表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
290/369

290話

 だが、それらをマノンは一蹴。


「あー、ないない。将来さ、なんかたまたまそのへんにヴァイオリンが置いてあって。で、サラッと弾けたらカッコいいじゃん? そーいうのでいいのよ。そりゃ入学前はプロとか夢はあったけど。やりたいことなんて変わる年代じゃん?」


 ショコラティエールにフローリストに。パリの街を歩けば憧れてしまう。まだ結論は先延ばしでいい。そういう人生観。いわゆるフランス人らしい『それも人生』。


「やりたいこと……」


 ずっと。調香師だけを目指してきたブランシュにとって、目標も目的も変わることはない。だが自信満々にそんなことを言われてしまうと。揺れる。揺れてしまう。


 そんなつもりはなかったが、どうやら余計に困らせてしまった模様。どうしよう。ひとまず、この状況を打破しようとするマノンの提案。


「よかったら少し弾いてみる? 大丈夫、最初は普通に音出せたら才能ある、って楽器だから。クラシックなんて身構える必要なし。ギコギコしてみなって。ストレス解消になるよ」


 そうして手を引っ張り、立ち上がらせてみる。こちらから見える景色。どうせなら触れてもらいたくて。


 ヴァイオリン……を弾いてみたら? ということ? ブランシュの願いとは逆のほうへ。今はなにも。していたくないのに。


「いや、あの、私は——」


「クラシック、なんてカッコいい名前ついてるけど。結局はただの『音楽』なわけよ。場合によっちゃ食事も『音楽』。いい香りするね。この香水だって『音楽』。境目なんてない」


 ラベンダーのような、そんな穏やかな香りに包まれていることにマノンは気づいた。自分も香水を使ってはいるけど。適当なところで適当に買った安いヤツ。なんというかこう、香りの質みたいなものが違う気がする。


 空と大地の境目が曖昧なように。どこからが大地で。どこからが空なのか。触れている部分? 掘り進めたらそこも空? そんな答えのない自分だけの答え。


 今まで考えたこともたぶんなかった到達点。ゆっくりとブランシュは噛み締めてみる。


「香水が……音楽……」


 これまでやってきたこと。『香水』を『音楽』に。『音楽』を『香水』に。別のものだと考えていた。だがしかし。会ったばかりのこの人は。同じものと捉えるという。指先にとっかかりの感触。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ