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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
360/369

360話

 みなさん。いつも助けてもらって。それは自分の中での宝物で。でも。胸に手を当てるブランシュ。


「……もう必要ないですから。私は。私には。お友達、と言ってくれたことは嬉しかったですし、それは今でも。ですが、もうそろそろかな、って」


 出会ったのはヴィズが最初。初めて香水を作ったのはカルメンとで。初めてピアノトリオを演奏したのはベル。初めてイリナと香水の先にあるものに触れ。そして、初めて誰かのために、自分のために先に進まなければ、と決意させてくれたのはブリジット。


 だから。




 ごめんなさい。




「はぁ?」


 それがなにに対する謝罪なのか、ニコルにはわからない。謝るくらいならやるな。それくらいしか。


 ふぅ、と細く長くブランシュは息を吐く。ほんの少しだけ、自分の中に残っていた残渣。それを今、吐き出した。


「本当はもっと、みなさんと楽しく過ごしていきたい、というのが本音なんですよ。お友達、というのもこちらでできて嬉しかったですし。香水を作るのも。新しいことを始めるのも」


「なに言って——」


「シシーさんだけは気づいていたみたいですけどね。まさか、ですよ。あの人は敵に回したくないなぁ。言われたんじゃないですか? 『やはりお孫さんは俺を頼ったね』って」


 今度のブランシュの笑いは嘲笑に近い。モノマネ、少し入れてみたけど、似てないなぁ。そういうのは苦手みたい。初めて知る自分のこと。知らないことばかり。


 戸惑いと焦りと。そんな感情を目で訴えながら、ニコルは思い返す。そして該当。


「……言われた。で、それがなに? 話が見えてこないんだけど」


「ご自身で言ったことですよ。初めてお会いした時。この学園に足を踏み入れた時」


 その時のこと。ブランシュはよく覚えている。あんな衝撃は初めてだったら。のほほん、と過ごしていただけだったのに。刺激的な毎日に変化したのは。あれから。


 少し肌寒かった早朝の橋。ただ自由に弾いていただけの自分。そこに現れたひとりの人物。加速していく日々。あぁ、まだ二ヶ月しか経ってないのか。早かったなぁ。

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