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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歌うように。
217/369

217話

 ふと、立ち止まる。その瞬間に足音は反響だけ残して消えていく。まるで自分以外の全ての人間が消えてしまったんじゃないか。そんなことを考えた。いや、昨日からなにを言っている、しているんだ自分? そこへ。


「あー、ブランシュ・カローさん? おはよう」


 その声もまた、反響する。その言の葉の主がコツコツと足音を立てて歩みを進めた。


 皆のいる世界に戻ってきたブランシュ。数秒、その場で立ち尽くしていたらしい。一瞬、ここはどこかとまわりを見渡した。


「おはようございます。どうされましたか」


 気を取り直してひとつ息を吐く。新しく取り込んだ酸素で細胞を活性化。


 体を揺らしながら近づく女性。同じく制服を着ている。窓から差し込む光を一身に受けて、覗き込むように至近距離へ。


「ちょっとお願いがあるんだけど」


「?」


 なんだろう、怒っている……とかではなさそうだけれども。またニコルがなにかやらかしたわけではなさそう、ととりあえずはブランシュはひと安心。


 少女の名前はウェンディ、というらしい。屈託なく色々な表情を見せる。


「友人のプレゼントにさ。香水あげようと思うんだけど、いいのが思い浮かばなくて。ブランシュさん、詳しいんでしょ?」


 聞いた話によると、と目を大きく開いて眼力を上げる。


 その圧力に屈しながらも、友人が増えるチャンス? とブランシュは対等に押し返す。


「えーと……趣味、の範囲内ですけど。それにその方の好みもありますから。どういったものですか?」


 香水は有名なブランドからマイナーなものまで、いくらでも手に入る。それなのに自分に声をかけてきたということは、オリジナルなものを作りたい、ということ。頼られることはひっそりと嬉しい。


 許可をもらったウェンディは、こっそりと耳打ちする。


「音楽をテーマに作れるって聞いたんだけど。それをお願いしたくて」


 白い歯を見せて笑った。


 たしかにそういうことはやっているけども。ブランシュはキョトンとする。


「? ……わかりました」


 やっているけども。誰から聞いたのだろう。隠しているわけではないので問題はないのだが、少し気になる。


 素早い反応で手を取るウェンディ。


「ありがと。部屋行こうか、ここじゃなんだし」


 そして招待。もう友達ってことでいいでしょ? 


 嬉しいような戸惑うような。その中間地点にいるブランシュはされるがままに引っ張られ、すぐ傍の部屋へ。自分の暮らすところとほぼ同じ間取り。それもそうか、とひとりごちる。テーブルとイスまで一緒。場所も。促されそこに座る。


「それで、どういった音楽になりますか? 私はクラシック以外はあまり……」


 上のベッドでは誰かまだ寝ている模様。いいのかな……と少し声のトーンは落とした。

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