚この自分の手の中なのですよ?』


 こう言われてしまえば罠と分かっていてもムゲンに拒否をする事は出来ない。他の皆も助け出そうとしている人物がここで死んでは本末転倒だと理解して歯を食いしばる。

 

 『では5つのルートを各自選んでくださいな。あっ、ちなみに……一番真ん中のルートは自分の元へと続いていますよ』


 そう言い終わるとソウルサックの声は聴こえなくなった。

 

 「……真ん中のルートは俺が進む。他の4つのルートはみんなに任せるぞ」


 当然だがムゲンが選択したのは中央の第3ルート。

 それから相談した結果、残りの4つのルートに進む割り振りも決定した。


 第1ルート――ソル・ウォーレン


 第2ルート――ハル・リドナリー


 第3ルート――ムゲン・クロイヤ


 第4ルート――カイン・グラド、ホルン・ヒュール


 第5ルート――マホジョ・フレウラ、セシル・フェロット


 こうしてそれぞれ進むべきルートが決まると皆は同時に先に進んでいった。

 


もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ