282話
「そうなのかい? どうもそういった匙加減が苦手でね。力の入れどころがおかしいとよく言われる」
返しつつもジェイドはまだ思考をやめない。いつかなにかで使うこともあるかもしれない。他の人にも聞いてみたりするのもいい。場合によっては拝借しよう。
出会ったのは偶然だけれども、こうして今、友人でいられることにヴィズは感謝。なにがあるかわからない。から、面白い。
「そこがあなたのいいところなのかもね。ありがとう、邪魔したわね」
一気にショコラショーを飲み干す。なんだかリフレッシュできた。自分なりにも、香水のことはよくわからないけれど、こんな感じのはどうか、という案を持ってブランシュに話してみよう。参考になるかもわからないけど。
ジェイドはカップとソーサーを受け取り、それを一旦、机に置く。
「もういいのかい? 私はなにもできていないよ」
ただ雑談をしただけ。それもなにかアドバイス的なことも無し。思い返すが、やはりなにも。
立ち上がると柔和な笑みでヴィズはドアへ向かう。
「それについては問題ないわ。問題は私がどう動くかだもの。あなたはショコラショーを淹れてくれた。実にありがたいこと」
たったそれだけでも、人をひとり決意させるのには充分なほど。温かで甘い味と香り。それだけで。
誰もいなくなった自室でジェイドは、その言葉を自分なりに要約して受け止めることにした。
「なるほどね。それはたしかに私にしかできない……というわけではないけど、お役に立てて嬉しいよ」
結局、なにがなんだったのかよくわからないが、事態が好転しているならそれでいい。さて。もう少し深く、ショパンについて考えてみようか。




