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目障りな女

ぎ…ぎりぎり投稿できた。毎日投稿維持セーフ……。


 どうして……どうしてこんな結末を自分は辿ってしまったのだろうか?


 自分の差し伸ばした手を払い落しながら去り行く幼馴染の背中を見つめながらミリアナは膝から崩れ落ちる事しかできなかった。

 やっと数年の時を経て巡り会えたと言うのにこんな結末はあんまりだ。そう悲しみに暮れる一方でこの結果はある種当然の帰結だと自嘲気味になりながら内心で笑っていた。


 どんな理由であれ、たとえムゲンを守る為の行動であったとしても、あれだけ酷い環境に居た人がどれだけ苦しいのか子供の私ですら分かっていたはずなんだ。それなのに私は突き放すと言う手段を用いて彼を救おうなどと愚行に走った。

 自分の本心は間違いなくムゲンの命を守ってあげたいと言う気持ちで満ちていた。だがそのために取った手段が今更ながらに浅はかすぎたのだ。母親以外の味方が居ない環境下で幼馴染の自分すら敵意を向けてしまえば普通の子供ならばどう考えるだろうか?


 もし私がムゲンと逆の立場であったとしたら自分は『ああ、自分を助けるためにあえて冷たくしてるんだな』などと思うだろうか? いや思う訳がない『この裏切り者』と相手を憎み涙するに決まっている。


 「はは……完全にやらかしたわね。もし過去に戻れるのなら昔の私に言ってあげたいものね。彼を守りたいなら突き放すのではなく寄り添ってあげなさいと……もう完全に後の祭りだと言うのに滑稽な女ね」


 そう言いながら乾いた笑い声を上げていると後ろの方から騒がしい男の声が聴こえてきた。


 「やっと追いつきましたよミリアナさん! 急に走り出してどうしたんですか?」


 どうやら先ほど置いてけぼりにしてきたモブル達一行が今更ながらに追いついて来たようだ。

 本来ならまだ立ち直れる精神状態ではないのだが、今の自分はSランク冒険者としてこのダンジョンへと赴いている立場だ。であるならこのダンジョン調査とは無関係な自分個人のショックを持ち込むわけにはいかない。

 

 「ご、ごめんなさい。何だか奥の方から嫌な気配を感じて反射的に飛び出していたわ。もしかしたら凶暴なモンスターが居るかもしれないと思って先走り過ぎてしまっていたわ。驚かせてしまった事を謝るわ」


 未だに瞳が潤んで涙が滲んでしまう為に背中を向けながら下手な言い訳をして気丈に振る舞おうとするミリアナ。我ながらなんともお粗末な言い訳だろうと内心で自分自身へと呆れかえる。

 そんな自分に対して当然ながらモブルのパーティーメンバーの女性陣が口々に不満をぶつけて来た。


 「仮にもSランク冒険者がいきなり独断専行なんて少し身勝手すぎやしませんか?」


 「そうよねぇ。ギルドのお手本になるSランク様のやる事かしらねぇ?」


 「もしかして〝戦姫〟なんて呼ばれて調子に乗ってます?」


 モブルの仲間の女性陣がここぞとばかりに言いたい放題に陰湿な言葉をぶつけていく。

 彼女達は自分達のパーティーリーダーであるモブルを誰よりも愛しており、それ故に独占欲もひと際強い。

 直接モブル本人に尋ねた訳ではないが彼が目の前のミリアナに猛アタックをかけている時、彼の眼を見れば分かってしまうのだ。自分達のモブルがこの〝戦姫〟の虜になってしまっている屈辱的な事実に。食事を誘う際などのモブルの眼は明らかに自分達や他の女性を口説く時とは違いかなり熱が入っている。同じパーティーに所属し、さらには毎日の様に愛してもらっている自分達を差し置いてモブルを無自覚に誘惑している目の前の女が彼女達にとっては完全に目の上のたんこぶであった。だから今の様に正当な文句を言える機会が巡ってくれば過剰にミリアナに文句をぶつける事は彼女達の立場からすれば必然であった。


 だがそんな彼女達に対してモブルが責める様な宥め方をしてきた。


 「おいおい3人そろってそこまで強く言う事はないだろ? それにミリアナさんはSランクとして僕たちを守ろうと思い先行して様子を伺ってくれたのかもしれないよ? だからそんな集団で責め立てるみっともない行為はやめるんだ」


 そう言いながらモブルは口調こそは優しいがミリアナに攻撃的な口調で話し掛ける女性達を睨みつける。

 どう考えても勝手な独断行動を取ったミリアナに非があるにもかかわらず、自分達の大好きな人はこの〝戦姫〟の肩を持った。その事実が更に女性陣達の怒りの炎に油を注ぐ。


 「(どうしてなのモブル? 何でそんな女の肩を持つのよ! 毎日毎日私達に愛を囁いているのにこの女が居る時はいつも私達でなくこの女を選ぶの!?)」


 彼に嫌われたくないがために口頭ではミリアナに対して謝罪を述べるが内心では彼女に対しての憎悪が膨れる。しかも自分達が頭を下げている合間にモブルはまたミリアナへと熱烈にアプローチをしているのだ。これで怒りが沸かない訳がない。


 すると3人のうちの1人が他の2人へとこんな提案を囁いてきた。


 「ねえ…もう私限界よ。あのミリアナって女が居る限りモブルは私達を見てくれない。だから――このダンジョン内であの女をぶち殺してやりましょうよ」


 モブルやミリアナの耳には決して届かないほどの極小の提案に対して他の二人は一瞬だけ戸惑いを浮かべる。だがすぐにその二人も提案してきた女性同様に醜悪な笑みを浮かべたのだった。



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