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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歩くような速さで。
48/369

48話

 イスから立ち上がり、イリナはブランシュを四方八方から観察しつつ、髪や二の腕や足などを触ってみる。普通に触れる。ふむ、幽霊とかそういうのではないみたいだ。


「なにか、最後の真ん中のピースが埋まっていないような、全体はイメージできるのに、大事ななにかが抜け落ちている感じなんです」


 唐突に色々弄られ驚いたが、ブランシュは気にせず会話を続ける。が、しまった、ここでじゃれたりして、もっと親睦を深めるべきだったか、と反省した。まだ壁を作ってしまっていたか。


「……じゃ、ピアニスト三人いるんだし、それぞれ合わせてみよっか。第一がヴィズで、第二が私、第三はカルメンでいいでしょ。違いがあれば、なにか見つかるかも」


「いいよー」


「いいわ」


 突然のイリナからのアンサンブルの誘い。二人も即承認した。やはり演奏家なら、音楽で親睦を深めるのが一番手っ取り早い。演奏にはその人の中身が詰まっている。


 願ってもないことだが、ブランシュは目を丸くした。


「いや! あの、申し訳ないですって! せっかくのお昼休みに、ゆっくり休んでくださいって!」


 身振り手振りで申し訳なさをアピールする。ただでさえ音楽科はその名の通り、音楽に関する講義が多い。リフレッシュしてもらいたいのと、自分の都合のために駆り出すのは忍びない。


「いやでもねぇ、キャンドルまで作ってもらって、何もなしなんてねぇ。頼ってくれって、友達っしょ?」


 ブランシュの肩を抱き寄せ、イリナはお互いのこめかみをコツン、と優しくぶつけた。


(友達……!いい響きです……!)


 自分が思ってたいただけではなかった、とブランシュは安堵と喜び。しかし不安も。


「本当によろしいんですか? 私の個人的なことに巻き込んでしまって……」


「放課後にみんなでスイーツ食べるのと一緒でしょ。昼休みにピアノとヴァイオリンで演奏」


 一緒一緒、とイリナがブランシュの肩を強めに叩く。


 たしかに、数分でヴァイオリンを取ってホールに行くことはできる。ここはもう、言葉に甘えることにした。たくさん感謝しよう。


「わかりました、ありがとうございます。すぐに取ってきます!」


 ランチボックスとカバンを手に、足取り軽く、取りに戻る。実は、ふとなにか思いついた時のため、学内のロッカーに預けていた。三分後にはホールに到着するだろう。


「はいはい、時間もったいないからあたしらも早く行くよー」


 と、この流れを予想していたかのように、昼の時間帯のホールはヴィズが借りていたらしい。テーブルを片付けてホールへ向かう。するとすぐにブランシュがやってきた。相当急いでいたのか、肩で息をしている。


 中に入り、まずはヴィズがイスに座る。


「ヴィズ、譜面ある? あんま覚えてないんだけど、あったら貸して」


 イリナは普段、ブラームスはあまり弾かないが、『雨の歌』は弾いたことがあった。しかしそれもだいぶ昔の話。今のうちに思い出す。譜面を見ればだいたい思い出す。カルメンも同様。


「はい。私は覚えてるから、二人で使って」


 ヴィズはカバンから譜面を取り出す。ぶっつけ本番だが二人なら大丈夫だろう。

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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