言わせてくれたって、いいじゃない
―――幾ら「好き」だって言ったって、貴方は上手くはぐらかす。
ねぇ。ホントは気付いてるんでしょ?
早く、答えを聞かせてよ…―――
休日で、学校は休み。此れといって予定も無く、相変らず、良哉の家で寛ぐ一人の少女。家主の青年といえば、向いに座る少女と挟んであるテーブルに参考書を開き、勉強をしていた。
「初めて見たぁ…良哉が、勉強してる処」
黙々と勉強をしてる彼を見詰ながら少女―杏子は、床に置かれた御菓子袋に手を突っ込み、手探りで目当の物が見付ると袋から手を出し、口に先程掴んだ御菓子を抛り込む。
「うーん…此れには、御茶が合うわねぇ」
「生憎、ウチには御茶なんて高級品、ねぇーんだわ。ってか、ウチの御菓子を何、勝手に食べちゃってんのぉぉぉ!?」
溜息を洩らし、涙目で杏子を睨み付ける良哉だったが、当の少女はというと全く悪気無さそうに、再び御菓子袋に手を突っ込み掴んだ御菓子を食べる。其の繰り返し。
「あのさぁ…、何で、毎日の様に家に来るわけ?」
唐突の良哉の問いに、杏子は飲み込もうとしていた御菓子を上手く飲み込めず器官に詰まらせ、噎せた。頭上から汚ぇなと言う男に「アンタのせいだ!」と出掛った言葉を呑み込み、暫く咳込み発作が治まるとキッと良哉を睨み付ける。
「……何?」
「べ…別にぃ」
「…で?」
「へ?」
「だから、何で…?」
答えてくれるまで逃さないといった感じで良哉は杏子に覆い被さる様に腰を下ろした。背中に感じる良哉の体温に、ドキッドキッと心拍数が上がっていく。
「…っせ…、セクハラ!」
「ハァ?ガキの御前に誰がセクハラすんだよ?寝言は寝て言えっつーの」
「此処に居るわ。良哉っていう、ロリコンが」
「おいおい。俺を、勝手にロリコンに仕立て上げないでくれる?」
「だったら、サッサと私の上から退きなさいよ!」
「其れは無理」
背後から抱締められた。御腹に、良哉の腕が回される。杏子の心臓は早鐘の様に鳴り出した。耳元で、良哉の吐息が聞える。
「…何で?」
「あ?」
「何で…、こんな事するの?」
声は震えていた。ちゃんと良哉には届いた、筈。問題は、何って答えが返ってくるかだ。
例え、子供扱いしても、其の前に男女であるワケで。しかも、独身の男が少女といえど血の繋がらない女を抱締めるという行為は、少なからず意識してなきゃやらないわけで。
期待しても好いんだよね?
と、少なからず、杏子は良い答えがくると思っていた。期待とほんの少しの不安が入り混じった心境の中、良哉をジッと見詰る。
良哉は一瞬、ほんの一瞬、顔を歪めた。其れは苦しそうに。でも直ぐに何時もの大人の余裕といった憎たらしい笑みを浮べると、「そんなの決ってんじゃん」と前置きを置くと、答えた。
「俺達が、兄妹だからだ」
「……きょ…兄妹…?」
「あぁ…。そりゃあ、まぁ、スッゲー仲の好い、いや良過ぎるか?位の、兄妹、だから」
うんうんと一人納得した感じで頷く良哉に、杏子の中で、何かが音を立てて崩れていった。
兄妹?あー…兄妹か。兄妹、ねぇ…。
「じゃあ、私の、愛の言葉は?」
「はぁ?愛?あー…お前が何時も俺に言う『好き』、の事かぁ。……あれじゃね?御前はさ、身近に居る男が俺だから、勝手に恋だの愛だので勘違いしてんだよ」
勘違い…?私が?
「御前もさ、ちゃんと周りを見なきゃ駄目だぜ?御前、もう中三だし、気になる男の一人や二人は居んだろ。お兄さんに教えなさい!恋の相談相手位には、なってやるからさ。な?」
嗚呼……
彼は―――――
言わせてくれたって、いいじゃない
(何って、ズルい男なんだろうか…)
後書き
前に書いた、私だけを見てください・幼馴染の続編…みたいなもんです((いや!もう、続編で好いじゃん!!
読んでて泣きたくなる気持ちになる様に書いてます((おいおい
初出【2012年4月25日】一部削除