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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
313/369

313話

 二〇区。ペール・ラシェーズ墓地。四三ヘクタールという広大な土地に、数えきれないほどの墓。墓の造りなどに縛りはないため、人々は思い思いの芸術品のような彫刻で墓石を設置する。その中には著名人のものも多数存在する。


 世界的な俳優。歌手。舞踏家。作家。軍人。そして作曲家、フレデリック・ショパン。心臓は遺言の通りポーランドへ送られたものの、半生をパリで過ごした彼の亡骸は、ここペール・ラシェーズに丁重に葬られ、遺骸にはポーランドの土が撒かれたという。


 一周忌には『嘆きの天使』と題された記念碑が置かれ、毎日のように人々が色とりどりの花を手向ける、鮮やかな空間。偉人ではあるが、あまりそういった特別感もなく、普通に存在している。墓の横は階段になっていて、気づかず通り過ぎてしまう人もいるほどに。


 天気はあいにくの曇り空。そして墓を前に二人の少女が白い息を吐きながら、彼を話題に会話をしている。


「ショパンはね。ポーランド人以外には心を開かなかった、というくらい閉鎖的な人だったわけだ」


 フォーヴ・ヴァインデヴォーゲル。ベルギー、ブリュッセル出身。モンフェルナとは姉妹校であるルカルトワイネに通う。背中には大きなチェロケースを背負い、彼女よりも一段背が高い。学校指定のダークグリーンのコートを着込んで寒さを凌いでいる。


 かたやモンフェルナの濃紺のコートを着る少女。ニコル・カロー。ショパンに興味ははっきり言って。ない。


「ほうほう」


 ないが色々と必要なため情報収集。ネットで調べれば出てくる情報もあるのだろうが、有識者に教えてもらうほうが効率がいい。わからないことも質問すれば返ってくるし。持つべきものは友。


 同じ天使の記念碑を見上げながら、ここに眠る作曲家についてフォーヴは若干辛めのコメント。


「晩年にはロンドンでピアノの講師やサロンコンサートなどをやっているわけだが、そこでの彼の部屋の手配や身の回りの世話をしてくれていた、スコットランド人の姉妹のことさえも疎ましく思っていてね。友人への手紙で『彼女達が私の精神をすり減らしている』など、文句ばかりだったそうだ」


 特に妹のスターリングはショパンを心から愛し、死後も愛し続けていたほどだったが、結局振り向いてもらえることはなかった。それどころか煙たがられ、用意した部屋は勝手に引っ越されと散々。それでも支援し続け、借金され続けた。

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