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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歩くような速さで。
45/369

45話

「ないですね。私は他人の紅茶でおかわりは無理です」


「おいおい、お姉ちゃんよ。もっと妹に優しくしてくれよぉ」


 肩を抱き寄せてくる妹をうっとうしくも感じるが、姉は悪い気は心の底ではしていない。なんだかんだで、このはちゃめちゃした空気は嫌いじゃない。が、やはり気になることは気になる。


「しかし……なにが欠けているのか、これ以上精油を混ぜると、私の腕ではバランスが崩れる可能性があるので、中々難しいです」


「じゃあ完成でいいんじゃない? 精一杯やったってことで」


 自身の首筋に塗布した香油が、穏やかな優しい香りに変化している。ニコルはこの香りに満足している。使う人が満足しているなら、それで解決でしょう。


 アマチュアにしてはもちろん、よくやっている方だとは思う。こだわりを持って、意図する香りは作ることができたのだから。ブランシュは決断する。たしかにうだうだ考えていてもしょうがない。


「まだあと四日あります。それまで……少し粘ってみます。それでダメなら、その香りでお願いします」


 やるだけやってみよう。ダメで元々なのだから、と、以前の自分だったらこんなに切り替え早くできたのかわからない。ニコルのいいところだけ、少し混じってきたのかもしれない。混ざるのはここまででいいからね、と自分に注意喚起。


「音楽科に編入すれば? ルールを守りさえすれば、ホールは使えるわよ」


 と、ヴィズが提案してくる。たしかに使う際に、余計なことを考えずに使えるかもしれない。だが、ブランシュは決めている。


「ありがとうございます。でも私の目指すところは、プロのヴァイオリニストではないので。趣味でやるくらいがちょうどいいです」


 そう、パリまで調香師になるために来たのだ。色々と予定とは違っているが、道は繋がっていると信じている。


「ま、四日間あるわけだし、色んな角度から見てみればいいんじゃない? とりあえず私は戻って寝る。下のベッド使うよ」


 ニコルは立ち上がってゴミなどを片付ける。ついでに二人のぶんも、食べ終わっているものは一緒に捨てた。


「もう、私の部屋に住むつもりなんですね……」


 持ち帰りでなにやら、いつの間にか買っていたらしい紙袋を手に持ち、ニコルはそれをヒラヒラと揺らす。


「サポート役に徹するんで。元々は私の課題なわけで、ブランシュひとりに押し付けてる罪悪感もあるのよ」


「あるようには全く見えないけどね」


 冷静にヴィズが一言いれる。まぁ、あたしには関係ないけどと、他人事らしい。


(四日……急がねばなりませんか)


 ヒントはどこかにあるはず。ブランシュは窓の先のホールをもう一度見て、頭の中で『雨の歌』を紡ぎ出した。

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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