遂に到着、第5支部
今回は今までの章よりも戦闘シーンが多くなると思います。ただ戦闘シーンが上手く表現できるかが不安なんですよね~……とにかく頑張ります!!
昨日の【ディアブロ】による再度のアタック、そしてその結果のウルフの母の死、この事実を知って仲間達も大層当惑していた。だが中でも一番狼狽していたのはやはりウルフであった。いや、それ以上と言えるだろう。目の前で母が殺され発狂した彼女はスイッチが切れたかのように意識を失ってしまった。翌日になってもウルフは目覚める様子が無い。どうやら精神的ショックが強すぎて本人が目覚めて現実に戻る事を拒んでいるそうなのだ。
こんな状態のウルフをアジトまで同行させる訳にもいかず、事が済むまで狼族の村で安静にしてもらう事となった。幸い命の方には別状はなく脚の負傷も魔法により綺麗に完治しているのだがいつ目覚めるかは定かではない。
その日の夜、ムゲンは自分の腹立たしさに吐きそうにすらなった。幼馴染だけじゃ飽き足らず恋人にまであんな思いをさせてしまう自分の間抜けさに反吐が出そうだ。そしてそれ以上に第5支部の【ディアブロ】の連中に怒りを通り越し憎悪すら抱いた。
お前たち闇ギルドはどこまで人の大切な物を傷つければ気が済む? 俺達だけでなくこれまでも何人罪の無い者を傷つけ、そして殺めて来た? どうしてその力をもっと正しい方向へ利用できない?
朝になりウルフを預けて村を出てセシルの案内でアジトを目指す一行だが誰もムゲンに声を掛けられなかった。いや、もっと言うならムゲンのパーティーメンバー達にカイン達が声を掛けられなかったと言った方が正しいだろう。
怒髪天を突く程に怒り心頭なのはムゲンだけでない。同じパーティーの仲間であるハルもソルも同様に殺気の混じっている空気が身に纏われているのだ。まるで3人の周辺の空気が歪んでいるかのようにすら錯覚してしまうほどに。
「……そろそろアジトが見えてくるのね」
セシルが地図を確認しながら間もなくアジトへと到着する事を告げる。その言葉に反応してムゲン達の緊張感が高まる。
それにしてもアジトまでの道のりで目立ったトラブルが何も起きなかった事がセシルにとっては少し気がかりであった。何事も無くスムーズに目的地まで到着できた事は単純に喜ばしい事とは決めつけ難かった。むしろここまでの道中に刺客が飛び出してくる事もなければ罠の1つも設置されていなかった
事の方が異常なのだ。何しろ第5支部側からすれば自分達がアジトに攻め込もうとしている情報は既に伝わっているはずなのに……。
道中で一切の手出しをされず、むしろ誘われるようにアジトまですんなり到着できた事を考えると……やはりあの〝戦闘狂〟共があえて私達を迎え入れようとしているとしか考えられないのね。あの〝スキル持ち〟の戦闘狂共が……。
実は第5支部には他の4つの支部には存在しない特殊な部隊が存在するのだ。
その部隊の名称は〝スキル部隊〟と呼ばれスキルと言う能力を持つ者達によって構成されている少数で構成さている集団の事だ。
そもそもスキルとは一体何か? それは簡単に言うのであれば特殊能力を宿して産まれて来た者達のことを指す。スキルの能力の種類は多種多様であり、中にはそのスキル1つを有しているだけでもSランク冒険者に匹敵、もしくは上回る力を発揮できる事だってある。だがこのスキルを有している人物は極めて希少だ。中にはスキル所持者であるにもかかわらず自らのスキルに気付かず発現すらしない者も居るぐらいだ。現にムゲン達の所属してる【ファーミリ】のギルドにもスキル持ちは存在しない。それどころかこの場に居るセシル以外の皆はスキル所有者と遭遇した事すらないのだ。
だからこそ第5支部にはスキル所有者達の部隊が存在する事を知らされてマホジョが憂鬱そうな顔を浮かべる。
「それにしても希少なスキル持ちが複数人も属しているなんてね……一体どこからそれだけの数のスキル持ちを見つけて来たのやら……」
「詳しくは知らないけどどうやら全員ソウルサックにスカウトされたみたいなのね。ソウルサックは度々副支部長に仕事を押し付けて外へ出ていたのね。その時に勧誘して引き込んでいたそうなのね」
セシルとマホジョの会話にカインも加わり敵の厄介さについて語る。
「ムゲンさんが昨日の夜に戦った二人だけでもかなり厄介な能力だな。空間を一瞬で移動したり、距離を無視して斬撃を当ててきたり、他にはいったいどう言うスキルの持ち主が居るかセシルは知っているのか?」
「いいえ、私が知っているのはスキル部隊の人数だけなのね。確かスキル持ちの人数は全部で5人、でもそのメンバーの所持している能力については知らないのね。その情報を有しているのはソウルサックと副支部長であるハレードだけなのね」
昨日の夜に再度のアタックをかけてきた二人組についての情報はムゲンから皆へと事前に共有されている。1人は空間を一瞬で移動でき、そしてもう1人は距離を無視して斬撃を当てる能力。しかもスキル持ちには厄介な点がある。それはスキル発動の際に魔力を一切消費しないと言う事だ。スキルは魔法とは異なり生まれ付いた時から身に宿っている能力、その力を自覚さえしてしまえばまるで手足を動かすかのように、息を吸うかのようにスキルによる能力を扱えるのだ。
そしてセシルの話によればスキル持ちはどいつもこいつもいわゆる〝戦闘狂〟の部類らしい。
何故スキル部隊の連中が【ディアブロ】の様な闇ギルドへと腰を落ち着けたのか、もしかしたら血を求めて裏の世界に踏み込んだのかもしれない。
そして遂に目的地である第5支部のアジトが皆の視界へと映り込んだ。
「ここが…【ディアブロ】第5支部のアジトなのね……」
ムゲン達の眼前に建っているのは過去の第3支部をも超える巨大な建築物であった。事前にセシルから話には聞いていたがこうして直接見るのとでは印象も大分違う。
「かなり大きいな。それに内部は入り組んでいそうだ……」
ここまでアジトに接近しているにもかかわらず未だに支部の方からは特に反応は見られない。まるで早く中に入って来いと挑発しているかのように。
アジト内部には罠が張り巡らされている可能性もあり危険だ。だがだからと言ってアジトの手前でうろうろする訳にもいかない。
「(今この瞬間にもミリアナが危険に晒されているかもしれないんだ。こんな場所で立ち止まっていられるか!)」
ムゲンは後ろを振り返り自分以外の全員の表情を見て覚悟が整ったかどうか確認をする。だがどうやらいらぬ世話だったようで全員が一切臆することなく怯えを感じさせない強い覚悟に満ちた顔を既にしていた。
「よし、行くぞみんな!!」
士気を挙げるかのように大声を出すムゲンに応える様に皆も覚悟の籠った返事を返した。
そしてここから遂にムゲン達と第5支部による苛烈な戦いが繰り広げられる事となる。
もしこの作品が面白いと少しでも感じてくれたのならばブックマーク、評価の方をよろしくお願いします。自分の作品を評価されるととても嬉しくモチベーションアップです。