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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歌うように。
227/369

227話

 本来であればニコルもそっち側。だが、場を締める者がいないと収拾がつかない。


「……おそらくあの子は近いうちに変化がある。もうなってるのかもしれない。いい意味でなのか悪い意味でなのか。それも不透明。じゃ、あんたの出番でしょ」


 そうならないことを祈りたいが。なるものはなる。ならないようにする、よりもここはなった時の対処を。


 ニヒヒ、と対岸の火事とでも言うかのように意地悪くオーロールは笑う。


「変化? 変化しないヴァイオリニストなんていないよ。変化しないヤツは進歩のないヤツだねー。喜んでいいこと」


「……まだ早い?」


 窺うように。焦りを見せながらニコル。


 さらにどこからか野良猫が集まってくる。日向ぼっこ。それを邪魔されるのがオーロールは一番許せない。


「まだ、とかじゃなくて。私はさー。もういいって、ヴァイオリンとか。そういうの。観客は猫。猫以外の前で弾きたくないねー」


 同じ波長。それを受け取ってくれる者だけ。そう言う意味ではあなたもねー? と細い目を開く。


 悪い流れを断ち切ろうと、ニコルはここにいない人物の名前を出す。


「ベアトリス・ブーケさんも似たようなこと言ってたよ。もういい、もうやらないって。あの人が動いたらやる?」


 最終兵器。これでダメならもう次の弾丸はない。最高のピアニスト……たぶん弾いてくれないだろうけど。どこか引っかかるところさえあれば。が。


「やらないねー。それにあの子はやらないと言ったらやらない。私より頑固。ダイヤモンド級」


 いや、でもダイヤモンドは加工されたりするし、例えとしては少し弱かったかな? もっと硬い鉱物ってあるのかな? ないよね? そんなことをオーロールは思考しつつ拒否。柳に風。手応えはない。


 せっかくここまで来て。手ぶらで帰るなんてできない。電話一本で済んだ、とかはない。わざわざ対面すれば、なんて甘い考えだった。ニコルはせめてなにかを得て帰る。


「……シューマン『詩人の恋』。ヴァイオリンは役に立たないんでしょ? どうしたらいい?」


 聞いた話でしかないが。みんながそう言うのだからそうなのだろう。となると、もう手段は選んでいられない。


 その曲かー、と元から瞑っているかのような目を閉じて回想するオーロール。厄介なものであることは間違いない。


「爺さんも人が悪いねー。あの子を潰しにいってるのかなんなのか。人が悪いというか性格が悪い」


 ケラケラと笑いながら。人の苦しむ姿は見るぶんには好き。

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