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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
301/369

301話

 だがそれもオーロールの想定内。ボケーっと対応。


「その手には乗らないよー。と言いたいところだけど、わざわざ来てもらってるし。もう一曲だけね。猫ちゃんもそう言ってる」


 そして受け取る。黒い香水のアトマイザー。手のひらサイズで液体によって満たされている。


「猫?」


 全部どっか行っちゃってない? まわりを隈なくギャスパーは見渡す。すると、建物の影から一匹の白い猫。先ほどの猫が戻ってきた。そしてそのままベンチで丸まる。


 そしてオーロールは空間に香水をワンプッシュ。それを吸い込み、悦に浸る。


「あぁー、いいね。このトップノート。ニ短調……だね。バッハの『無伴奏チェロ組曲』って感じ。落ち着く」


 プチグレンとブラックカラント。その香りからイメージできる曲。爽やかであり、それでいて複雑な内面の精神世界。それが香りに乗って見えてくる。聴こえてくる。バッハの名曲が。


 冷や汗がギャスパーの背中を伝う。相変わらず恐ろしい感覚。そして『あの子』とそのイメージを共有している。


「そこで気づけるのはキミだけだよ。ご名答。彼女が作ったものだ。よくできているだろう?」


 ミドルにはマグノリア・リリーオブザバレー・キャラウェイ。ラストにはパロサント。荒削りだが、それゆえに感性が伝わってくる。変に長考するより、直感が正しいことのほうが多い。好き嫌いだから、正しいとか誤ってるというのもないけれども。


 舌なめずりして香りを楽しむオーロール。あの子……ブランシュからの想いは受け取った、的な?


「そだね。ま、とりあえずやってみますかー」


 再度楽器を取り出して準備。中々お目にかかれないハーディングフェーレによる『無伴奏チェロ』。ヴァイオリンでも違う雰囲気を醸し出すが、さらに独特な音色となる。何匹猫を集められるか。いつもの自分との勝負。それが目的。


 それをギャスパーは笑みを浮かべながら見つめる。役者は整いつつある。


 オーロールは私にとってのジョーカー。ベアトリス・ブーケはクイーン。ブランシュ・カローは……まぁ、ジャックといったところか。そんなところ。


 だが知っているかい? ジャックはゲームによっては『表』と『裏』があることを。ま、あの子は自分がどっちであろうと。そんなこと考えない、ただの手札でしかないんだけども。

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