316話
納得はいかないものの、大事なのは結果であって。その道中がどうなろうとニコルとしてもどうでもいいわけで。
「ま、そういう考え方もあるやね。ならいいんだけどさ。香水を作りを中止しないなら、他でなにやってても」
しかしその表情からは不満が読み取れる。許されるならここで酒を飲んでショパンにクダを巻いてやろうか。そう思うでしょ? あんたも。
チラッと横目でその様子を観察しながら、ずっと心に抱えていたものをフォーヴは打ち明けてみる。
「……前々から思っていたんだが、なぜ香水を作ろうとしているんだい? ただの趣味、というわけでもなさそうな気がしてね。精神を削ってまでやることなのかな」
前回の『詩人の恋』の際、無意識に自分の元へブランシュが電話してきてしまうほどに。相談、というよりかは助けを求めていたような。切羽詰まった感覚がしていた。
ここで初めて出会い、スカウトされた時は「なにやら面白そうなことをやっている二人組」という感想だったが、時が進むにつれ違和感のようなものが。もちろん杞憂であってほしいし、そちらのほうが可能性としては高いと睨んでいるが。
前に一度軽く説明はしていた。だが、より踏み込んで突っ込んでくるならば。ニコルは躱すのは困難と察知。
「私から頼んでんのよ。香水作ってくれってね。これで五個目」
「なぜ?」
「秘密」
「秘密なら仕方ない」
あっさりと諦めるフォーヴ。話さないのなら、余計な追求はしない。秘密は誰にでもあるのだから。そこは侵害してもしょうがない。ここには友人を攻撃するために来たわけではない。楽しく旅行のため。
少々冷えた目つきで天使の像をニコルは捉える。あんたにはお見通しなのかね、全部。天使だし。
「助かるわ。ただ、あの子がやりたいと言ってくれているってのは確かなこと。そんでもって、フォーヴやヴィズ達にも手伝ってもらってすんごい感謝してる。マジマジ」
全部に嘘や偽りはない。少なくとも自分のわかる範囲内では。いい方向の偶然偶然がミルフィーユみたいに積み重なって。そして今がある。限りなく上手く事が運ばれている。




