少女は、愛する事より愛される事を選んだ。【後編】
大丈夫。
もう、未練なんかない。
だから、杉山の事を、……今更だけど。ちゃんと、一人の男として、好きになる。
大丈夫。
――だって、やっと踏ん切りがついたから……杉山。アンタの、御蔭で…
その夜。珍しく、勉強に取り掛かっていた杏子の耳に、コンコンっと、何かを叩く音が飛び込んできた。
「……?」
気のせいか、と考え、再び机に向かうと、また音が聞こえた。今度は、少し大きめな、「此方に気付け!」と、主張してる様な。
音がする方へ、顔だけ向けると、カーテンで閉め切られ、現在外の景色が見えないベランダが、視界に映る。
――今更何の用…?
さて。カーテンを開けて、相手をしてあげるか、其れとも、全く気付かないフリをして、無視を決め込むか。どっちにしろ、勉強の邪魔であるのには変わりなくて、杏子は溜息を洩らすと、渋々腰を上げ、前者の行動に出た。
「珍しいわね。良哉から、此方に来てくれるなんて……で?何の用?」
シャァーッと、カーテンを開けたと同時にそう尋ねると、まさか自分がそんな対応してくると思わなかったのか、窓越しに映る男の双眼は、驚きに目を見開いていた。
「あっ…やっ…そのっ……何時からそのっ」
「杉山と、恋仲にあるかって?」
男の訊きたい事を、代りに言葉にして尋ねると、良哉は一瞬瞠目して、「あぁ…、そうだよ」と、彼らしくも無く、素直に答えた。此れには拍子抜けした杏子は、少し反応が遅れて、ふぅーん、と無関心の態度で答える。
「一週間位前から、クラスメイトから、彼氏に昇格したのよ」
「……丁度、お前が、俺の部屋に、勝手に来なくなった辺りか」
「………用は其れだけ?だったら、サッサと……」
「まぁ、待て。後、一つ。其れで帰るから」
「………何?サッサとしてくんない?私、勉強した――」
「可笑しな話だけどな。お前に彼氏が出来たら、伝えるつもりだった。俺さ、――お前の事、“一人の女”として、愛してた」
耳を疑った。何を言ってるんだコイツは、と思いながら目を凝らして男をよく見ると、その顔は真剣で。とても、嘘を吐いてるとは思えない。
――何で、今、そんな事言うの?
「よ…っ」
「じゃあ、要望通り帰っから。彼氏君とお幸せに」
待って、と言葉を出す前に、男は塀を伝って、我が家へと帰っていった。一切、此方を振り返る事無く。
本当は、未練がないなんて嘘。
好きで好きで好きで、愛してて。
何時か、彼も自分と同じ、「好き」の感情が芽生えると思ってた…。
でも、全然、その傾向が現れなくて……そんな時、新たな恋の道が出来て、――何時までも登れない壁から逃げ、楽な道を選んだ。そしたら、今迄、恐ろしく高かった壁は消え、まさかの未知なる道が出来上がるなんて、――何処の昼ドラだよ?って、つい、突っ込みたくなる。
「……何でよっ!良哉…っ」
結局、勉強なんか出来る状態じゃなかった。唯、冒頭での対応について、後者の「無視を決め込む」の方を選んでたら、此処まで自分が追詰められる結果は無かっただろう。
杏子は、其の場に力なく女の子座りすると、嗚呼を洩らし、ソレを段々泣き声へと変えた。
誰かが言った。
女の幸せは、「“誰かを”愛する」事じゃ無く、「“誰かに”愛される」事だって。
――でも私なら、愛したいし、愛されたい
だから、私はまだ、「女の幸せ」というヤツを掴んでなんかいなかった。
了
後書き
今回は、わりと早めの更新……ですよね?((お前にしては、早い方だと思うけど……如何なんだろうねぇ
なんか、色々とやっちゃった感があるんですが……何でだろ?((知るかっ!
取敢えず、コレで此のシリーズは終わり……と言いたい処ですが、まだ続きます((当り前だっ、こんな後味の悪い結末なんて誰も望まねぇよっ!
初出【2014年3月23日】一部削除
自分で書いてなんですが……良哉、とんでもねぇクズ野郎だと思ったo(`ω´ )o
あ"あ"ぁ"っっ!!!腹が立つ!!!
というわけで、この時の後書きでは、続きを書くみたいな事を言ってましたが、、
10年近く、続きを書けてないので、一度踏ん切りをつけて完結させていただきます。
後味が悪い終わり方で御免なさい!!!!
続きが書きたくなったら書きます(`・ω・´)
その時は、またお付き合いくださると嬉しいです(*≧∀≦*)❤️宜しくお願いします‼️❤️❤️❤️❤️❤️
P.S
あと杏子ちゃん…。昇格って言い方は、ちょっとあれかなぁ、とオジサンは思いました。
付き合うのは対等な関係なワケだし、なんか、なんかこうっ……はい。。(←お前が生み出したヒロインだろぉーがアアァ!!!)