表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歌うように。
242/369

242話

 ヨーロッパに数あるストリートピアノだが、インスタレーション・アーティスト、つまり空間をデザインする人物が置く場合が多々ある。そのピアノはデパートの管轄となるのだが、見世物としての意味合いが強いため、しっかりと調律を行われることはほとんどない。


 社長と聞いて、過去を思い出すイリナ。助けてもらった感謝はあるが、初対面時は突然話しかけてきた変な人という印象しかない。


「あー、あのオッサン……」


 いや、感謝は。してるんだけどね。


 勝手に物事を決めてしまったが、冷静にカルメンは状況を把握。


「でもまだ弾きたい人もいるかもだけどいいのかな。ほら、SNSとか。配信とか」


 タイミング悪く来てしまったら申し訳ない。誰かが謝ろう。いや、定期的に調律していないここのデパートが悪いのでは? やっぱ謝るのやめよう。


 一理ある。だがヴィズには考えもある。ピアノを裏側から知ることも、見慣れない人からしたら面白いのでは。


「調律しているところなんてあまり見る機会もないし、それはそれでいいんじゃない? 私なら楽しみ」


 となると今日の目的。来月のリサイタルについてなど、色々と話したいこともあったわけだが、ベルがみなの顔を見る。


「カフェ……どうしよっか……」


 なんだか自分のせいでややこしいことになってしまった気がしてならない。焦りにも近い申し訳なさ。


 しかしその予定で、明確な到達点があったわけでもなかった。こんな日もある。切り替えたヴィズは音頭を取る。


「ま、たまにはいいんじゃない? 構造から勉強するのも」


 より深くピアノを『知ること』、そして『識ること』。それがいつか身を結ぶこともあるだろう。


 だが一方で不満を持つ者も。勝ちを確信していたカルメン。


「ショパン」


「調律が終わったらな。今日は無理だろ」


 少し安堵の色を見せつつ、イリナは音の鳴らない鍵盤を優しく打った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ