表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
351/369

351話

 なんだか。空気が重くなってしまった。なんで? 腑に落ちないが、これが答えなのだろう。ならそれを。ニコルはメッセンジャーとして届けるだけ。元々用意していたアトマイザーに詰め込むことはできないが、この口紅を持っていくだけ。


「リンゴ尽くしだね。少しずつリンゴって枠組みの中でも、香りが変わってく感じか。まさかショパンも自分の曲がこう解釈されるとは思うまいね」


 今夜はリンゴの料理が食べたい。それだけ。


 たぶん空気を読まれているのだろう。場を明るくしようと。そんな彼女をブランシュは信頼しているわけで。


「ショパンはお酒もコーヒーも飲まず、毎朝ショコラショーを飲んでいたというところから、かなりの甘党だったと思われます。そしてポーランドではシュガーバターを詰めて焼く、焼きリンゴが有名ですから。他にもシャルロトカなど。リンゴを使った料理やスイーツが特に多いんです」


 もしかしたら、そこからヒントを得た曲もあるかもしれません。ほのかにリンゴの香る曲があっても。それはそれで素敵だと思う。


「そんなもんかねぇ」


 納得のいかないニコル。ただなんとなく。ブリジットもフォーヴもブランシュも。語っている時は楽しそう。


 きっと、いつまでも人はショパンの影を追いかけるのだろう。自分なりのショパン像を持って。それはブランシュにも共通する。 


「わかりません。でもそう考えるだけの余地がありますし、わからないからこそ魅力があるわけで」


 わからないということは。素敵であるということ。惹きつけられるということ。ブリジットの気持ちもわかる。


 そして話は三人で弾いた時のことに戻る。一緒に聴いていたニコル。このルージュの練り香水を使って演奏した。


「とりあえずは完成ってことで。使ってみて。どうだった? 予想通り?」


 ブリジットとフォーヴの反応からして、大成功だったんだろうけど。一応確認。


 自信を持ってブランシュは肯定する。


「もちろんです。誰がなんと言おうと。これが私の『レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ』です」


 これで五個目。半分。色々あったけども。ありすぎたけれども。なんとかここまでこぎつけた。そんな、決意の香り。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ