338話
嬉しい。ブリジットにとって単純にそれ。それと同時に考えてしまうこと。
「でもどう、なの? ある程度はこういうのにしよう、とか。したいとか。そういうのって、あるの?」
香水について。詳しくはわからないけれども。自分にはその感覚はないけれども。とても。気になる。ショパンは。『遺作』は。どんな風に仕上がるのだろう、と。
個人的には考えたりもした。ショパンの一生を考えたら、マヨルカ島の海の香りとか。好きだったショコラの香りとか。スミレの香りとか。『遺作』は二〇歳の時の曲だけど、どこか彼の締めくくりな気がして。あれ、ちょっと香水、楽しい、かも。
それについて、ブランシュはひとつの答えを自分の中に持っていた。そして、今までの四作とは違う視点でアプローチしてみた結果、これも面白いんじゃないか、と。
「はい。実は今回に関しては試してみたいものがあるんです」
ポケットに手を入れる。指先に触れる。取り出した手に乗せたもの。
「……これは」
それを覗き込んだフォーヴは、目を丸くした。こういうのもあるのか。なるほど。様々な女性と浮き名を流したキミには、相応しいかもしれない。罪な男だね、フレデリック。




