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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歩くような速さで。
41/369

41話

 第一楽章が終わる。今、やれるだけのことはやった。第二楽章。一度、右手の甲の香りを嗅ぎリセット。トップを塗布した部分を擦って落とし、ミドルを塗布する。


 第二楽章はピアノの詩情豊かな音色から幕を開ける。走馬灯のように過ぎ去る日々。


 そこへ入っていくヴァイオリン。悲痛な、ブラームスの心を描いているようにも思える重い音色。


(病床のフェリクスを見舞う手紙をクララに……クララ……?)


 ピアノと混じり合うヴァイオリン。が、途端に消える。


 ゆっくりと、静かにブランシュは弓とヴァイオリンを下ろした。目を大きく見開き、動かなくなる。わずかに開いた唇から、小さくなにかが溢れる。


 その音をかき消すように、ピアノの情緒的な音だけがホールに響く。


「どうしたの?」


 唐突に止まった演奏に、ヴィズも手を止め、ブランシュに声をかけ、近づく。弦でも切れたのか。


「どうした? なにかあった?」


 傍観していたニコルも急いで近づく。楽器に変化は……ない。だが、本人がなにか口にしている。


「おい、どうしたんだ」


 ブランシュの細い肩を両手で掴み、揺らす。声が届いていないかのような、そんな雰囲気だ。


 乱暴な扱いに、ヴィズもニコルを止めに入る。


「ちょ、ちょっと」


「クララが……」


 ようやくブランシュが反応を示す。


「クララが……消えました……」

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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