表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
298/369

298話

 その視線を受け流しながら、ニヤニヤとオーロールは足元に寄ってきた白い猫に触れる。彼女はなぜか、気づくと猫に囲まれている。探しに行かなくて助かる、この能力には感謝。


「猫がいいって言ったらね。私はこの子達に従うから。つまり私にはどうにもならないのデース」


 全ては猫様のお導き。弾け、と命じられれば弾くし、一緒に寝ようと言われればここで今すぐに寝る。


 顔を赤くしてムキになり、猫を抱き上げる少年。


「ほら、お願いして。ほらほら」


 猫のつぶらな瞳を向け、なんとしてでも聴きたい少年。なんでだかわからないけど。あんまり弾いてくれないけど。彼女の音が好き。


 う……と、渋い顔で受け止めるオーロール。本音を言えば、あんまり弾きたくない。が、猫の目はわりと。


「んー、だいぶ反則な気もするけど。ま、たまにはいっかー。少しだけね」


 弾け、と言われている気がした。見つめられたのなら仕方ない。のらりくらり。伸びをしてストレッチ。いっちょやりますかー。


「やった」


 小さく少年はガッツポーズ。猫を抱いたまま、数歩下がる。ドキドキと鼓動が猫に伝わる。ワクワク。どんな曲だろう。曲名はわかんないと思うけど。体全身で受け止める。それを持ち帰る。


 なんていいタイミング、とギャスパーは心の中で少年を誉めた。


「珍しいね、キミがヴァイオリンを持ち歩いているなんて」


 以前会った時も、パリに遊びに来た時も手ぶらだったのに。今日の星占いはきっと上位。彼女の演奏は今はもうほとんど聴けない。どうやらここではたまに弾いているようだけど。ふむふむ。さてさて。


 眠そうな半目でオーロールはケースを開ける。ニヤリ、と怪しげな笑み。


「あぁ、これ? これはヴァイオリンじゃないんだな、実は」


 そう言って取り出したもの。ヴァイオリン……と同じ形なのだが、それにしてはかなり華美な装飾。ヘッドの部分には龍のような生物の彫刻、表板や裏板にはロージングという技法で描かれた模様。その他にも貝や骨などが埋め込まれており、どこかより芸術品のような印象を受ける。


 そしてなにより、最大の違いは弦。ヴァイオリンは四本張ってあるわけだが、これはさらにその下に五本の弾かない『共鳴弦』、合計九本の弦が存在する。そしてヴァイオリンのような金属弦ではなく、動物の腸を使用したガット弦。音色が違う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ