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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
消えるように。
273/369

273話

「ノクターン……とはショパンは、言っていないの。ノクターンっぽいから、曲名に『ノクターン 第二〇番』ってついているだけで。そもそもが『レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ』って、ゆっくりと表情豊かに、っていう意味だし……」


 モンフェルナ学園音楽科のレッスン室にて、ポロン、と優しくブリジット・オドレイが鍵盤を撫でる。吸い付くような、でも羽根のように軽い、それでいてしっかりと音のレスポンスが返ってくる。いつまでも触れていたくなるような、そんなピアノ。


 チェコのメーカーであるペトロフ、そのフルコンサートグランド『ミストラル』。このメーカーのグランドピアノには、風の名前がつくものが多い。モンスーンやブリーズ、ストームなど。聴き手の心に風を巻き起こし、心地良い異世界へと運んでいく。


 コンクリートやエイの皮を素材として使用したり、テーブルがついて、まるでバーのような形で人々が取り囲むように座れるピアノまで作製する、遊び心のあるメーカー。だからといって音に妥協など一切なく。


 着脱可能な吸音板が装備され、床には木目のフローリング、壁は白とライトグリーンを基調とした爽やかな色合い。窓からは優しい木漏れ日。心にモヤモヤとしたものさえなければ最高の環境。そう、ニコルはイスに座って質問に興じる。


「ふむふむ。なるほど」


 今回ばかりは自分もやれることをやろう。たぶんそういった知識もブランシュはすでに持ち合わせているんだろうけど。それでもなにか。とりあえずは聞き込み。詳しい人に詳しく聞く。ネットで調べるよりも、そっちのほうが性に合ってるし。


「それと……」


「それと?」


 チラチラっという、怯えたようなブリジットの視線。それを受け止めつつもニコルは会話をグイグイと進めていく。ショパンのことならいくらでも話せる人物、とヴィズからは聞いているのだが、どうも覇気を感じられない。


 というのも、ブリジットはショパニストであると同時に人見知り。自分から話しかけにいく、というならまだ勇気を振り絞れるが、話しかけられると途端に貝のように心を閉ざし気味になる。それでも克服できてきてはいるのだが。


 たしかにニコルはサシでこの子と話したことないかも、と今更ながら頭に浮かんだ。とはいえ、せっかくの機会なので仲良くなろうじゃん?

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