356話
……なら自分は? 自分は、なにが変わったのだろう。変わるのだろう。変えることは。必要なのだろうか。
「私がいるから大丈夫。座って聴いてるから、疲れたら呼んで」
やっぱりカルメンは弾きたいという気持ちが強まってきた。なので隠さずアピール。ショパンもまぁまぁいける。ポロネーズとか。
ふと、我に帰るヴィズ。不可解な思考をやめ、現実に戻る。
「……ストリートパフォーマンスの飛び入りじゃないんだから。それもやめておきなさい」
まぁそれをブランシュはやる予定なわけだけど。本当に大丈夫だろうか。
本当に。
来るのだろうか。
眉間に皺を寄せてカルメンは不機嫌。
「ケチ」
「でも、ありがとう。嬉しい」
こんなに心強い仲間が自分にはいる。それだけでブリジットは安心して演奏に集中できる。視野が広くなる。音。香り。一段、深く感じ取れる。
なんだか。自分の出番はなさそう。その落ち冷静さを見てイリナは理解した。いいこといいこと。
「ま、そういうことだから落ち着いてやれよ。なにかあっても誰かしら弾けるんだからさ」
本当はブリジットとしても、みんなと一緒に演奏してみたいが、それは今回ではない。また次回に取っておく。
「イリナも。うん、大丈夫。『もっと緊張しろ、もっと緊張しろ』って祈ると、逆に落ち着くって教えてもらったから」
「なんじゃそら」
「あー、いいかも。私も試してみよう」
呆れるイリナと興味津々なベル。
ヴィズは教会内を再度確認。さすがにかなり席が埋まってきている。自分達の確保にそろそろ移らねば。
「それじゃ、楽しませてもらうわ。またあとで」
終わったら。カフェかどこかで話すことは尽きないだろう、その時でいい。今日の感想とか。出来とか。コンヴァトがどうとか。




