表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
300/369

300話

 みんないなくなったこの状況。うんうん、としみじみギャスパーはその曲を味わい尽くす。


「『ラヴェンダーの咲く庭で』。いいね、ヴァイオリンとはまた違う響き。音から香りが漂うみたいだ」


 映画を思い出す。最後がね。またいいんだ、これ。切ないとか、嬉しいとか。なんかそういうのじゃない涙が溢れてくる。心に残る一作。ピアノもあるといいのだが、これはこれでいい。


 テキパキと片付けながらオーロールは、この曲についての思い出を語る。


「好きだし得意な曲だからね。何度も弾いたよ。何度も。何度も」


 あの子と。私達の繋がりは音ではなく香り。もしあの子がなにか、ホームシック的なアレになっちゃってたりしたら、きっとどこかで弾いてるんじゃないかな。


 そしてそのヴァイオリン、もといハーディングフェーレの腕前。上手いかどうか、というのは人それぞれ感じ方が違うから、一般的な価値観などどうでもいい。ただ、少なくともギャスパーにおいて、今の演奏から願うこと。


「やはりキミがいてくれると助かるんだけどね。年寄りを助けると思ってさ、どう?」


 手伝ってよ。そこまでは言わない。言わなくても伝わるから。


 はは、と笑いながらオーロールはその場から離れようとする。どこかの木陰で休もう。寝よう。


「ジョーダンでしょ。メリットがない。遠くから見てるよん」


 見てるぶんには面白い。それにベアトリス・ブーケが介入してくるのかどうか。そういうエンターテインメントとして。なんつーの、観測者? カッコよく言うと。


 この子には、どんな強いエネルギーを向けても、ひらりと躱されてしまうことはギャスパーもわかっている。だから一度しか言わない。


「じゃ、最後にリクエスト。はい」


 が、せっかく何時間もかけてここまで来たわけで。ならもう一曲だけ。聴かせてもらってもバチは当たらないだろう。小さな小瓶を手渡す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ