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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歩くような速さで。
4/369

4話

 フランスでは、夏のバカンスが終わった九月から新学期が始まる。新学期とは言っても、そういったセレモニーはなく、あっさりと入学し、終わる時もなにもなくあっさりと卒業する。各クラスに名前が貼り出され、確認したら即授業が始まる。ここから友達作りが始まるのだ。が。


(やはりみなさん、エスカレーター式だからか、もうお友達のグループが出来ていらっしゃいます……転入組の方は他にいらっしゃるのでしょうか……)


 初等教育時代は、物心ついていなかったこともあり、いつの間にか近所の子と友達になっており、その頃は活発に外で遊んでいた記憶がブランシュには朧げにある。前期中等教育はそのまま繰り上がりだったため、友達もそのまま。しかし、続いてきた友達のいない生活が始まると、どうやって友達を作ったらいいのかがわからない。


 寮の部屋も、合部屋とのことだったので同室の子だったら話すこともあるかと思い、期待していたのだが、寮の希望人数が奇数だったため、幸か不幸かひとり部屋に。


(パリに来てからというもの、こんなことばかりです……これがパリ症候群というやつでしょうか……こんなときは)


 日曜日。


 一五区と一六区の境目となるセーヌ川に架かるミラボー橋。アポリネールの詩で有名なこの橋は、そのほとりの石畳を清掃業者によって丁寧に清められ、そこから見えるエッフェル塔は、ミッシェル・アンリによって油絵にしたためられた、美しさと優美さを兼ね備えた全長一七三メートルの鋼鉄の橋。


(やはり……早朝のこの橋は美しいです……!)


 グラース出身のブランシュにとって、パリは恐れでもあり、憧れでもあった。特に凱旋門やエッフェル塔などの観光地以外にも、こういったなんでもないような橋が、当たり前のように引き込まれる魅力を持っている。ここ以外にもビルアケム橋や、アレクサンドル三世橋など、彼女のお気に入りだった。その理由として。


(ここなら……思いっきり弾けます……!)


 背負ったケースを下ろし、中からは全長六○センチほどの、滑らかに切り取られた木材。趣味であるヴァイオリンを弾くのは、こういった場所でしかできなかった。寮ではもちろん、学園では普通科に属しているため、授業で弾くことはない。音楽科に入ることも検討したが、あくまで調香師としてパリに来たわけであって、プロを目指す生徒達とは目標が違った。

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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