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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
318/369

318話

 食堂と同じ棟の三階。賑わいを見せるカフェにて。見晴らしがよく、ガラス張りの広い窓からは、音楽科のホールも眼下に見える。その他、遠くにはエッフェル塔も。長いテーブルが数多く置かれ、各自思い思いの席について談笑をしている。


「よければさ、ノエルのリサイタル、一緒にどう、かな?」


 そんな提案をしてきたのはブリジット・オドレイ。自他共に認めるショパニスト。人見知りだが少しずつ、克服しようと色々と試している最中。


 ノエルの時季、一二月の二一日から五日間、モンフェルナのピアノ専攻からは各日にひとりずつ教会でのピアノリサイタルが計画されている。ここにいるブリジット・イリナ・ヴィズ・ベル・カルメンの五人。選んだ作曲家で括り、披露する流れとなっている。


 そこでヴィズと共演する予定のブランシュ。曲も決まり、練習に励む毎日。だが、そこにさらなる誘いの言葉。


「私が……? ですが、そこにはコンヴァトの講師の方もいらっしゃると……」


 それはさらなる飛躍のための一歩。もちろん、レッスンを受けられるようになれば伸びていくか、というのは人それぞれ。だが、ステップアップのためにアドバイスをもらえることは、大きなプラスになるはず。そこに自分が。


 ヴィズの場合、もとからコンヴァトはどうでもよく、楽しみたいという理由でブランシュを誘ったわけで。だからこそホッとしていた部分もある。だがブリジットの場合は。どうなのだろうか。勝手にそういうものだと認識していた。


 もちろん、ショパンというものを武器に上を目指しているブリジットとしては、より良い講師との出会いは是が非でもお願いしたいところ。だがそれ以上に。ヴィズが羨ましくて。


「うん……でも、そういうの、私もどうでもいい、かな。いや、どうでもよくないし、そりゃレッスンは受けたいけど……それよりも、ブランシュとそういう舞台で、弾いてみたい」


 流されてばかりだった自分への反抗。利口なピアニストからの脱却。ピアノは。どんな心も響かせてくれる。だから色んな経験をすることは、それはすなわち自分への投資、みたいなもので。楽しい思い出も、辛い思い出も。表現の幅が広がる。

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