表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
352/369

352話

 十二月二一日。リサイタル当日。その日も朝から雨がしとしとと降り注ぎ、寒さがより肌を刺す。


「ついにきた、って感じだね」


 今日弾く予定もないベルが寒さなどどこ吹く風、とばかりにワクワクとした表情が、教会内を優しく香るアロマキャンドルの灯りに照らされる。


 縦七〇メートル、幅と高さは二〇メートルほど。ロマネスク様式の身廊と側廊。側廊の先には左右ともに礼拝堂のような小さな空間。祭壇のようなものがあるのみで、天井を見るとアーチのようになったリブヴォールト。身廊には真ん中の道を境に、四、五人がけの長いイスがずらりと並ぶ。

 

 天井や壁面にはフレスコ画が描かれており、内容は旧約・新約聖書。上部には花などをモチーフにしたステンドグラス。差し込む光が淡く内部を照らす。重い石材が多く使われているため、半円アーチが多用され、開口部が非常に小さく少ない。ゆえに昼でも薄暗く、厳格さがより増しているようにも感じる。


 内陣と呼ばれる聖職者のみが進める場所。小さな主祭壇と聖職者席が存在するのみ。そしてそれらを取り囲むように周歩廊と呼ばれる、巡礼者用の回廊。


 内陣の手前にはピアノがある。ザウター『オメガ220』。セミコンサートグランドピアノ。樹齢百年を超えるトウヒを使った響板、熟練のマイスターが丹念に作り上げた芸術品。倍音の伸びはピアノ界随一で『香りがする』とまで言われるほど。


 それを取り囲むピアニスト五人。今日から五日間、ここでピアノを奏でる者達。


「あなたが興奮してどうするの。ブリジット、指は動く? 寒くない?」


 湧き上がる気持ちを抑えつつヴィズが場を制する。自分も弾くことになるピアノ。初めて対面した。教会内の複雑な残響。その中でもブレない芯のある音色。先ほど触れてみてわかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ