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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
308/369

308話

 とはいえ、ジャズの演奏者がみなそうか、というとそうでもない。ジャズピアノでの完全即興演奏の第一人者、キース・ジャレットのように、聴衆に咳払いさえ許さないという厳格さを持つ者もいる。彼には拍手も指笛も厳禁。演奏のみが聞こえる静謐な空間、彼の演奏によって始まり、演奏によって終わる。それこそが彼にとってのマナー。


 だがどうやら目の前の人物はキースとは違うらしい。今も揺れている。それを見てブランシュは短くまとめる。


「つまり、盛り上がるならなんでもいい、と」


 ごちゃごちゃしたことは抜き。物事はできるだけシンプルに。音楽は体で表現するものだと、クロティルドは心に留めている。


「ま、そういうことになるかな。ジャズだろうとクラシックだろうと、楽しければね。自分の感性がどちらかというとジャズに近いだけだ」


 どちらかを選ばなければいけない、という二択に迫られこちらにした。そしてそれは間違っていなかったと思っている。


「感性……」


 自身の香りと音の能力。言い換えればそれはそういうこと、なんだろう。ブランシュはこれまでに作製した香水を思い出す。


 果たしてそれはちゃんとブラームスの、ドヴォルザークの、サン=サーンスの、シューマンの想いを形にできているかわからないけれど。私の感性。それに嘘はついていない。


 ところで話しすぎた、とクロティルド。音楽家ならもっと伝わる方法がある。


「とりあえず一曲やってみようか。なんだっていい。選びたまえ」


「んじゃあ私はドラムで。本職じゃないからあんまり上手くはないけれども」


 流れるようにドラムスローンに座り、備え付けてあったスティックを握るマノン。見える景色がいつもと違う。偉くなった気分。それっぽくそれっぽく。


 たしかにヴァイオリンは借りてしまっているけれども。まさかこうなるとはブランシュも考えていなかった流れ。


「ドラムもやられるんですか?」


 ヴァイオリン、返したほうがいいのだろうか。そうなると自分はなにもやることはなくなるけれども。来た意味がないけども。

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