228話
「やっぱ……ダメ……?」
ダメそうな雰囲気。一応の確認を取るニコル。
申し訳ないけど。なんて感情をオーロールは持ち合わせていない。来たのはそっちの勝手。断るのはこっちの勝手。とはいえ、せっかくだし、という労いをしたいのも事実といえば事実。
「うーん、そうだねぇ。手伝うつもりはないし、爺さんの思い通りに動かされるのはもっと嫌だけど——」
「?」
少し風向きが変わったのをニコルは感じ取る。ほんの些細な。撫でるような風だけども。
小さな、手のひらサイズの箱。それを内側のポケットから取り出したオーロールは、ヒョイっと投げて渡す。
「どうしてもダメだなと思ったら、あの子にそれを渡しておいてー。そんでもって、その時はグラースに帰っておいでって」
どっちでも。そのまま続けようが辞めようが。どっちでもいい。ただお助け用のアイテムは準備くらいしてあげる。
受け取って不思議そうにニコルは眺める。軽い。
「ブランシュに? これは?」
なにが入っている? 振ってみるが音もない。開けていいものか悩むが、ブランシュ用ということでやめておく。いや、電車の中で開けようか。丁寧に戻せばバレない。
ピクッと反応したオーロールはむしろ、開けられてしまうことを前提として持たせた。なのでそれもどうでもいい。
「あとひと言。ブランシュ……にさ。やれる手は全部使いなよ、ってねー」
まだそんなものではないでしょー? 緩い語調で伝聞したあと、そのまま猫の大群を引き連れて街のほうに去っていった。




